ギルドの食堂にて
通常業務が終了するベルが鳴ってから約2時間ほど経っただろうか?
カウンター付近に冒険者はほとんどおらず、各グループのカウンターには「業務終了」の札がかかっている。
例に漏れず、第2カウンターグループも札はかけられているが、カウンター内からは光が漏れている。
「ちぃ!!もうこんな時間かよ。」
少し大きめの舌打ちをし、魔道パソコンで書類整理をしていると疲労困憊の、覇気がない獣人が帰ってきた。
「アル、こっちは終わったぞ。」
「お疲れ、目録のファイル作ってくれた?」
「それも、転送済みだ。アルの方は片付いたか?」
「あらかたな。」
うーん!!と椅子にもたれかかり背伸びをする。
「うん、帰ろ!!」
と、魔道パソコンのスイッチを切って、帰り支度をする。
「なあ、ディルトルトはどうする?これから、ロイのパーティーと飲むんだが。」
「やめとくよ、今日は妹が待ってるからな。また今度誘ってくれよ。」
「妹ラブってやつか?」
「今度、妹属性について語ってやろうか?」
「その属性については、お前と語るつもりはない。前に酷い目にあったのを俺は忘れない。」
「そうか?時期に慣れる。しかも、前回のはエピローグ部分なんだがな。」
疲れていても、しっかり妹属性の話をしてくるディルトルトに手を振りながらカウンターをでる。
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この大きな冒険者ギルド本部はお酒も飲める食堂を併設している。
昼からも酒を提供している食堂兼居酒屋的なところで、場所は少し窓口と離れたところにある。
なかなか綺麗で、ご飯も美味しい。
そして、冒険者と職員には割引きの特典があるのだ。
冒険者たちが稼いできた金を逃さない様にしておくあたり、商人の国はかなり抜け目がない。
そんな、食堂の扉を開け、中を見渡すと奥の方で手を振ってるロイがいた。
「お待たせ!!」
「遅かったじゃないですか?」
「誰のせいだと思ってんだ?」
そんな、俺の悪態に苦笑いをするロイの横から、声が聴こえた。
「逆に誰のおかげで給料が出てると思ってんのよ?」
「アヤネの言うとうりじゃ」
「・・・・・・」
ロイのすぐ隣には、普段から活発女の子でいつもヘアバンドをしているショートカットのアヤネ、その隣に大柄で無口なバードン、そして少し歳が離れた感があるクレイガーがいた。
みんなすでに顔が赤くなって…いや特にアヤネの目が据わっているところを見るとだいぶ酔っているようだ。
「アヤネ、クレイガーさん…俺がどれだけ残業でイラついているかわかない様だな…。」
少しトーンが低くなったアルトスの声を聴き、アヤネはゆっくりと喉を鳴らしながら唾を飲み込む。
「俺が本気を出せば、お前らに戦慄を与えるぐらい、さもない事を忘れてはいないだろうな。」
周りの冒険者の賑わいが、嘘の様に静寂を感じると、特にアヤネはほろ酔い気分が吹き飛び、背中に汗が一滴流れ落ちる感覚がある。
「ちょ、ちょっと言いすぎたわ。1杯おごるから早く注文しなさ・・いよ・・・・ね。」
その最後の言葉が出る刹那だった、アルトスは音を立てずに宙を舞い、ロイの頭上を通り越しアヤネの横に飛び移る!!
−−ザザッ−−
「ひぃぅっ!!
そのまま綺麗に正座をし土下座の形になりながら、アヤネの足前にジャンピング土下座をした。
それも見惚れるぐらい綺麗な土下座だ
「冒険者の皆様のおかでございます。アヤネ様のありがたいお言葉頂戴いたしまする。」
そして、そのままアヤネの足にアルトスは頬をすり寄せる。
「ひゃっ!!」
そのまま、足舐めようかという勢いだ。
「悪かったわよ、確かに戦慄覚えるから!!覚えるから!!もう、早く注文しなさいよ!!」
緊張から解放されたからか、アルトスの動きが気持ち悪いのか、それとも両方なのかわからないが、涙目になりながら、とにかく早口であるに注文を促す。
「ありがとやーす!!お姉さーん、こっちのテーブルにエールを一つ!!きんっきんに冷えたやつお願いね!!」
アヤネの言葉が聞こえた瞬間に、体制を立て直してすぐさまお酒を注文をするアルトスとロイの肩に掴まるアヤネに
「先生に1本取られたね、アヤネ」
「あれぐらいの行動で動揺するとは、まだまだだな。ロイを見習え」
「アルトスが変な動きをするのはいつもの事じゃ、うろたえる方が悪い」
「………(もぐもぐ)……」
「うーーー!!あんなんダメでしょ!!気持ち悪いわよ!!」
仲間からもダメ出しをされ、うなだれるアヤネを見て他のみんなから笑いが漏れる。
そんな楽しいお酒を飲み始めて30分ぐらいたった頃だろうか、尿意をもようをしアルトスが席を立とうとしたところ
−−ドン—
「きゃっ!!」
「おっと、ごめんよ」
どうやら椅子が当たってしまった様だ
その方向を見ると、そこには炎の勇者がたっていた。
「あーーー!!」
「ん!?」