読めない時計
ガラスケースに仕舞われたそれは時計だ。
銀色の四角い箱のような形に、金色の長い針と短い針と細い針がついていて、他にも天秤やら振り子やらがついている。
私は時間を確認したくて、その時計を見る。
短い針が指してるのは4時。
長い針が指してるのは20分。
細い針はおそらく秒だろう。
4時20分。間違いがないか念のためデジタル時計を確認すると、現在は4時20分15秒。
一致している。
けれど。
本当にその見方で合っているのだろうか。
デジタル時計が4時20分40秒を示す時。
私はもう一度銀色の時計を見た。
まずは秒だ。
細い針は40秒をさしていない。
これは秒針ではなかったのかもしれない。
短い針が指してるのは8時の方向。
長い針が指してるのは3分の方向。
8時3分21秒。
私は、自分の見方が違っているのだと思ったから、色んな見方で、時計と時間を一致させようと試みた。
いったいどれが時、どれが分、どれが秒なのか。天秤は秒に関わることなのか。振り子は一定に揺れているのか。
それから数時間、時計を見ながら考えた頃。
「待たせてごめんね」と黒兎が隣にいた。
私はちらりとデジタル時計を見た。
デジタル時計は4時20分50秒だ。
読み方の解けないアナログ時計は14時25分6秒を示している。
「私も、数秒前に来たばかりよ」
「読めない時計」おわり