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私のためのお兄さま
私は教会のような学び舎で暮らしている。
そして、私はお兄さまに嫌われている。
お兄さまに、私が何故嫌われてるのかは分からない。
私はお兄さまではないのだから、お兄さまの気持ちが分かるわけがない。お兄さまだって、私の気持ちなどわかるわけがないのだから。
お兄さまは何かを成し遂げようとしていて、そのための方法を知らなかった。
私は知っている。
お兄さまが子供の頃に弾いていたピアノの譜面を、左右にわけて私とお兄さまで共演すればいいだけ。
だから、私はそれをお兄さまに言った。
その途端、お兄さまは「-----」と優しく私の名前を呼んだ。私が驚くと、「どうしたんだ?-----はお前の名前だろう?」と優しく微笑んだ。
私はお兄さまが好きだから、演技だとわかっていても嬉しかった。
その夜、私はお兄さまに呼び出された。
お兄さまはあの時の事件の真相を思い出してしまったから。お兄さまが犯した罪の相手が私だということも。
お兄さまはまた私に罪を重ねた。
私は嬉しかった。
「私のためのお兄さま」