1/13
私のための兎
私の兎が生きて帰ってきた。
私はとても嬉しかった。
兎はずっと一緒にいると言ってくれた。
私はもう一度、兎を手に入れたのだ。
しばらくして。
私は兎に耐えられなくなった。
今までずっと会っていなかったから、私の中の兎と現実の兎の差異が耐えがたい苦痛となった。
私の兎なら言うことを、兎は言えない。
私の兎なら分かることを、兎はわからない。
私は飽きてきてしまう。このままでは兎のことを愛せなくなってしまう。
だから私は兎をもう一度殺した。
悲しくて悲しくて泣いてしまった。
もう会うことができない兎はなによりも愛しく思える。
私はまだ、兎の帰りを待っている。
「私のための兎」おわり