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連載できればしたいな

狼と赤ずきん

作者: 猫音

読んでみてください。



これは、絶対に叶わない恋のお話。






ある日、赤ずきんは森に出かけました。

おばあさんが身体を壊してしまったため、看病をしに行くのでした。



編まれた籠に入っているのは、風邪の薬にパン、ぶどう酒。そして林檎。



赤ずきんは林檎が好きでした。

この林檎はおばあさんのためにお小遣いで買った林檎でした。



おばあさんの家に行くには森を通らなければなりません。

その森には人食い狼が出ると言われています。

ですので、日があるうちに帰ってこなければいけません。

自然と急ぎ足になります。



途中で道が2つに分かれました。

しかし、そこは迷わず右に曲がります。



何故なら何度もおばあさんの家に通いすぎて覚えてしまったからです。

むしろ、この森すべてを暗記しているかもしれません。



赤ずきんは頭が良かったのです。

ですが、一つだけ分からない事があります。赤ずきんは狼に会ったことが無かったのです。


むしろ、熊にも会いません。


ウサギやリス、キツネや小鳥には会うのです。つまり、大型動物と呼ばれる動物に会ったことが無いのです。



なので赤ずきんは狼は昼には出てこないやつなのだと認識していました。



やっとの事でおばあさんの家に着きました。

ふぅ。と汗をぬぐい家の戸を叩きます。



トントン



「おばあさま!お見舞いに来ましたよ。」



ガチャりと扉を開け、中に入ります。

そのままおばあさんの看病をしました。



小窓の外を見て、赤ずきんは日が傾いているのに気づきました。

今日は林檎についておばあさんとお話をしていたら夢中になってしまったようです。



「おばあさま。そろそろ帰ろうと思います。」



「そうかい。気を付けて帰るんだよ。特に、狼には気を付けるんだよ。」



「えぇ。任せてください。では、お大事に。」



パタンと扉を閉めて歩き始めました。

暫く経つと傾いた太陽の光で伸びた影を見つけました。



その影はまさしく狼の影でした。

赤ずきんは驚いて思わず足を止めてしまいました。



それに合わせて狼の影も歩くのを止めました。



まじまじと影を眺めた赤ずきんはそのままほうっておくことにしました。



その日は無事に家に帰りました。



狼の影は森が途切れるギリギリの所まで追いかけてきました。






また数日後。

今度は森に薬草を取りに来ました。

この森は自然豊かなのでいろいろな植物が生えています。



今日は泉の近くまで来ました。

喉が渇いたので泉の辺まで降りて両手で水をすくって飲んでいました。



ふと、水面を見るとこの間の狼が後ろの木からこちらを覗いていました。

でも、赤ずきんしか見ていないらしく。赤ずきんが狼の事を見ている事には気づいていません。



赤ずきんは狼を見た事を後悔しました。






また数日後。

赤ずきんは森にケーキとクッキー、パンくずを籠に入れて持って来ました。


今日は特に何も無い日なのです。

気の向くままに森を歩きます。


暫く歩くと小動物が寄ってきました。彼らにはパンくずをまいて与えました。

彼らには餌付けをしているのでそのためのパンくずでした。



小動物と戯れた後はお昼寝です。

泉の側でお昼寝をするのが赤ずきんの日課でした。



ふと、目を覚ました赤ずきんは。隣に置いてある籠を持って歩き始めました。



泉から少し離れた所にある大きな切株にその籠を置いて、その傍らにメモを記すとまた、泉の方へ戻っていきました。



そのまま二度寝に入ります。



その様子を見ていた小動物達は目を合わせてその切株の近くから逃げていきました。



そこに赤ずきんの後ろをついて来ていた狼が現れました。



メモを見て、そのピンッと立った大きな耳を萎れさせていました。



そして、大事そうに籠を抱えてその場を後にしました。




次の日。

大きな切株の所に赤ずきんはやってきました。

今日は大きめのサンドイッチを5つ作って持ってきていました。



切株の上には空っぽになった籠がありました。その中にサンドイッチを入れ、メモを残してまた去っていきました。



その様子を木の陰から眺めていた狼は赤ずきんが去ったのを確認してからまた籠を大事そうに抱えて帰っていきました。





そのような穏やかな日常が繰り返された数日後。



赤ずきんは大人達が騒がしい事に気づきました。

物陰からその話を聞いた赤ずきんは、大人達に気付かれないようにその場を後にしました。



赤ずきんは森の中を懸命に走りました。

小鳥やウサギに時折、彼は今何処にいるのかを尋ねながら。



走って、走って。いつもの切株まで来ました。

そこにはポツンと空っぽの籠が置かれていました。



赤ずきんは慌てて辺りを見渡します。そのまぼろぼろと涙を零しながら彼を呼びます。



そのまま日が落ちてきました。

赤ずきんは泣き疲れてそこに蹲っていました。




ふと、気づいた時には辺りは真っ暗闇でした。



ぼうっと虚空を見つめているとキラリと光る二つの何かを見つけました。



それにつられるように、手を伸ばします。

ふらふらと立ち上がってゆっくりと近づいて行きました。



その光が逃げない事が分かると赤ずきんはあと少しで触れる事ができる、僅かな距離で手を止めました。



そのまま、また、涙を零しました。



触れない代わりに赤ずきんは言いました。



「愛していています。」



と。



赤ずきんは頭が良かったのです。触れたらこの物語は自分達にとっての最悪の終わりに向かうのだと。



そして、彼も分かっていたのです。触れることは許されないと。物語は物語通りのエンドロールを迎えるのだと。



だから、彼も言いました。



「愛している。」



と。



会いたかったんだと。話したかったんだと。

でも、1番は触れたかったんだと。



それは、許されない。



だから、続くんだと。

物語を終わらせる事は出来ないと。

抗う。



出会ったのは必然で。

これは繰り返される物語だと。



運命は変わらない。変えられない。





2人が赤ずきんと狼である限り。





感想お待ちしております。

続く、かもしれません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 二人が至近距離で顔を合わせて、なんで両方とも、愛していると言うのか気になります。違和感感じてしまいまして。もしかしたら端折られたシーンとかあったりしました? あったらそれも見てみたかったです…
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