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プロローグ

 ねじれた雑巾が飛んできた。

 僕は構えた箒を振ろうとするが、横からニュっと伸びてくる人影が見えた。

 やばい、と咄嗟に動きを止めようと試みたが、既に回り始めた腰は急には止まらない。

 結局、思い切り振りぬいてしまった。

 でもその割には、何の手ごたえもない。

 代わりに、顔面にベチャリと手ごたえがあった。

 臭い。これは……雑巾か?


「ちょっと、男子! 遊んでないで真面目に掃除しなさいよ」

 そしてこのやかましい怒声は見なくてもすぐにわかる。

 僕は雑巾を顔から剥す。やっぱりそうだ。

 眼鏡の奥で光る大きなツリ目がいつも以上にツリあがっている。


「ごめん、委員長……でも急に割り込んでくるのは危ないよ。もう少しでケガさせるところだったじゃないか」

「……何よそれ? 無様な大振りを人のせいにしないでよ、佐藤くん」

「おかしいな。確かに見えたんだ。横から、手がこう」

「はいはい。妙な言い訳してないで、早く掃除してください」

「別に、言い訳とかじゃ」

「この不毛なやり取りはいつまで続くのかしら?」

 ギロリと睨みつけられた。彼女の鋭い眼光を前にしてはもはや何も言い返せない。

 渋々僕らは掃除を再開することにした。


「悪かったな、佐藤。顔なんかに当てちまって」

 雑巾ボールを投げた山中が申し訳なさそうに近づいてくる。

「いいよ、僕もたまにやっちゃうことあるし」

 ホントごめんなと重ねて詫びる山中だったが、続けて不思議そうに呟いた。

「でも俺、投げた時は確かにストライクど真ん中に飛んでったと思ったんだけどな」

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