6.天才ゲーマーの独り言
ーー俺は昔から、バカだった。
すぐにカッとなって周りが見えなくなるし、ゲームばっかしてるし、そのせいで真白をこんな目に合わせた。
でもそんな俺にも仲間って呼べるやつはいる。
俺よりしっかりした妹と、なんでもできる天才野郎、それから病弱で素直で、本当に天使みたいな子。
ゲームをやり始めたのは、物心ついてすぐだったと思う。うちは家が放任主義で、欲しいと言ったらなんでも与えてくれた。
ゲームだって周りの奴らが持ってるから買ってもらっただけにすぎなかった。俺はゲームの才能だけはあったのか、簡単にクリアできちゃうし、大して面白いとも思ってなかった。
だけどある日、足を骨折して入院した。
病院内はゲーム禁止だけど、こっそりやってた。だってバレなきゃいいんだし、バレても謝れば許してもらえる。
そんな擦れた考えの俺だったから、入院しても病室にゲームを持ってって暇つぶしをしていた。
「何してるの?」
ゲームをやってる最中、話しかけられた。初めて見たとき、天使かと思った。ミルクティーみたいな色のふわふわした髪の毛に、透き通るように真っ白な肌、宝石みたいに青い瞳。
これは人間か?それとも俺はいつの間にか死んでお迎えが来たのか?なんて考えちまうほどに、彼女は儚く愛らしかった。
「げ、ゲーム…だけど」
少し言葉が詰まったのは、そんなことを考えてたから。
「あ、それ知ってるよ!ツカサがやってるけど、難しいって言ってた!すごいんだね!」
目をキラキラさせながら画面を見つめる彼女に、俺は得意げになった。
たかがゲームごときできて何になる?なんて言われてきた俺にしてみればその反応は新鮮で、何より自分が認められたみたいで嬉しかった。
それからだ。
俺がゲームを夢中でやり始めたのは。
彼女を喜ばせたくて、彼女に認めて欲しくって、ゲームをした。
周りの奴らが蔑んでも、罵っても、呆れても、彼女だけは俺を否定しなかった。ただ嬉しそうにニコニコ笑ってくれた。
ーーだから、ゲーム内で死ぬわけにはいかねぇんだよ。
真白の病気は不治の病だって医者が言ってるのを聞いた。
二十歳になったその日に死ぬ。
それまでにどんどん弱っていくって。
ふざけるなって思った。
どうして真白なんだって思った。
その原因がこの世界にあるなら、俺は必ずクリアしてやる。俺にクリアできないはずがない。
走馬灯のように流れてきた情景をみて、腕の中で小さく丸まっている真白を見て、俺は剣を取り出す。
「くっそおおおおおお!!」
レベルが足りない?スキルがない?
それなら調達するまでだ。裏ルートでもなんでも使ってやるよ。
「シュンっ」
なぁ、真白…笑ってくれよ。俺はそれだけで頑張れるから。
覚えとけ、お前を守るのは、
「天才ゲーマーなめんなよ」
この世で一番ゲームをやり尽くした男だ。
俺は魔王に短剣を突き刺した。これがうまくいくかわからねぇけど、やらないよりマシだ。
「合成合体!!」
次の瞬間、身体が引きちぎられるような痛みに襲われた。