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R-076 弾薬不足か?


 ミーミルがいつの間にか一大弾薬集積地に変わってしまっていた。

 ある意味、この大陸の中継点ではあるし、岸壁の上だからそう簡単に敵が登ってこれない、それに東西に延びた地形がそんな事を可能にしたんだろうか?

 大型飛行船で運んで来た爆弾を、小型飛行船に積み替えてヨルムンガンドの南に広がる敵軍を爆撃しているようだ。

 俺達のところにも、生活物資と弾薬を大型飛行船は運んできてくれるが、頻度的には一か月に1回程度になっている。

 足りなくなればミーミルから運んでもらえるが、もう少し砦の弾薬庫を増やしたいところではあるな。

 敵軍の規模を考えると広域殲滅兵器が欲しいところだ。

 ユングの天然成分の殺虫剤がどれだけ効くかが問題だけど、スクルドに10発運び込んで、敵の現れるのを待っている状態だ。

 新たにやって来た屯田兵1個大隊を含めると、ほぼ4個大隊の規模にまで俺達の砦は膨らんで来たが、これでも3千人程度だからな。ベルダンディの3個大隊、ウルドの2個大隊から比べて突出はしているが、どうやら姉貴達はスクルドに敵を誘導させるつもりのようだ。


 姉貴はベルダンディにアテーナイ様を連れて帰ったし、サーシャちゃん達はバジュラと共にウルドに戻って行った。

 残ったのは俺とディーにキャルミラさん。それとユングとフラウなんだが、ユング達も敵軍が出てきたら爆撃をしてミーミルに移動するようなことを言っていた。

 何とも心細い感じはするが、姉貴達の考えではこれで十分との事だ。

 短砲身砲が6門増えて、機関銃も10丁増えたが、何とも心許ない限りだな。

 数日前に、ユングがバビロンから連合王国に工作機械を運んでいたが、それによって生産される弾薬類が供給されるのは少なくとも半年は待たなければなるまい。


「MP-6の徹甲弾を3千発運んでおいたぞ。これでキャルミラさんとアルトさんもしばらくは弾丸不足に悩まずに済むだろう。問題は屯田兵とエイダスの連中だな。ボルトアクションではかなり問題だ」

「MP-6は供与出来ないのか?」

「結構難しいところがあるな。弾丸の供給もだ。予備の部品で大急ぎで組み立てたのは16丁だ。通常弾を6千発持っては来たが……」


 次の入手は望み薄か。弾丸の供給地制が確立してないのも問題だ。1個分隊に供与して、火消しをさせる事になりそうだな。


「ユグドラシルが協力してくれるから、一か月後には100丁は入手出来るだろう。徹甲弾の供給もその頃には目途が立ちそうだ」

「襲来時にはそれなりに数が揃うと?」

「全部には無理だぞ。距離があるからここまで来るのに2週間は掛かるだろう。1個小隊に供与できるかどうかだな」


 となると、砲撃主体という事だな。

 原油のタルは10個程運ばれてきたが、それでどれだけ相手を怯ませられるかはやってみないと分からない。

 イオンクラフトでの爆撃も運べる爆弾の量が問題になる。やはり、殺虫材が上手く行く事を祈ることになりそうだ。


「だが、それまでには砦の建設が進むはずだ。石塀を高くして、奴らの侵入を少しでも阻止しなければなるまい」

「そうだな。館も2階部分が出来てきたから次の戦では3階の床からの攻撃になる。2階の窓は鉄格子を入れているから狙撃用にも使えるだろう。4隅の櫓も大きくなったし、門の櫓も出来てきた。後20日もあれば最低でも石塀の高さは2mを超えるだろう」


 そう言いながら砦の中を見下ろす。俺達がいるのは館の3階部分だ。地上からは10m近い高さがある。ここは東西に延びた南の石塀の回廊と繋がり、東西の見張り用の櫓に達している。ある意味防衛の要になる場所だ。

 3階部分は広場の方向に3階部分があるだけで南側は広い広場になっている。

 南を守る守備兵の拠点でもあるのだが、敵の侵入に備えて、3階の出入り口の左右には銃眼が作られ、まるでトーチカに見えなくもない。

 3階の屋根は見張り台と銃座を兼ねる。1個分隊を乗せておけば活躍できるだろう。

 姉貴のところにある戦車モドキが欲しいところだな。3階広場に2台置いておけば色々と役に立ちそうだ。

 

 姉貴にどうやって話を付けようかと考えていると、戦闘工兵達が丸太を運んで上がってきた。広場の奥に丸太で小屋を作ろうとしているようだ。

 丸太は塀の残材なんだろうが2m程の高さに作って屋根にも丸太を乗せている。10cmにも満たないスリットがたくさんあるから、あれも立派なトーチカとして機能するだろう。裏面は解放されてるのは裏面から出入りすることを考えているようだ。後ろに回られたら厄介なことになりそうだが、1分隊も中に入ればそんな敵を倒すことも出来るだろう。これなら、戦車モドキは必要無さそうだ。


 砦の中にも退避所があちこちに作られている。半地下構造だから、弾薬庫にも転用できそうだ。

 ユング達がいるから岩盤を切りだすのもわけが無さそうだな。4個大隊が駐留するんだから丈夫に作ってもらわねばなるまい。

 イオンクラフトは一時避難をすれば良さそうだ。50km後方にちょっとした集積場を作って数回の補給を可能にしている。

 そんな中、大型飛行船が砦の中に下りてきた。弾薬と食料を運んできたのだろう。

 悪魔軍と異なり、グリートは空を飛ばないだけマシに思えるな。数が同じであればどんなに良い事か……。

                  ・

                  ・

                  ・


 どうにか間に合わせだが砦の強化を終えた時、姉貴から緊急連絡が入った。

 ジャングルからグリートが溢れ出したらしい。

 仮想スクリーンで眺めた画像では、溢れ出したという表現がぴったりの光景が映し出されている。

 何十万ものグリートが大河のように北を目指しているのだ。


 知らせを受けてユングが殺虫剤の入った爆弾を投下しに向かったのだが……。

 着弾点から直径300m程度に影響を与えたぐらいで、それも相手を殺すまでには至っていない。

 弱ったグリートを後続のグリートがたちまち解体して食べてしまった。

 

「かなり攻撃的に見えるのう。それでもバビロンの評価では数万を倒しておるぞ。全く変化が見られんのが不思議なくらいじゃ」

「2千万で数万ではほとんど変化が見えないよ。それでもやらないよりはマシだ。引き続き爆撃をすることになるな」

 

 ジャングルとヨルムンガンドまでの距離は約1500km。連中の速度が時速20kmとすれば4日目にはこの地に到達するぞ。

 俺達の前に布陣する悪魔軍は10万以上に膨らんでいるが、彼らも食われる前には抵抗するだろうから少しは減らせるだろう。


「ベルダンディの工事部隊が砦に引き返しておるぞ。スクルドとベルダンディの間を通過させると言うことじゃろうか?」

「いや、姉貴の事だからスクルドに向かわせるんじゃないかな? ユング達も殺虫剤の爆撃が終了したらベルダンディに向かうはずだ」

「側面攻撃をかけながら東に進路を変えるということにゃ」


 困った顔をエイルーさんがしているけど、確かに困った姉貴だ。待てよ。となると、サーシャちゃんも同じことをしそうだぞ。

 アナコンダの餌と東西の攻撃で真っ直ぐベルダンディに向かって来そうな感じだな。


「弾薬は十分なのか?」

「3会戦分を保管しています。現状での兵員装備数は入っておりません」

 3会戦分の予備ということだろうな。装備ベルトのマガジンポーチに20発マガジンを4個ずつ、腰のバッグに4個の予備だから240発を持っているのか。3会戦分を入れても300万と言うところだ。無駄弾を撃てないぞ。

 後はグレネード弾に爆裂球、砲弾に爆弾と言うところだ。2千万を潰すのは至難の技になるな。更に後続はやってくるが、俺達のところへの補給頻度は大丈夫なんだろうか?

 小型飛行船が1隻にイオンクラフトが21機をフルに使うことになりそうだ。俺達も作戦指揮所の場所を館の3階に移した方が良さそうだし、蟷螂の斧でも爆弾を使えるなら使っておくべきだな。


「とりあえず作戦指揮所を館に移動させる。4面の壁を守る大隊長、砲兵部隊長、航空部隊長は本日20時に作戦指揮所に集合だ。航空部隊長は爆裂球の支給を受けて鎖で強化しておくこと。砲弾、爆弾の数が限られている。使えそうなものはすべて使うぞ」

 俺の指示でバタバタと作戦指揮所から人が出て行く。

 残ったのは俺とディー、アルトさんにキャルミラさんだ。

 

「アルトさんには各大隊から1個小隊ずつ出して貰って、迎撃部隊を組織してほしい。塀を越えてくるグリートの殲滅が目的だ。キャルミラさんは【メルト】が使える魔道士を10名以上確保してくれ。イオンクラフトで爆裂球と【メルト】を使い反復攻撃をしたい」

 2人が頷いて指揮所を出て行く。残ったのはディーと俺になるが、そろそろ新しい指揮所に出掛けるか。俺達の守る場所は館の2回にある広場って事になりそうだ。だが、その前に、ディーに爆裂球を数個袋に入れた即席の集束爆弾を作ってもらおう。昔の戦でも結構役に立ったからな。


 仮設指揮所は、アルトさん達の待機所に利用すればいい。

 そんな事を考えながら南面の壁を利用して作られた館に入った。意外と簡素な作りだ。エントランスから左右に階段が作られ2階に続いている。1階は会議室と食堂それに控室等が並んでいるけど、今は全て倉庫になっているようだ。入り口の扉は鉄枠で補強されているから、そう簡単に破られる事は無いだろう。

 階段を上がって2階に向かうと、10部屋の士官室と作戦指揮所が並ぶ。これも現在は倉庫だし、南面の壁に作られた窓は、狙撃用の狭間になっている。窓の大きさは20cm程だから、内部に侵入するのは出来ないだろうな。

 更に階段を上って3階に向かう。ここは普段は見張り所として使われるが、石造りであることを考慮して、ここを作戦指揮所にする。

 部屋の大きさは教室よりも一回り大きいくらいだが、東西に小部屋がある。小部屋を通信室にすれば丁度良い大きさだ。

 もう1つの小部屋には2段ベッドが4個置かれているから、仮眠位は取れるだろう。

 指揮所の片隅には、弾薬の木箱が重ねられている。守備兵の弾薬補給もこの部屋で行われるようだな。

 部屋の中心に2m四方のテーブルがある。その上に地図と駒を並べて指揮が出来そうだ。


 部屋の南側にある扉を開くと、廊下のような細長い部屋がある。奥行きは2m程だが、横の長さは20mもある。この部屋が2階天井部の広場を守るトーチカになる。前には直径15cm程の小窓が10個程空けられ、背後には弾薬の木箱が並べてあった。

 更に頑丈な扉を開くと、2階天井部の広場に出る。

 扉は鉄格子に横板を張ったものだから、先ずこれを破るのはかなりの大物になるだろう。広場の大きさは奥行き20m横30m程だが東西には小さな丸太を組み合わせた銃座がある。急造だが、北のトーチカを補完してくれるだろう。

 


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