ロボットJK 【竪穴護り5型】
シーン1
某国際空港
〇 United Airlinesの旅客機から降り立つプラチナブロンドにサングラスの女性はコートの襟を立てる。
〇 ベルトコンベヤーから押し出されるトランクを左小指1本で抜き取り、曳いて行くイリヤは右手でスマホを操作し電話を架ける。
プツン! と接続音がすると、イリヤは口から奇妙な音を発し画面を確認する。
スマホの画面は『Connected』の文字が『Japanese』に変わり、男(橘唐兵衛)の声が聞こえる。
橘の声『イリヤ、お帰り』
イリヤ「お疲れっす!」
橘の声『お前、どっかのあんちゃんかぁ~?』
イリヤ「はあ……そのまんま日本語変換してるだけなんスが……」
橘の声『日本のJFKはそんな言葉は使わない』
イリヤ「JFK? それ、今度のミッションのコードネーム? 暗殺はヤバいっすね!」
橘の声『ここは日本だぞ! 米国じゃない!』
イリヤ「JFKと言えば1963でしょ?」
橘の声『どうやらお前はヒヤリング機能に問題がある様だな! 私はJKと言ったはずだ』
渋面を作るイリヤのモノローグ『ったく! このオヤジは……』
橘の声『それともお前はJKの意味を解さないのか?』
イリヤ「知らねえよ」
橘の声『分かった。【Conversion Room】に入ったら、時事用語事典もお前の頭へ送り込んでやる』
イリヤ「迎えは?」
橘の声『タクシーを使え』
イリヤ「経費で落ちるんだろうな?」
橘の声『経費で落ちるかは微妙だな。 お前は米国で悪ノリし過ぎた。上層部のウケは最悪だ!』
イリヤ「何でだよ! 綺麗に解決して見せたじゃないか?!」
橘の声『ああ、草木の一本も生えないくらいにな』
イリヤ「でも、組織は壊滅させただろ?!」
橘の声『それがやり過ぎと言ってるんだ! お前の型式は?』
イリヤ「竪穴護り5型」
橘の声『つまりお前は国産初の女性型貞操管理アンドロイド……そのプロトタイプの筈だったな!』
イリヤ「まあ、そうだけどAIは学び、最適解を導き出すもんだ」
橘の声『上層部は最適解には程遠いと思っている』
イリヤ「それは見解の相違だね」
橘の声『タクシーで自腹を切りたくないんなら、ここでは上層部の見解に沿うべきだな』
イリヤ「それはミッションに依るよ」
橘の声『心配するな! 今度のミッションはドンパチなんて起こりはしない』
イリヤ「起こらないの?! ツマンねえじゃん!」
橘の声『つまらなかろうが、女性型貞操管理アンドロイドに相応しいミッションだ』
イリヤ「そうか! 分かった!! どっかの風俗店の摘発かなんかだろ? 鍛えぬいた“寝技”が披露できるな!」
橘の声『“寝技”なんて! 貞操管理アンドロイドの言う事か?』
イリヤ「“適切な管理”には必要だろ?」
橘の声『全く必要無い! 今度の潜入先は女子高だ』
イリヤ「スケ番退治か?」
橘の声『今は令和だぞ! その昭和的感性は修正しておけ』
イリヤ「分かったよ! せいぜい魅力的な外国人教師を演じさせてもらうよ」
橘の声『何言ってんだ! お前にはJKとして潜入してもらう。よって今の容姿は修正だ!』
イリヤ「マジかよ!」
シーン2
姿見の前で一糸まとわぬ姿で立つイリヤはため息を付く。
イリヤ「このカラダ。気に入ってたのになあ~」
イリヤの後ろには【Conversion Room】が開口している。
モニターには『入谷綾音 Preparing for conversion』の表示
イリヤ「しゃあねえなぁ~(とエンターキーを押し、ブースへ入って行く)」
ブースの扉が閉まると、モニター画面にマトリックスが走り、ブースがフラッシュと轟音に揺らめく。
それらが静まると再びブースの扉が開き、湧き上がる霧の中から、黒髪ロングの姫カットの美少女(入谷綾音)が一糸まとわぬ姿で現れる。
綾音「(姿見に我が身を映して)ツマンねえカラダ!」
ふくれっ面でクローゼットを開けると、潜入先の高校の制服(ブレザー、スカート、ベスト、ブラウスにリボン、指定ソックス等の)一式の他はスクジャの上下しかない。
綾音「下着とか自腹なんてありえねーんだけど!」
斯様にブー垂れながら綾音はスマホでオンラインショップの検索を始めた。
<了>




