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悪役覇道  作者: wisteria
6/6

追放

「条件が満たされたことを感知。『悪役』の『ヘイティング』が『悪役覇気』へと変化。常時発動へと切り替わります」


 その声は唐突に頭の中に響いてきた。耳から伝わってくるのでは無く体に響く不思議な感覚に少しくすぐったい気分になる。だが言葉の内容が内容なので惚けていることはできない。

 この声の仕組みすら分からないが、確実に言えるのは今、俺は非常にまずい状態にあるということである。スキルが開花した時と同じように、本能的にスキルが変化していることを感じる。

 そして、その変化はあの声からもわかるように、どれだけ好意的に解釈しても良い方向に変わっているとは言えないものだ。

 『悪役覇気』。俺の解釈が間違っていなければ、周りのすべての人に対して『ヘイティング』を行う能力だと思われる。そして、今この状況において最も持っていてはいけない能力である。

 「声」が脳内で響いてからものの数秒で、クラス全体が完全に俺を「悪」として責め立てる雰囲気になっていた。多勢に無勢。単純計算で三十九対一の勝負だ。勝つことなどできるはずもない。

 異世界(ここ)での生活がほぼ終わったことを感じ、俺は絶望した。意味もなく悪い扱いを受けるのではなく、その原因が分かっているからたちが悪いのだ。

 しかも現時点でその原因はどうしようもないものときた。もしこの世界に神などというものがいるのならば、俺は確実に嫌われているのだろう。

 今や俺に向けられる視線のほとんどが憎悪の感情を含んだものになっていた。俺は、生まれて初めて向けられる剥き出しの悪感情にただただ戸惑っていた。

 悪感情というのは、とても簡単に増幅し伝達されるもので、ほんの少しの時間で最悪だと思えていた状況がもっと悪くなっていく。


「責任取れよ、東」


 今までの人生で一度も聞いたことがないほど冷たい声が空間に響いた。発言したのは陽キャ(一軍)の一人、野村悠輝翔。強力な能力である『断絶』を持ち、クラスの雰囲気を左右する影響力を持つ生徒の一人である。

 そして、何とも運の悪いことに委員長に惚れているという噂のある生徒だ。どれだけ楽観的に考えたとしても俺の援護のための発言でないことは明らかだった。

 彼は大きく溜め息を吐き、さらに俺を責め立てる言葉を並べていく。こうなると、俺には悪意がなかったと説明することも、説得することもできない。その場の流れに従い、クラスの結論(判決)を受け入れる事しかできないのだ。

 立場の弱い者の意見はいつだって軽視される。それが自分の立場を強化する努力を怠ってきた自分の責任であることは分かっている。だが、愚痴くらいは言わせてほしい。もうこのクラスで生活することも無くなるだろうから。

 俺だって馬鹿ではない。自らのスキルによって良心という最後の余地を絶たれた俺がどうなるのかくらいは想像がつく。クラスの輪を乱すものは排除する。その方向に議論が流れて行くだろう。



 三日後、俺はシュバルトに呼び出されて皇族居住区域へと足を運んだ。この三日間部屋に閉じこもっていた俺にとって久し振りの外出ではあったが、気分はむしろ沈んでいた。

 三日前、話し合いによってひとまず俺の隔離が決められ、俺は座敷牢のような所に押し込められていた。そこから出されたということは、追放が決まったか皇族によって却下されたかだ。

 あえて選択肢を二つ挙げたが、結果は分かりきっている。その考えは、シュバルトと対面した時の、彼の冷たい視線で確信に変わった。


「東 航。今、この瞬間よりお主は勇者ではない。皇宮追放に処す」

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