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悪役覇道  作者: wisteria
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悪役

「東 航殿。魔術適性 闇。 スキルは『悪役』です」


 『悪役』。かなり不穏な響きだ。なんだか本当に嫌な予感がする。この流れは異世界転移というよりは最近流行の追放系に近い気がする。

 まさか本当に追放されたりとかはないだろうが…いや、何かフラグになる気がするから、この考えはやめよう。


「おお、『悪役』。珍しいスキルだな。誇っていいぞ、勇者よ」


「へっ?」


 俺の不安はシュヴァルトが発した言葉で掻き消された。どうやら『悪役』は普通にレアスキルでわりと当たりに分類されるらしい。正直拍子抜けだ。

 スキルの内容は「ヘイティング」敵のヘイトをこちらに向けるというものらしい。つまるところ、これからの俺の役割は囮ということだ。

 ちなみに、スキルの内容についてはなんとなく分かった。なんというか、本能に染み付いている感じ。これはあの謎の黒い光が影響していると考えていいのだろうか?

 俺が考え込んでいるうちに能力開花の儀とやらはどんどん進んでいく。俺は、二人、三人とクラスメイトたちが次々と儀式を終えていくのをぼんやりと見ていた。


 全員の儀式が終わると、俺たちは部屋へと案内された。どうやら十部屋ほどしか準備ができなかった様で、案内してくれた人にやたらと謝られた。

 だが内装はなかなか豪華なもので、そこら辺のホテルの一番いい部屋よりも快適なのではないかというほどだ。最初に部屋に入った時は、そりゃ二十人分このレベルの部屋を準備なんてできないわと納得した。

 というわけで一部屋三・四人で使うことになったわけだが、勿論ここでも学校のグループで部屋分けがされ、俺は毎度のごとく海と滝と同室になった。

 そして、次の日の予定などを知らされ、それぞれが部屋の中で休息を取る時間となった。ちなみに、夕食は届けられたので部屋で食べた。朝食も同様に、部屋で食べることになるらしい。


「タッキースキル何だった?」


 部屋の中に明るく響くのは海の声だ。俺も少し気になるので、興味ないふりをしつつ聞き耳を立てることにする。

 滝は苦笑いで、人が何の能力を手に入れたかぐらいは覚えておけなどと、地味に俺にも刺さることを言いながら話し始めた。


「俺のスキルは『鑑定』だ。まぁ能力の内容も聞いての通り。堅実なスキルって感じだな」


 確かに『鑑定』は戦闘の役には立たないが、それ以外でははとても使い所のある優秀な能力だと言える。本当に滝の性格に合った堅実なスキルだと思う。

 海も自分のスキルについて語りたいようで、誰も質問ていないが説明を始めた。


「えっと、僕のスキルは『支援魔術』。何か今の段階では、他人にはかけられないらしいけど。効果は、今のところ「筋力五倍」だって」


 海のスキルもかなり有用だな。検証すべき点は多そうだが、初めの時点で筋力が五倍になるというのはかなり大きい。将来性にも期待が持てそうだ。

 俺は、二人が向けてくる視線から、次は俺の番であると感じ、自分のスキルについて話し始めた。


「俺のスキルは……」



 次の日、前日知らされていた通りの時間に部屋に迎えが来て、本日の目的地に案内された。ついて行った先は何やら教室のような所で、既にクラスの半数程度が集まっていた。

 先に来ていたクラスメイトは癖なのか、教室の席順通りに座っていたので、俺たちもそれに習うことにする。補足するが、海は俺の三つ後ろの席で滝はその隣だ。

 なんとなく授業前のような雰囲気になっていたので静かに待つことにする。今この教室にいる生徒はどちらかというと大人しいメンバーが多いようで誰も騒いでいないため、教室内には静寂が広がっていた。

 その後、新しく生徒が入ってくる様子もなく、しばらく静かな状況が続く。だが、数分後、その静寂を破るように扉を開ける音が響いた。

 同級生の誰かが入ってきたのかと思ったが、そうではなく、どこかで見たことのあるような顔の女性が入ってきた。金髪に、ルビーのような赤い瞳の女性だ。俺は、この世界の女性は金髪が多いのだろうかなどと阿保なことを考えながらその人を見ていた。

 その女性は、俺達の前、つまり教卓の位置に向かって歩いて行く。教卓に立った女性は、俺達の視線が集まっているうちにと考えたのか、急いで自己紹介を始めた。


「私は アリスフィーネ・アインツェ・アノルフィア

 あなたたちの教育を任されたものです。

 以後、お見知り置きを」


 その自己紹介を聞いて、俺は誰に似ていると思ったのか思いついた。マーガレットに似ているのだ。瞳の色もそう思って見てみると、シュヴァルトに似ている。


「私は皇族の家系ですが、皇位継承権を持っていませんので変にかしこまらずにアリスと呼んでいただけると嬉しいです」


 何だか複雑な事情があるようだが、そこに触れるような馬鹿な奴は今この場にはいない。そう思ったところで、一つ疑問に感じることがあった。


「アリス、さん。あの…ここにはクラスの半分ほどしか人がいなんですけど。残りのみんなは?」


 他の皇族と違ってアリスフィーネには話しかけやすいのか、クラスの女子の一人が俺の思っていたことを代弁してくれた。


「ここには、主に魔術適正が高かった方たちに集まってもらっています。心配しなくても、他の方々は、別の場所で教育を受けてもらっています」


 その言葉を受けて、安堵したようなため息がいくつか響いた。まあ友人がこの場にいないとかだったら結構不安だものな。


「では、皆様には魔術の訓練をして頂きます」


 その日、訓練のせいで俺たちは立たなくなるほど疲労した状態で部屋に帰ることになった。


 教訓。優しそうに見えても厳しい場合だってある。決して見た目に騙されてはいけない。

今回は少し短めになってしまいました。

次回はもう少し頑張ります。

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