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料理しかできない私が、最強プレイヤーに守られる理由  作者: かも@ろん


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第9章 決勝戦、刃が哭き、涙が落ちる

闘技場は、熱気と喧騒で満ちていた。

巨大な石造りの円形闘技場。

観客席はぎっしりとプレイヤーで埋まり、

松明の炎が赤く揺れ、砂埃が舞い上がる。

熱気が渦巻き、空気は重く、息を吸うだけで胸が熱くなる。

「クロウ来たぞ!」

「今年も優勝候補だ!」

「いや、例の初心者のバフがあるからだろ!」

「どこだよ、その初心者!」

ざわめきは波のように押し寄せ、

闘技場の空気は緊張と興奮で張り詰めていた。

クロウはその中心に立っていた。

黒いコートが風に揺れ、

前髪の隙間から覗く瞳は鋭く、

その周囲だけ空気がひんやりと冷えているようだった。

(……ひより。無事でいろ)

胸の奥で、静かに願う。

審判の声が響く。

「——決勝戦、開始!」

闘技場の空気が一気に爆ぜた。

***

森の拠点では、ひよりが焚き火の前で膝を抱えていた。

風が冷たく、木々の影が揺れ、

森の奥から不穏な気配が漂ってくる。

焚き火の火は弱々しく揺れ、

木々の間から差し込む月明かりは薄く、頼りない。

風が吹くたび、葉がざわざわと揺れ、

まるで森がひよりに警告しているようだった。

「ひよりちゃん……」

エルダが心配そうに覗き込む。

「大丈夫……? なんか、顔色悪いよ」

「うん……なんだか、胸がざわざわして……」

そのとき——

森の奥から、複数の足音が近づいてきた。

ざっ……ざっ……ざっ……

落ち葉を踏みしめる重い音。

枝が折れる乾いた音。

風が止まり、森が息を潜める。

「……ひよりちゃん、隠れて!」

エルダがひよりの腕を掴んだ瞬間、

木々の間からプレイヤーたちが姿を現した。

派手な鎧が月明かりに反射し、

その光はまるで獲物を狙う獣の目のようにギラついていた。

「いたぞ……あの初心者だ」

「クロウのバフ役、確保しろ」

「大会中に弱らせれば、クロウは勝てない」

ひよりの背筋が凍る。

「や、やめてください……!」

プレイヤーの一人が笑った。

「大人しく来いよ。お前の料理、俺らにも使わせてもらう」

エルダがひよりの前に立ちはだかった。

「ひよりちゃんに触るな!」

「NPCが邪魔すんなよ」

プレイヤーの一人がエルダを殴り飛ばした。

エルダの身体が地面に転がり、落ち葉が舞い上がる。

「エルダくん!」

ひよりが駆け寄ろうとした瞬間、

プレイヤーの手がひよりの腕を掴もうと伸びてきた。

そのとき——

ひよりの手にあったスープが、淡く光り始めた。

黄金色の液体が揺れ、

焚き火の光を受けてきらりと輝く。

(……守りたい)

その想いが、スープに宿った。

——ぱぁぁぁぁっ。

光が弾け、

スープから“風の結界”が広がった。

「なっ……!?」

「なんだこれ……!」

プレイヤーたちが弾き飛ばされる。

エルダが目を見開いた。

「ひよりちゃん……今の……!」

「わ、わかんない……!

でも……守りたくて……!」

スープの光は、まるで意思を持つようにひよりを包み込んでいた。

***

その瞬間——

闘技場のクロウの身体にも、同じ光が走った。

「……っ」

魔力が脈打ち、

身体の奥から力が湧き上がる。

観客席がざわめく。

「クロウのステータス……上がってないか?」

「なんだあの光……!」

「まさか……噂の初心者の……!」

クロウは剣を握り直した。

(……ひより)

胸の奥が熱くなる。

次の瞬間、

クロウの姿が消えた。

風が走り、

剣閃が閃き、

相手のHPが一瞬でゼロになる。

——ドォォォォンッ!

観客席が爆発したように沸き立つ。

「クロウ勝ったぁぁぁ!!」

クロウは勝利のアナウンスを無視し、

すぐに闘技場を飛び出した。

(……間に合え)

その想いだけが、彼を突き動かしていた。

***

森の拠点では、

結界がひび割れ始めていた。

——バキィィィィンッ!

「やめて……来ないで……!」

ひよりの声が震える。

プレイヤーが手を伸ばす。

「大人しく来いよ。お前の料理、俺らが使ってやる」

「いや……!」

その瞬間——

風が吹き荒れた。

——ゴォォォォッ!

黒い影が、ひよりとプレイヤーの間に降り立つ。

「……触るな」

クロウだった。

月明かりが彼のコートを照らし、

その姿はまるで夜の森に降り立った守護者のようだった。

ひよりの目から、涙がこぼれ落ちる。

「クロウさん……!」

クロウは剣を構え、プレイヤーたちを睨みつけた。

その瞳は、鬼気迫るほど鋭く、

しかし——

ひよりを守るためだけに燃えていた。

「……二度と、ひよりに近づくな」

その声は、刃よりも鋭かった。

プレイヤーたちは後ずさり、

森の奥へ逃げていった。

ひよりは震える手で胸を押さえ、

クロウの背中を見つめた。

その背中は、

孤高で、鋭く、

しかしどこか優しかった。

ひよりの涙が、静かに落ちた。


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