第22章 現実での再会、そして恋が始まる
——まぶしい。
ひよりはゆっくりと目を開けた。
白い天井。
柔らかな光。
静かな空気。
(……ここ……病院……?)
身体が軽い。
ゲームの中で感じていた魔力の流れも、世界のざわめきもない。
代わりに、胸の奥にぽっかりと穴が空いたような感覚だけが残っていた。
(……クロウさん……
エルダくん……
みんな……)
世界を修復したあと、
ひよりの意識はふっと途切れた。
そして今、目を覚ましたのは——
現実世界の病院だった。
点滴の管。
心電図の音。
白いカーテン。
(……戻ってきたんだ、現実に)
胸がきゅっと痛む。
あの世界は、もう遠い。
クロウも、エルダも、NPCのみんなも——
もう会えない。
そう思った瞬間、
扉がノックされた。
「佐倉ひよりさん……?」
低く、落ち着いた声。
ひよりは顔を上げた。
そこに立っていたのは——
黒いコートを羽織った、背の高い男性。
前髪が少し長く、
鋭い目つきなのに、どこか優しさを含んだ瞳。
ひよりは息を呑んだ。
(……え……?)
男性はゆっくりと近づき、
ひよりのベッドの横に立った。
「……やっと会えたな」
その声は、
ゲームの中で何度も聞いた声だった。
ひよりの心臓が跳ねる。
「クロウ……さん……?」
男性はわずかに目を細めた。
「現実では“黒川遼”。
でも……あんたが呼びたいなら、クロウでいい」
ひよりの視界が揺れた。
(……本当に……?
クロウさんが……現実に……?)
黒川遼は、ひよりの震える手をそっと包んだ。
その手は温かく、
ゲームの中で感じた“クロウの手”と同じだった。
「……あんたが目を覚ますまで、ずっと待ってた」
ひよりの胸が熱くなる。
「どうして……?
だって……クロウさんは……プレイヤーで……
私とは……」
黒川は首を振った。
「ひより。
俺はプレイヤーだ。
でも……あの世界で過ごした時間は全部、本物だ」
ひよりは息を呑んだ。
黒川は続けた。
「NPCが覚醒したのも、世界が綻びたのも……
全部、あんたの料理が“本物の心”を持ってたからだ。
俺はそれを……人間として見てた」
ひよりの目から涙がこぼれた。
「でも……現実で会いに来てくれるなんて……」
黒川はひよりの手を握り、
静かに言った。
「俺は……あの世界で、あんたに惹かれた。
ひよりの優しさに、強さに、料理に……
全部に救われた」
ひよりの胸が熱くなる。
(……クロウさん……
そんなふうに……)
黒川はひよりの目をまっすぐ見つめた。
「ひより。
俺は……あんたが好きだ。
ゲームの中のキャラとしてじゃない。
“佐倉ひより”という人間として」
ひよりは息を呑んだ。
心臓が跳ねる。
涙がこぼれる。
胸が熱くなる。
(……クロウさん……
私……)
ひよりは震える声で言った。
「私も……
クロウさんが……好き……
ゲームの中でも……
現実でも……」
黒川の瞳が揺れた。
そして——
彼はひよりの手を強く握りしめた。
「……これからは、現実で守る。
あんたの隣で、生きていく」
ひよりは涙を流しながら笑った。
「うん……!
私も……クロウさんと一緒に……」
病室の窓から差し込む光が、
二人を優しく包み込んだ。
ゲームの世界で生まれた絆は、
現実の世界で“恋”へと変わっていく。
ひよりとクロウの物語は、
ここから新しく始まる。




