第19章 世界の心臓が呼ぶ声、そして“現実”へ続く絆
光の泉が脈打つたび、
ひよりの胸も同じリズムで震えた。
——ドクン。
(……苦しい……でも……あったかい……)
クロウがひよりの肩を支える。
「ひより、無理するな」
その声は、ゲームの中のキャラクターのものではなかった。
もっと深くて、もっと人間らしい温度があった。
ひよりは震える声で言った。
「クロウさん……どうして……
どうしてそんなに私を……?」
クロウは一瞬だけ目を伏せ、
そして、ひよりをまっすぐ見つめた。
「……ひより。
俺は“プレイヤー”だ。
この世界のキャラじゃない。
でも……あんたと過ごした時間は全部、本物だ」
ひよりの胸が跳ねた。
(……本物……?)
クロウは続けた。
「NPC覚醒も、世界の綻びも……
全部、俺は“人間として”見てきた。
あんたがNPCを救おうとしてる姿も……
料理を作るときの真剣な顔も……
泣きそうになりながら、それでも前に進むところも……」
ひよりは息を呑んだ。
クロウの声は、
ゲームのキャラの台詞ではなく、
“黒川遼”という一人の人間の声だった。
「……俺は、あんたに惹かれた。
ゲームだからとか、NPCだからとかじゃない。
ひよりという“人間”に」
ひよりの胸が熱くなる。
(……クロウさん……
そんな……)
クロウはひよりの手を握った。
「だから……
この世界がどうなっても、
俺はあんたを守る。
ゲームが終わっても……
ログアウトしても……
現実でも、あんたを探す」
ひよりの目から涙がこぼれた。
(……現実でも……?
クロウさんが……?)
エルダがそっとひよりの背中を押した。
「ひよりちゃん……クロウ殿の気持ち、届いてるよ」
ひよりは震えながらクロウを見つめた。
「クロウさん……
私……私も……」
言葉が喉でつまる。
でも、胸の奥ははっきりしていた。
(……この気持ちは、ゲームの中だけのものじゃない)
クロウはひよりの手を包み込み、
静かに言った。
「ひより。
あんたが世界を修復したら……
俺は必ず、現実で会いに行く」
ひよりの心臓が大きく跳ねた。
(……現実で……会える……?)
光の泉が強く脈打つ。
——ドクンッ。
運営の声が響く。
《佐倉ひよりさん》
《あなたの選択を確認しました》
《世界の修復プロセスを開始します》
ひよりは涙を拭い、
光の泉を見つめた。
(……私、やる。
クロウさんと……現実で会うためにも……
この世界を守りたい)
クロウはひよりの背中に手を添えた。
「ひより。
あんたの料理は……世界を癒す力だ。
そして……俺の心も救った」
ひよりは涙をこぼしながら笑った。
「クロウさん……
私も……あなたに救われました……」
光が泉から溢れ、
世界の綻びを包み込んでいく。
ひよりの料理が、
世界を修復し始めた。
そして——
ひよりとクロウの絆は、
ゲーム世界を越えて“現実”へとつながっていく。




