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料理しかできない私が、最強プレイヤーに守られる理由  作者: かも@ろん


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第15章 境界の揺らぎ、プレイヤーが見た“世界の外側”

境界領域へ足を踏み入れた瞬間、

ひよりは息を呑んだ。

空気が違う。

森の匂いが薄れ、

代わりに“何かの気配”が肌にまとわりつく。

風は吹いていないのに、

木々の影だけが揺れている。

エルダがひよりの手を握った。

「ひよりちゃん……ここ、怖いね……」

ひよりは小さく頷いた。

「うん……でも、大丈夫。

クロウさんがいるから」

クロウは前を歩きながら、

周囲を鋭い目で観察していた。

「……やっぱり、ここは普通じゃない」

ひよりはクロウの背中に問いかけた。

「クロウさん……境界領域って、何なんですか?」

クロウは立ち止まり、

ひよりの方を振り返った。

「ゲームの“外側”に近い場所だ。

マップデータの端……

本来、プレイヤーもNPCも来ることはない」

ひよりは息を呑んだ。

「そんな場所に……私たち、入っていいんですか?」

クロウは苦笑した。

「本当はダメだ。

でも……ひよりの料理が“世界のルール”に干渉してる以上、

ここで何が起きてるか確かめる必要がある」

ひよりは胸に手を当てた。

(……私の料理が、そんな……)

クロウはひよりの手をそっと取った。

「ひより。

あんたの料理は、誰かを傷つけるためのものじゃない。

でも……“優しさ”が世界を変えてしまうこともある」

ひよりの胸が熱くなる。

(……クロウさんは、いつも私を責めない)

エルダが前に出て、

境界領域の地面を覗き込んだ。

「クロウ殿……これ、見て!」

地面の模様が、

ノイズのように揺れていた。

ひよりは思わずしゃがみ込んだ。

「これ……地面が……消えそう……?」

クロウは低く言った。

「データの欠損だ。

世界の“綻び”がここまで広がってる」

ひよりは震えた。

「私の……せい……?」

クロウはひよりの肩に手を置いた。

「違う。

ひよりの料理が“綻びを見えるようにした”だけだ。

本当は、もっと前から壊れてた」

ひよりは胸が締めつけられた。

(……私のせいじゃない……

でも、私が触れたから……)

クロウはひよりの手を握り、

静かに言った。

「ひより。

あんたは、世界を壊してなんかいない。

むしろ……“救ってる”」

ひよりの目に涙が滲んだ。

「クロウさん……」

エルダがひよりの手を握った。

「ひよりちゃん、僕もそう思うよ!

ひよりちゃんのスープ、すっごくあったかいもん!」

ひよりは涙を拭い、笑った。

「ありがとう……」

***

そのとき——

空気が震えた。

——ビリッ。

ひよりは思わず身を縮めた。

「また……?」

クロウはすぐにひよりの前に立った。

「……違う。

さっきの監視体とは“質”が違う」

エルダが震える声で言う。

「クロウ殿……あれ……!」

境界領域の奥に、

白い光の“線”が走った。

まるで空間そのものにひびが入ったように。

ひよりは息を呑んだ。

「空間が……割れてる……?」

クロウは剣を構えた。

「ひより、エルダ。

後ろに下がれ」

ひよりは震えながらも、

クロウの背中を見つめた。

(……クロウさんは、プレイヤーなのに……

どうしてこんなに私を守ってくれるんだろう)

光のひびはゆっくりと広がり、

その奥に“何か”が見えた。

白い光。

人の形。

しかし、輪郭が揺れている。

ひよりは震えた。

「監視体……じゃない……?」

クロウは低く言った。

「……運営の“深層監視プログラム”だ。

普通の監視体より強い。

プレイヤーの行動を直接制限できる」

ひよりは息を呑んだ。

「そんな……!」

深層監視体はひよりを見つめ、

無機質な声を響かせた。

《プレイヤー:佐倉ひより》

《あなたの行動は、システムの許容範囲を超えています》

《NPC覚醒現象への関与を確認》

《警告:これ以上の干渉は推奨されません》

ひよりは震えた。

(……私のせいで……?)

クロウが一歩前に出た。

「ひよりは悪くない。

俺が同行している。

調査は俺が引き受ける」

深層監視体はクロウに視線を向けた。

《プレイヤー:クロウ》

《あなたの行動も監視対象です》

《NPC覚醒現象への“積極的関与”を確認》

クロウは眉をひそめた。

「積極的関与……?

俺はひよりを守ってるだけだ」

《プレイヤー行動ログを確認中……》

ひよりはクロウの袖を掴んだ。

「クロウさん……!」

クロウはひよりの手を握り返した。

「大丈夫だ。

俺はプレイヤーだ。

消されることはない」

ひよりは涙をこらえた。

(……でも、クロウさんが危険になるのは嫌)

深層監視体は静かに言った。

《警告:境界領域への侵入は危険です》

《これ以上の進行は、アカウント停止の可能性があります》

ひよりは息を呑んだ。

「アカウント……停止……?」

クロウはひよりの肩に手を置いた。

「ひより。

俺は構わない。

でも……あんたは?」

ひよりは震えた。

(……私のせいで、クロウさんが……?)

クロウはひよりの手を握り、

静かに言った。

「ひより。

俺は……あんたを守りたい」

ひよりの胸が熱くなる。

(……クロウさん……)

深層監視体は動かない。

ただ、ひよりたちを見つめている。

クロウはひよりの手を引き、

境界領域のさらに奥へと歩き出した。

「行くぞ。

ここで止まったら……何も変わらない」

ひよりは深呼吸をし、

クロウの背中を追った。

エルダも続く。

境界領域の光が揺れ、

風がざわめき、

世界が静かに変わり始めていた。


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