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料理しかできない私が、最強プレイヤーに守られる理由  作者: かも@ろん


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第14章 境界領域への道、プレイヤーが選ぶ覚悟

森の奥へ進むにつれ、

空気は少しずつ重く、冷たくなっていった。

ひよりはクロウの背中を追いながら、

胸の奥がざわざわと揺れるのを感じていた。

(……森が、怖い)

いつもは優しい風が吹く場所なのに、

今日はまるで“誰かが息を潜めて見ている”ような気配がある。

エルダがひよりの手を握った。

「ひよりちゃん、大丈夫?

僕、ちゃんとついてるから!」

ひよりは小さく頷いた。

「うん……ありがとう、エルダくん」

クロウは前を歩きながら、

周囲を鋭い目で観察していた。

「……やっぱり、データの揺らぎが広がってる」

ひよりは首をかしげた。

「データ……?」

クロウは振り返り、ひよりに説明した。

「この世界はゲームだ。

でも、ひよりの料理が“普通じゃない変化”を起こしてる」

「普通じゃない……?」

「NPCの行動パターンが変わってる。

エルダもそうだ」

エルダは目を丸くした。

「僕……?」

クロウは頷いた。

「本来、NPCは“決められた台詞”と“決められた行動”しかしない。

でもエルダは、ひよりの料理を食べてから……

“自分の意思”で動いてる」

ひよりは息を呑んだ。

(……エルダくんが、意思で……?)

エルダは胸に手を当てた。

「ひよりちゃんのスープ……あったかくて……

なんか、心が動くんだよ」

クロウはひよりを見つめた。

「ひより。

あんたの料理は、NPCに“心”を与えてる」

ひよりは震えた。

「そんな……私、そんなつもりじゃ……」

クロウはひよりの肩に手を置いた。

「分かってる。

でも、運営はそうは思わない」

ひよりの胸が冷たくなる。

「運営……?」

クロウは頷いた。

「NPC覚醒は、ただのバグじゃ済まない。

“世界の根幹”に関わる問題だ。

運営が調査に入れば……ひよりのアカウントが危険になる」

ひよりは唇を噛んだ。

(……私のせいで……?)

クロウはひよりの手をそっと握った。

「だから、境界領域に向かう。

あそこは運営の監視が弱い。

ひよりの料理の影響を、俺が直接確認できる」

ひよりは胸に手を当てた。

「……クロウさんは、怖くないの?」

クロウは少しだけ笑った。

「怖いさ。

でも……ひよりを一人にする方が、もっと怖い」

ひよりの胸が熱くなる。

(……クロウさん)

エルダがにこっと笑った。

「クロウ殿、かっこいい〜!」

「黙れ」

クロウは照れたようにそっぽを向いた。

***

森の奥へ進むと、

空気がさらに変わった。

ひよりは思わず足を止めた。

「……ここ、なんだか……」

クロウは頷いた。

「境界領域の入り口だ。

ゲームの“外側”に近い場所」

エルダが不安そうに言う。

「クロウ殿……ここ、怖いよ……」

クロウは剣を構えた。

「エルダ。

ひよりを守れ」

エルダは胸を張った。

「うん!」

ひよりはクロウの背中を見つめた。

(……クロウさんは、プレイヤーなのに……

どうしてこんなに私を守ってくれるんだろう)

そのとき——

空気が震えた。

——ビリッ。

ひよりは思わず身を縮めた。

「な、なに……?」

クロウはすぐにひよりの前に立った。

「……来たか」

エルダが震える声で言う。

「クロウ殿……あれ……!」

森の奥に、

白い光の粒が集まり始めた。

やがてそれは“人の形”を作り、

無機質な光の輪郭が現れた。

ひよりは息を呑んだ。

「監視体……?」

クロウは低く言った。

「運営の監視プログラムだ。

プレイヤーの行動を監視するための存在」

ひよりは震えた。

「私……見つかった……?」

監視体はひよりを見つめ、

無機質な声を響かせた。

《プレイヤー:佐倉ひより》

《あなたの行動に異常値を検出しました》

《NPC行動パターンの逸脱を確認》

ひよりは顔から血の気が引いた。

(……私のせいで……?)

クロウが一歩前に出た。

「監視体。

ひよりは悪くない。

俺が同行している。

調査は俺が引き受ける」

監視体はクロウに視線を向けた。

《プレイヤー:クロウ》

《あなたの行動も監視対象です》

《NPC覚醒現象への関与を確認》

クロウは眉をひそめた。

「関与じゃない。

“観測”だ」

監視体は反応しない。

《警告:これ以上の進行は推奨されません》

《境界領域への侵入は危険です》

クロウはひよりの手を握った。

「ひより。

行くぞ」

ひよりは震えながらも頷いた。

「……はい」

監視体は動かない。

ただ、ひよりたちを見つめている。

クロウはひよりの手を引き、

境界領域へと足を踏み入れた。

森の光が揺れ、

風がざわめき、

世界が静かに変わり始めていた。


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