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料理しかできない私が、最強プレイヤーに守られる理由  作者: かも@ろん


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第11章 夜の森、灯る火と帰還の足音

森の夜は、深く、静かだった。

ひよりは焚き火の前に座り、

揺れる炎をじっと見つめていた。

——ぱち、ぱち。

火の粉が小さく弾け、

赤い光がひよりの頬を照らす。

その光は、ひよりの胸の奥に残る不安を

ほんの少しだけ温めてくれるようだった。

エルダはひよりの隣に座り、

心配そうに彼女の横顔を覗き込んだ。

「ひよりちゃん……大丈夫?」

ひよりは小さく頷いた。

「うん……大丈夫。

でも……クロウさん、無事かなって……」

言葉にした瞬間、

胸の奥がきゅっと締めつけられる。

クロウが闘技場へ向かってから、

もうかなりの時間が経っていた。

森の空気は冷たく、

風が吹くたびに木々がざわざわと揺れ、

その音がひよりの不安を煽る。

「クロウ殿なら大丈夫だよ!

あの人、めちゃくちゃ強いし!」

エルダは明るく言うが、

その声の奥には、わずかな震えがあった。

ひよりは気づいていた。

(……エルダくんも、心配してるんだ)

焚き火の火が揺れ、

ひよりの影が地面に長く伸びる。

森の奥は真っ暗で、

木々の間から冷たい風が吹き抜けるたび、

ひよりは肩をすくめた。

「……クロウさん、戻ってくるよね」

ひよりの声は小さく、

夜の空気に溶けていくようだった。

エルダは力強く頷いた。

「戻ってくるよ!

だって、ひよりちゃんに“待っていろ”って言ったんだもん!」

ひよりの胸が少しだけ温かくなる。

(……そうだよね)

クロウの言葉は短くて不器用だけど、

そこには確かな想いがあった。

ひよりは膝を抱え、

焚き火の炎を見つめながら、

クロウの帰りを静かに待った。

***

森の夜は深まり、

空には雲が広がり、月が隠れてしまった。

風は冷たく、

木々の影は濃く、

森全体がひよりを包み込むように静まり返っている。

ひよりは焚き火の前で、

小さく息を吐いた。

(……寒い)

焚き火の熱はあるのに、

胸の奥は冷たいままだった。

エルダはひよりの肩に布をかけてくれた。

「ほら、これ。

ひよりちゃん、寒がりなんだから」

「ありがとう……」

ひよりは布を握りしめ、

胸の前に引き寄せた。

そのとき——

森の奥から、かすかな音が聞こえた。

——ざっ……ざっ……

落ち葉を踏む音。

風とは違う、確かな足音。

ひよりの心臓が跳ねた。

「……クロウさん?」

エルダも立ち上がり、

森の奥をじっと見つめる。

焚き火の光が揺れ、

木々の影がざわざわと動く。

足音はゆっくりと近づいてくる。

——ざっ……ざっ……

ひよりの胸が高鳴る。

(……戻ってきた?)

その瞬間、

木々の間から黒い影が現れた。

月明かりが雲の隙間から差し込み、

その影を淡く照らす。

黒いコート。

長い前髪。

鋭い瞳。

クロウだった。

ひよりの目に涙が溢れた。

「……クロウさん……!」

クロウはゆっくりと歩み寄り、

焚き火の前で立ち止まった。

その姿は、

闘いを終えた戦士のように静かで、

しかしどこか疲れているようにも見えた。

エルダが駆け寄る。

「クロウ殿! 無事だったんだね!」

クロウは短く頷いた。

「……ああ。

少し手こずったが、問題ない」

ひよりは立ち上がり、

クロウの前に歩み寄った。

「……よかった……本当に……」

声が震え、

涙が頬を伝う。

クロウはひよりの涙を見て、

わずかに眉を寄せた。

「……泣くな」

その声は低く、

しかし優しかった。

ひよりは涙を拭いながら、

クロウの胸に手を当てた。

「だって……心配で……

クロウさん、戻ってこないんじゃないかって……」

クロウはひよりの手をそっと包み込んだ。

「……戻ると言っただろう」

ひよりの胸が熱くなる。

クロウは続けた。

「……あんたを一人にするつもりはない」

その言葉は、

ひよりの心に深く染み込んだ。

エルダがにやにやしながら言う。

「クロウ殿、ひよりちゃんのこと、めっちゃ心配してたんだよね〜?」

「黙れ」

クロウの声は冷たい。

だが、その横顔はどこか照れていた。

ひよりは小さく笑った。

(……クロウさんって、本当に優しい)

焚き火の炎が揺れ、

森の夜は静かに深まっていく。

クロウが戻ってきたことで、

ひよりの胸の奥にあった不安は、

すっかり溶けて消えていた。

ひよりは布を握りしめ、

クロウの隣に座った。

「……おかえりなさい、クロウさん」

クロウは少しだけ視線をそらし、

小さくつぶやいた。

「……ただいま」

その言葉は、

ひよりの心を優しく包み込んだ。

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