表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/26

《第一幕:古びた遺跡の真相》第1話 墜落の迷宮

ーーアスペリア皇国。皇都フォルトゥナで発生した不可解な植物や水の変容は、近郊にそびえる休火山・アールデンスの噴火を示す前兆だった。


その異変を追う探偵アルセリオは、やがて地下に封じられた“焔の王”と、古代遺跡に刻まれた“七つの印”の存在に辿り着く。


仲間を集め、再び休火山アールデンスへーー。


“目覚めかけた封印”の真相を暴くために。


物語は、いま…その胎動を刻み始める。

中巻:焔と咆哮の胎動編


 薄曇りの空の下、休火山アールデンスの裾野に、ひとつの小さな影が浮かび上がる。


 それは…苔むした岩壁に隠されるように存在していた、誰も知らぬ入口

――それが、アルセリオたちが目指す古代遺跡の入り口だった。


 この地に残された文献は少なく、記録も朧げである。しかし、かすかに語られている、

“焔の王”の伝承と、“七つの印”という言葉が、アルセリオたちをここへ導いた。


 ――ギィィィ……


 重たい石扉が、鈍く軋みを上げて開く。微かに感じる焦げたような臭いと、奥へと続くひんやりとした空気。

 それは、長い時間をかけて閉ざされてきた空間の証だった。


アルセリオ

「さぁて……行きますか。……フィアリア。見てるな?」


フィアリア

「ええ。見ているわよ。それと…お久しぶりね、セレス。」


セレス

「はぁ〜〜い。フィーちゃんもお元気で良かったわぁ〜。」


(ジメジメとした空間に綺麗な花が咲いた気がした)


ドクル

「それにしても…こんな所に遺跡があったとは…見落としていました…」


フィアリア

「これは私も知らなかったわ。よく見つけたわね。探偵さん?」


アルセリオ

「なに。俺は確かに見つけたが、ここ最近の地割れや温度上昇でたまたまさ…」


セレス

「あらぁ〜〜。誇っても良いのよ〜坊や。」


アルセリオ

「そう…か。分かった。」


ヴィクトル

「おいおい…あの兄弟が絆されてやがる…。」 


レオナール

「アルはああ言うタイプに昔から弱いんだ。善性の塊みたいな人には特にな。」


マックス

「くぅ〜〜羨ましいぜぇ!!」


アルセリオ

「うるせぇぞお前ら。ほら、さっさと進む!!」


  ***


 遺跡の奥――ひんやりとした空気が肌にまとわりつくように重たく、石壁には無数の火の紋様が刻まれている。

苔に覆われた床に、誰かの足跡が残っていた。


 セレスはそっと胸元で祈りの印を結び、微笑みながら前へ歩く。

ドクルは壁の装飾を指でなぞりながら、ぼそりと呟いた。


ドクル

「これ……かなり古いですね。見たことがない書式のゼーレバラン語……というより、旧王朝時代のハイグラ語を基にした混合言語です」


アルセリオ

「造語か……それも、わざと分かりづらくしたような……通りで読みづらい訳だな。」


 壁の中央には大きな扉があり、そこに燐光を帯びる文字が浮かび上がっていた。


ーー


⸺In nocte ardentis solis,

ubi Signa Septem dissolvuntur,

aperitur Porta Regni Flammarum.


⸺Noli tangere Sigillum.

Lux falsa est.

Ignis dormit, sed non moritur.


⸺Victimae ponentur ante Oculus Ignis,

et Vox Vetus iterum clamabit.


⸺[……] Inferus vocabit sanguine tuo.


ーー


アルセリオは眉をひそめ、埃を払って読み上げる。


アルセリオ

「“In nocte ardentis solis”…灼熱の太陽が夜にある時…? 逆説的な始まりだな。

次、“ubi Signa Septem dissolvuntur”…七つの印が解かれるとき、か」


 扉の脇に、七つの穴が並んでいる。明らかに何かの“鍵”が嵌まるような作りだ。


アルセリオ

「“aperitur Porta Regni Flammarum”…炎の王国の門が開く、だとよ」


 彼の声は次第に低く、緊迫を帯びていく。


ドクル

「“Noli tangere Sigillum”…印に触れるな。

“Lux falsa est”…光は偽り……

“Ignis dormit, sed non moritur”…火は眠れど、死せず……」


 その時だった。扉の両脇から“ウゴォォ……”という重低音とともに、獣の唸り声が響く。


フィアリア

「来るわよ、三体……!」


 瞬間、地を駆ける魔物が現れる。黒い鱗に包まれ、目は赤く光る。ヴィクトルとレオナールが前に出る。


ヴィクトル

「おらぁ!通せんぼはご法度だぜ!!」


 剣と拳が唸り、セレスが支援の詠唱を唱える。マックスもセレスの前に出て守るように構える。


アルセリオ

(……攻撃してくるのは“印”を守る防衛機構か? やはり、順番か何かを間違えると……)


 再び扉へと目を戻す。


ドクル

「“Victimae ponentur ante Oculus Ignis”…犠牲が火の眼の前に捧げられる……?」


アルセリオ

「“et Vox Vetus iterum clamabit”…古き声が、再び叫ぶ……か。

 なるほどな。封印を解けば、“炎の王”そのものが、呼応するって寸法か。」


 彼は最後の一文に目を走らせた。


アルセリオ

「“Inferus…vocabit…sanguine tuo”……地獄が、お前の血を呼ぶ……」


 その時、マックスがうっかり“印”のような石片を穴に入れてしまう。


 グォン……グォォン……!


 扉の中心の“火の眼”が開き、赤く輝き始める。浮かび上がるようにマックスの身体が光に包まれる。


セレス

「マズいわッ!!」


アルセリオ

「ドクル!!六つを外せ!!まだ間に合うッ!!」


 ドクルは必死に動き、六つの石を引き抜く。最後の一つを引き抜いた瞬間、“火の眼”がふっと光を収めた。


マックス

「っぶねぇ……マジで燃やされるかと思ったぜ……」


アルセリオ

「やっぱりな。“偽りの光”……本物に見せかけて、順番を間違えれば“贄”にされる仕掛けだったんだ……」


 仲間たちは肩で息をしながら、改めて扉の前に立つ。


 やがて、慎重に“印”を正しい順に嵌めると、扉の奥から“ゴゥン……”という重い音が響き……


扉の先には、驚くほど広い空間が広がっていた。


 天井のない吹き抜けのような構造。ところどころに自然の蔓が絡み、崩れかけた柱が天を仰ぐ。

 中心には巨大な“焔の王”を象った像が鎮座しており、赤い水晶のような瞳は閉ざされたままだ。


 足元には円環状の魔法陣。そこから幾重にも線が延び、部屋の各所にある柱や台座と繋がっている。何かの「制御システム」のようだった。


セレスが、床に散らばる遺物の一つを拾い上げた。


セレス

「この板……何かの“順番”を示しているみたいね。あらぁ……“七つの相”って書いてあるわ〜?」


マックス

「おっ?そっちは何かのレバーだな。動かしてみるか?」


 彼がレバーに手をかけた瞬間、


 ガチャンッ!!


 部屋の壁面にあった複数の隠し扉が開き、瘴気をまとう魔獣が続々と姿を現す。


フィアリア

「っ、敵襲!全部で……って!?どんどん湧き出てくるわっ!!」


アルセリオ

「最悪のタイミングだな……セレス、マックス!退避しつつ周囲の装置を調べてくれ!!」


セレス

「了解よぉ〜〜。まったく……もう少しロマンチックな場所だったら良かったのにぃ〜〜」


マックス

「任せなっ!こういう“裏側”は得意なんだ!」


 ドクルが壁にあった石盤を解析し始める。文字の羅列と、何かの図形。そして、中央像の“瞳”と繋がるライン。


ドクル

「これは……謎解き式の封印制御装置です。“七つの相”を正しい順に起動しなければ、部屋全体が崩壊する仕組みに見えます!」


アルセリオ

「順番を間違えたらお陀仏ってわけか……くそ、面倒なトラップだ」


 前衛のレオナールとヴィクトルが壁際の魔獣に斬りかかる。だが、数が多い。


ヴィクトル

「くそっ……まだまだ湧きやがるか!アルセリオ!早く頼むぞ!」


アルセリオ

「こっちだって急いでる!」


 マックスが金属製の台座を起動させると、固定砲台が一基展開される。


マックス

「よーし!これで援護するぜぇ!!喰らいやがれっ!」


 魔獣の一部を焼き払うが、まだ数百体以上が押し寄せている。


 ドクルとアルセリオは、盤面の中央にある“環”をなぞり、浮かび上がる古文字を読み解いていく。


アルセリオ

「“最初に目覚めしは、胎動の火――”……“次に昇るは、怒れる焔”……これは、属性順か?それとも神話順……?」


ドクル

「おそらく神話順です!焔王の伝承では、

“心臓”→“息吹”→ "咆哮”→

“爪”→“尾”→“瞳”→“魂”の順だったはず!」


アルセリオ

「覚えたぞ……いくぞ!」


 カチッ……カチッ……


 一つ、二つと石をはめていくアルセリオ。だが、五つ目の直後、魔獣の一体が爆発し、部屋が震える。


 その瞬間――


 グラァン……!!


 床にひびが走る。ヴィクトルとレオナールが振り向いた。


レオナール

「リオ!なんか床がっ……!」


アルセリオ

「あと二つ……ッ!」


 ドクルが必死に最後の装置へと駆け寄り、レバーを押し込む。


 ゴゴゴゴ……


 天井の火の像の目が再び赤く輝き……次の瞬間、床全体に崩落の罠が作動した。


マックス

「っ、うおぉぉ!?」


セレス

「きゃあっ!?ちょ、待ってぇ〜〜〜!!」


 一同の足元が崩れ、全員が闇の底へと吸い込まれるように――落下した。


アルセリオ

(……マジかよ……こりゃ想定外だ……)


 視界が回転しながら、音もなく落ちていく感覚に、誰もが息を呑んでいた。


 その先に待つのは……さらなる封印か、それとも……焔の王の気配か。

紅霧の空洞に広がるのは、焔の王の暴走の痕跡。

不自然に輝く《空洞の森》が、その先で待ち受けていた――。


次回、第2話「幻想の空洞」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ