表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

第23話 邂逅のパラドクス

「…完っ璧だ!フィアリアぁ!!」


 下を見ると…皇都の外縁から中心にかけて、規則的に建物が崩壊し、炎が一帯を包んでいた。


アルセリオ

(対象と術陣…そしてこの俺が一直線に並ぶこの時を待ってたのさ!)


カチッ


 アルセリオは銃にとある弾を一発だけ装填し、カルデラの方へと向け…


パァンッ……


カルデラ

「………っ!?…僅かに聞こえたが…今の音…上かっ!!」


 一発の銃弾の発砲音にいち早くカルデラが気づき、遠くのアルセリオを捕捉する。


カルデラ

「アタイが遠距離の手段を持って無ぇと思ってんだろ?だがな、破戒は距離なんて関係ねぇんだよ!!」


 カルデラは今までよりも遥かに強く拳を握り、それに呼応するようにして…赤角が更に鋭利に肥大化する。


カルデラ

「いくぜぇ…《破戒エクシティウム》!!!」


ボォォォンッッ!!!!


 大きな音を立てながら、アルセリオの元へと打撃が迫る………ッ!


アルセリオ

「…受けたら確実に死ぬな…まぁ、受けるつもりなんざ、端っからねぇがなっ!!」


アルセリオ

「《視縁之環エンヴィル》っ!!」


 その瞬間、皇都の外縁部の七箇所が綺麗に光る…まるで、一つの魔術陣の様に。


フィンッ!


 アルセリオと先程撃った銃弾の位置が入れ替わる…


アルセリオ

「もう一丁っ!!《視縁之環》っ!!!」


フィンッ…


 続けて、カルデラとアルセリオの位置が入れ替わる!カルデラはその構えを維持したまま、空中に放り投げられた。


カルデラ

「……っ!?…なんだ、これは…空…?」


ドンッ…!


カルデラ

「うぐっ!!」


 カルデラの心臓あたりに、アルセリオの放った銃弾が正面から着弾する。


カルデラ

(…これが狙いか…?舐めんなよ、こんな痛みなんて慣れて…んだ……?)


 彼女は、自身の身に起こる違和感に気づく。そう、体の感覚が…明らかに鈍くなったのだ。


アルセリオ

「…どうやら気づいた様だな…まぁ、もう遅いんだが。」


ゴォォォオオオオオンッッッッ!!!!!


 カルデラの放った"破戒"は、しくも彼女自身の身体に直撃する…!


カルデラ

「…がっ…はっ!!」


 骨が悲鳴を上げ、ミシミシと音を立てる。

 肉が振動し、受け流せない圧倒的な破壊の力に押し潰される。

 彼女の意識はその場でプツンと切れ、そのまま地面へと落ちていく。


ドサッ……


アルセリオ

「…俺の火力が足りねぇって明らかだったんだから、自滅こういうことも頭に入れとかなきゃなぁ…?」


 アルセリオは左手をポケットに入れ、右手で頭をトントンと指で軽く叩きながら…


アルセリオ

「確かに威力は凄ぇが──想定が甘ぇな。

 俺の算段ペースに合わせて遊んでねぇで、初手から破戒それぶっ放して"皇都ごと"更地にしてりゃあ、それで終わりだったろうが。」


「出来ることをやんねぇのは怠慢だぜ?

 格下おれがわざわざ単独で突っ込んで来た時点でよ、“何か仕込んでる”事くらい読めて当然だろ。」


「敵が作戦を持ってて、自分はそれを知らない。

 だったらまず“小細工を無効化する状況”を作れ。

 強引に正面戦闘に引きずり込めば──格下が格上に勝つルートなんざどこにも無ぇはずだ。」


「自分の強みを押し付けねぇでどうする?

 お前は“破戒”っていう圧倒的なカードを持ってんだ。

 それを最初から切らねぇ意味がわからん。」


「今までは力押し(それ)だけで勝ててきたんだろうが、今回は相手が悪かったな。良い経験になったろ。」


 そう、至極冷徹な表情で見下ろすように言葉を発した。

 

アルセリオ

「…っと、フィアリア…居るんだろ?そう…俺が言ったもんな。お前が用意してくれた弾、大いに役立ったぜ?」


ブゥンッ…


フィアリア

「…本当に、勝ってしまうなんてね。」


アルセリオ

「ひっでぇな…信じてなかったのか?泣いちゃうぞ?」


フィアリア

「そう言う訳じゃ無いから安心なさい。…それにしても、本当によく考えるわね。」


アルセリオ

「そうだろう?もっと褒めてくれても良いんだぜ?」


──


少し前、


アルセリオ

「………なるほど。ご厚意ありがとう。それじゃあ、こいつを渡しとこうか…。」


 アルセリオがとある紙を手渡す。


フィアリア

「あら…もう勝った気でいるのね?まぁ良いわ。そう言うの嫌いじゃ無いし。

……なるほどね。本当、面白い事を考えるわね…分かったわ、用意しておく。合図は…」


アルセリオ

「俺をずっと"見て"おけ。そしたら自ずと見えて来るさ。」


──


フィアリア

「弱体化目的の弾が欲しいなんて、普通私に頼む物じゃなくないかしら?」


アルセリオ

「良いじゃねぇか…あのレベルの敵に即効性の弱体化を与える魔術なんて、アンタぐれぇしか使えねぇだろ?

 《深淵》のフィアリア・グンヒルドさん…?」


フィアリア

「お世辞は良いわよ。それより、上空に転移させるって事の方が驚いたけど。」


アルセリオ

「まぁ初見じゃ分かんねぇだろうからな。昔…つっても数年前だが、俺が探偵社に所属するようになってからすぐの事だ。

 一度、道化師っつう奴にしてやられてな。そいつが使ってた八芒星のトリックを参考にしたのさ。」


──彼は過去のことを語りだした。


アルセリオ

「時計回りに、12時から始まり、1時半・3時・4時半・6時・7時半・9時・10時半を通って、最後にまた12時の場所…俺がここに来ることで"敗北"が確定したこの"古い教会"に戻ってくる。

 …まぁ今回は、カルデラが来る事で俺の"勝利"が確定したんだがな。」


「そんで、フィアリアに上空へ転移させてもらって、デバフ弾を撃ち、2回の入れ替えを経て、カルデラの破戒を利用する事により、俺が与えられない"決定打"を自らに当ててもらう。」


アルセリオ

「途中…色々と驚かされる展開もあったが、概ね計画通りだな。」


 澄ました顔で言う。


フィアリア

「…まったく、こんな扱いづらい術陣を良くここまで有効活用出来るわねぇ…」


「確か、描いた陣と入れ替えたい対象を一直線…それも一度に視界に入れなきゃいけない制約が付いてたわよね?これ。」


アルセリオ

「ああ、その為の上空への転移さ。」


フィアリア

「…なるほどねぇ〜その上で、わざと建物を壊させて、あの短剣から魔力回線パスを繋げるよう…障害物を壊させてたわね?」


アルセリオ

「綺麗に均等だろう…?まぁ、直情型で良かったな。扱いやすくて楽だった。」


フィアリア

「そう言ってしまうと、あの子が可哀想だわ。…さぁ、トドメを刺しちゃいましょうか。」


アルセリオ

「そうだな。さっさとしねぇと、起きちまうかも知れねぇし。」


 二人はカルデラの目の前に立ち、アルセリオが引き金を引く。


ブゥワァッ!!


アルセリオ&フィアリア

「なんだっ!?/何かしらっ!?」


 漆黒のモヤが、カルデラの周りを包み込む。


──そして、


???

「…ちょっと待ってくれるかしらぁ〜」


ゾワッ…


 突如として現れたその者を見て、二人の顔が真っ青になり、動悸が治らなくなり…冷や汗が滴り始める。


アルセリオ

(…なんだ……こいつ…っ!本能が警鐘を鳴らしてやがる…少なくともマルドュクの残滓以上だ…)


フィアリア

(この感覚…久しぶりに感じるわね。私にはどうしようも出来ない格上…)


???

「悪いけど、クレアちゃんは預からせてもらうわね?…異論は無いかしら?」


 固唾を呑みながら、アルセリオは笑みを維持して口を開く。


アルセリオ

「…アンタ……見ねぇつらだな。何者だ?」


???

「私とした事が、自己紹介を忘れていたわ!ごめんなさいね?…こほん、私の名前は…そうね、"《虚無》のアンダストラ"と呼んでくれるかしら?

 当然、偽名だけれどね。」


フィアリア

「…アンダストラ……分かったわ、そう呼ばせてもらうわね。貴方も…《彷徨う者達/ドミネクリプス》の一員なのかしら…?」


アンダストラ

「ええ…そうよ。認知はされていないと思うけど。」


アルセリオ

「確かに…聞いた事が無ぇな…七人だったはずだが…?もう一人居たのか…」


アンダストラ

「いや?私以外にも、

"《始原》のヴァント"って子が居るわよ?」


フィアリア

「また知らない名前ね…」


アンダストラ

「それはそうでしょ?あの子、実態を持たない特殊な魔人種だから、自由に姿を変えられるのよ。

 正直、私でも見つけられ無いわ。」


アルセリオ

「…身近に潜んでるかも知れねぇってか?怖すぎんだろ…」


アンダストラ

「そうね。…さて、そろそろ時間的にまずいから、おいとまさせてもらうわね?」


 彼女はその穏やかな声色からは想像出来ないほど…静かな圧を出していた。


フィアリア

(拒否権は無いって事ね…)


「分かったわ。私たちもまだ命が惜しいし…好きに帰りなさい。」


アルセリオ

「同感だ…出来ればさっさと帰って欲しいもんだな。」


アンダストラ

「…きちんとわきまえている人は好きよ?面倒ごとが増えないし。それじゃあ…またお会いしましょう♪」


ブゥン…


 そう言って、大量のモヤが収束するように、音を立てて消えていく。


…………。


アルセリオ&フィアリア

「………っぷはぁ〜!」


 先程まで半ば止まっていた呼吸が、改めて再開される。


アルセリオ

「心臓が止まるかと思ったぜ…何なんだよ、あの異次元の圧は…」


フィアリア

「私も流石に死を予感しちゃったわ…ほんと、心臓に悪いわね…」


 二人はゆっくりと歩き出しながら、会話を続ける。


アルセリオ

「まさか…ドミネクリプスが9人チームだったとは…初知りだぞ?こりゃあ、ルドヴィクスの奴に報告待った無しだな。」


フィアリア

「そうね。…ここからは任せたわ。私は少し寝て来る。」


アルセリオ(ニヤニヤしながら)

「ちびったか?」


フィアリア

「あなたこそ…ちびったんじゃない?パンツまで濡れてないといいけれど。」


アルセリオ

「はっ!口は絶好調だな。…ほら身体、震えてんぞ?」


フィアリア

「そう見えるのは…あなた自身が震えてる証拠じゃなくって?」


ぷっ…


アルセリオ&フィアリア

「ははははっ!/ふふっ!!」


 交わされた笑い声が、通りの石畳に跳ね返るように響いた。


アルセリオ

「いやぁ〜二人揃って馬鹿みてぇだな…!」


フィアリア

「ええ。馬鹿みたいだわ!」


アルセリオ

「とりあえず、報告だな!フィアリアは…ゆっくり休んどけ。

 …ほんとに震えてるぞ?あんま無理すんな。」


 確かに、彼女の身体は…僅かに震えを見せていた。


フィアリア

「お気遣いありがとう…お言葉に甘えさせてもらうわ。それじゃあ、ここでお別れね。」


アルセリオ

「ああ、またな…フィアリア。」


ブゥン…


 その音と共に、彼女は深淵へと消えていく。


アルセリオ

「まだ終わんねぇだろうからな…そろそろ、出来たぐれぇか?」


 そう言って、アルセリオはとある場所へと歩を進める。


  ***


 ──同時刻。


ガチャッ…!


「…陛下!!

  ……最奥封庫より、“逆理パラドクスボックス”が姿を消しました…ッ!」


アルヴレイド

「………何だと?」

王国の最奥より奪われた、

“逆理の匣”。


それは、神すら否定し得る禁忌。


混沌は静かに笑い、

皇都では思惑が絡み合う。


影は、すでに重なり始めている。


──第24話、『交差する影』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ