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《終幕:終わりなき苛烈》第21話 破戒の牙と、逃走の狼煙

カルデラ

「…また増えたな。まさか…探偵ってなぁお前の事か?」


アルセリオ

「そうだが…それがどうした?」


カルデラ

「へへっ!早めに目的を達成出来そうだぜ!!」


 ガンッと拳を突き合わせて、尻尾をぶんぶん揺らす。


アルセリオ

「俺が狙いって事か?だとしたらすまんな…そう簡単にやられては上げれない。」


カルデラ

「安心しろ!その方がアタイも張り合いがあって好きだからな!!」


アルセリオ

「そりゃどうも。……で?正面から戦ったとして、俺は勝てそうか?」


 アルセリオはフィアリアの方を向きながら、小声でそう言う。


フィアリア

「……キツく行っちゃうと、一方的な処刑ね。」


アルセリオ

「まぁ…そりゃそうだろうな。…さて、どうしたもんか…」


フィアリア

「考えてる振りして…どうせ算段はあるんでしょ?」


アルセリオ

「どうだかな。…それじゃあ、俺は準備があるんでな、足止めは任せたぜ。」


フィアリア

「タイミングは……匙加減で良いかしら?」


アルセリオ

「ああ、好きにしてくれ。それが最適解だ。」


 そう言って…アルセリオは皇都の中へと走っていく。


フィアリア

「さぁ…まだまだ貴方は私の相手になって貰う必要がありそうよ?」


カルデラ

「望むところだぜっ!!」


  ***


 皇都フォルトゥナの外縁を、何かを確認する様にして走っている。


アルセリオ

(…よし。ここで最後だ。まったく…ピエロの奴との苦い記憶が、タメになる日が来るとはな…)


 数年前に、偽の儀式を読み解く時に見た、道化師の用意した供物の位置が、記憶として頭に思い起こされる。


アルセリオ

「よっ!」


 パシュッと音を立てて、小さな短剣が民家の壁に深く刺さった。

 すると、その短剣にとある紋様が淡く浮かび、魔力の糸が定められた方向へと伸びていき、次第に不可視となる。


アルセリオ

「この位置なら、家が壊されても下(地面)に刺さんだろ。」


アルセリオ

(……皮肉なもんだな。あの時の配置とまったく同じ場所を…今、俺の意志でなぞってるってわけだ。)


「…さて、準備完了だ。合図を出すとするか。」


パァンッ…


 アルセリオの放った銃声があたりに響く。


  ***


ズガガガガッ……!


 フィアリアが黒武器を放ち、カルデラがそれを防ぐ…先程までと同じ光景が広がっていた。


カルデラ

(ちっ…相変わらず隙がねぇな…アタイみたいなタイプの対応がしっかりしてやがる…)


(アタイが近づけねぇよう…一方的に攻撃を浴びせ、隙を見つけて近づけばすぐに後退する。マジでやりづれぇ…)


フィアリア

「あら?どうしたのかしら。

 さっきから足が動いていないわよ?」


カルデラ

「はっ!アンタがそれをさせてくれねぇんだろ。どの口が言ってんだ?」


フィアリア(微笑みながら)

「ふふっ…そうね。この口…かしら?」


 そう…フィアリアは自身の唇を人差し指でなぞる。


カルデラ

「…だぁっめんどくせぇっ!!まとめて吹き飛んじまえ!!《破戒エクシティウム》っ!!!」


バァァァンッッ!!!!


 カルデラを襲っていた黒武器が、彼女の手の振りに合わせて、一度に全て破壊される。


フィアリア

「………っ!?…それが切り札なの…?貴方の見た目通りの乱暴さね。」


カルデラ

「その通りだぜ!!まぁ、文字通り…破壊する事だけが取り柄だがな。」


フィアリア

「それでも十分厄介よ…?属性相性や防御、耐性を無視した破壊だなんて…中々の無法チートっぷりだわ。」


「それも…回数制限とかも無さそうだしね。」


カルデラ

「ああ…アタイの魔力が続く限り、いくらでも撃てるぜ?」


フィアリア

「その上でクールタイムも無しっと…本当に面倒ね。」


 彼女はそう言いながら頭を抱える。その時──。


パァンッ…


 一発の銃声が鳴った。


フィアリア

「…どうやら、私が相手になれるのはここまでみたい…それじゃあまた、…会いましょうね?」


パチンッ…


カルデラ

「……っ!」


 指を鳴らす音と共にカルデラの視界は暗転し…再び瞳を開ければ、目の前に一人の男が写っていた。


アルセリオ

「よう…残念かも知れねぇが、こっからは俺が相手にならせてもらうぜ?」


カルデラ

「……ちっ、多少不足だが…元から狙いはテメェだし、良しとするか。」


アルセリオ

「へぇ〜そりゃ嬉しいな。

 人気者になるのも良いもんだ。」


カルデラ(ニヤッ)

「だったら安心しな。“アタイの拳”は、アンタへの贈物ファンレターだぜ…♡」

「…重くて痛ぇ、愛のこもった一発だがな!!」


 瞬間、カルデラの拳に紅蓮の炎が集約する!


スッ…


 そう音を立てて、アルセリオは手に持っていた銃をホルスターにしまい、北端の城壁を背に…左へと走り出す。


カルデラ

「…って!逃げんのかよっ!!

 今、やり合う流れだったじゃねぇか!!」


アルセリオ

「ふははははっ!!正面からやり合って勝てねぇのは分かってんだ!真面目にやる馬鹿がいるかよぉ!!」


カルデラ

「…てんめぇ…良いぜ…?その足ぶっ壊して…二度と走れなくしてやらぁ…!」


 カルデラが拳を鳴らし、蹴りで街灯を飛ばしながら、アルセリオを追いかけ始める。


アルセリオ

「…さて、鬼ごっこのスタートだっ!」


  ***


ドンッ…ドォンッ…


フィアリア

「…やり合い始めたわね…まぁ、逃げ回ってるんでしょうけど。」


ルドヴィクス

「…フィアリア殿…この音は一体…」


フィアリア

「あら?そっちは終わったのね。…って、貴方とこうして顔を突き合わせるのは初めましてよね?ダガン。」


ダガン

「ああ、初めましてだな。まぁ…共闘の様な形になるのはコレが初めてでは無いが。」


フィアリア

「ふふっ…そうね、初めて共闘した時は…もう600年以上前になるかしら…」


ダガン

「そうなるな。ふむ…相変わらずお変わり無い様で。

 そう言えば…最近《海霊王国ティルヴァーナ》に依頼で寄ったのだが…あそこにはもう戻らないのか?お姫様。」


 ダガンはその場で膝をつき、フィアリアの手の甲に軽くキスをする。


フィアリア(手を払って)

「…その呼び方はやめてちょうだい。戻らないわよ…今更。それに、今はもう十分幸せだしね。」


ルドヴィクス

「話について行けないのだが…まぁ良い。

 それにしても、探偵殿に皇都を好きに使って良いとは約束したが…あまり派手に壊されると、私の胃が限界を迎えてしまいそうなのだが…」


タッタッタッタ……


 各々、息を切らしながらこちらへと走ってくる。


ドクル

「皆さん…どうやら既に終わった様ですね。」


ヴィクトル

「なんだ…俺らが最後かよ。」


セレス

「フィーちゃ〜ん。坊やはどうしたのぉ〜?」


レオナール

「そう言えば…アルだけ居ないな…」


シグルド

「今さっき皇都から音がしただろ?どうせそこでドンパチやってんのさ。」


フィアリア

「その通りよ。今、苛烈カルデラと戦っているわ。」


レオナール

「…っ!?すぐに助けに行かねば…!」


 レオナールが皇都へと足を向け走りだそうとするが…ルドヴィクスそれを静止させる。


ルドヴィクス

「まぁ…待て、相棒殿。探偵殿が一人で対峙したとなると…おそらく計画通りなのだろう。

 ここは、信じてみるのはいかがかね?」


シグルド

「そうだぜ〜?レオ。焦んのは分かるが、ここは冷静になった方が良い。焦る事で物事が好転する事なんざ…滅多に無ぇんだからよ?」


レオナール

「…分かった。いつも通りアルを信じてみよう。」


ヴィクトル

「それが吉だな。まぁ、兄弟ならなんとかしてみせるさ。」


セレス

「すっごく賢いものねぇ〜坊やは、何処まで見えてるのかしらぁ〜?」


ドクル

「それが分からないのが恐ろしいですね。…そういえば、ご無沙汰してます。ダガンおじ様。」


 ドクルは若干の上目遣いと、気品溢れる姿勢で…ダガンへ一礼する。


ダガン

「…ん?ああ…あの時の子供か。オーヴは元気にしているのか?」


ドクル

「それが…現在連絡が取れていないんです。ですが、このブレスレットが反応したので、生きてるとは思います。」


ダガン

「クハッ!流石の放浪癖だな…相変わらずだ。」


 空を見上げながら、ダガンが豪快に笑う。


フィアリア

「…意外な接点ね…まさかそこの二人が繋がってるなんて…分からないものだわ。」


シグルド

「それでだ。俺らは待機でもしてりゃあ良いのか?」


ルドヴィクス

「ふむ…邪魔はしたく無いからな…とりあえず、フィアリア殿の力で、我が皇城へと転移させてもらおう。」


ダガン

「確か…今回の避難場所がお前の皇城であったよな?ルドヴィクス。」


ルドヴィクス

「ああ、耐衝撃性の高い《レガリアセフト》へ市民達を避難させている。

 溢れた者たちはエントランスにて待機してもらっているな。」


フィアリア

「そこに飛ばすのは良いけれど…ヴィクトルさん…だったかしら?貴方は探偵さんから指定の位置に飛ばしてってお願いされてるの。」


ヴィクトル

「…なるほど、てことはまだ何か起こるって訳だ。さしづめ…強敵相手の時間稼ぎってか?」


フィアリア

「私も詳しくは聞いてないわ…ただ、戦う事にはなりそうね。それと…少し耳を貸してくれないかしら?」


ヴィクトル

「………?」


 フィアリアはヴィクトルに近づき、何かを囁いた。


ドクル(少しふらつき)

「僕たちは少し休ませてもらいます。流石に…これ以上はお役に立てないかと…」


ルドヴィクス

「俺もこれ以上は動け無さそうだ。自室へ送ってくれると嬉しい。」


ダガン

「ならば…俺はルドヴィクスが寝ている間、護衛代わりに座しておこう。」


(奴がいるなら要らぬかも知れぬがな。)


フィアリア

「まとめて送るわねぇ〜はいっ!」


パチンッ…


 一度に、別々の場所へと転送される。


フィアリア

「…私は探偵さんを良く見ておこうかしら、約束だからね。」


 フィアリアは一瞬、自身の深淵の中を確認しつつ、その中へ入っていく。

煽って、逃げて、また煽る。

探偵は今日も、命が軽い。


正々堂々?

知るか、そんなもん。


結果さえ出せば、それで良い。


──第22話、『走れ、探偵』

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