第20話 神獣の囁き
ザァァァァアンッッッ!!!!!
その音と共に、グラーヴァの身体が真っ二つに斬れる。
グラーヴァ
「…グォォォオオンッッ!!!」
すると、グラーヴァの肉体は地面とは接さず、不自然に浮き上がると…斬った部分が静かに再生する。
シグルド
「あんれぇ〜?真っ二つにしたはずだぜ…?…そんなに簡単に再生されっと…おじさん自信無くしちゃうよお〜。」
???
『いや…この威力は誇っても良いと思うぞ?』
──何者かの声が反響する。
ヴィクトル
「な…なんだぁっ!?どっから聞こえて…!」
セレス
「なんか凄く響いててぇ〜気持ち悪いわぁ〜」
ドクル
「これは…念話ですね…」
レオナール
「て事は…グラーヴァか…?」
グラーヴァ
『さよう…我は貴様らの脳内に直接声を届けておる…すまぬが、この形態では満足に人語を喋れぬ故な…こうして語りかけておるのだ。』
ドクル
「…そう言えば、融神グラーヴァについての伝承で、対話が可能という記録がありましたね…まさか本当に意思疎通が出来たとは…」
グラーヴァ
『ふむ…我もそこそこ有名なのだな…初知りだ。』
『そう身構えなくても良い…別に取って食おうというものでも無いからな。』
シグルド
「…どおりでさっきから殺気を感じなかった訳だ。」
ヴィクトル
「その割には…やってる事の容赦が無かったけどな。」
グラーヴァ
『すまんすまん…久々の現界であるからな…少し興が乗ってしまった…許せ。』
ドクル
「魔獣でここまでの知能を持っているとは…さすが神と冠するだけはありますね…」
グラーヴァ
『小僧…我を畜生共と同列に扱うでない…心底不愉快だ。』
──あたりの空気が張り詰める。
ドクル
「違うのですか…?僕たちはそう習いましたが…」
グラーヴァ
『全く違うわっ!!我は魔獣などでは無く、もっと高貴な…最古の龍の一柱にして、貴様らの言葉で言う…"神獣"の端くれだぞ?』
ドクル
「それは…初耳ですね。つまり、今回は叩き起こされた…と言う事ですか?」
グラーヴァ
『うむ。…安心しろ。そなたらの責任でない事は良く分かっておる。…憤怒の小童のせいである事も承知だ。…好き勝手呼んでからに…』
ヴィクトル
「その反応…前にも呼ばれた事でもあんのか?」
グラーヴァ
『あるな…もうあれから数千年前になるか…確か、小さな少女に召喚された覚えがある。
まぁ、あの時の呼び出された原因は力の暴走であったから、特に気にしてはおらんのだが……
今回は随分と乱暴に起こされたものさ。』
シグルド
「本当の神獣なのであれば…悪い事をしたな。痛かったろ?」
グラーヴァ
『よいよい…我も少々興奮になってしまったが故に、ブレスを少し強めに打つなどと調子に乗ったからの。』
レオナール
「アレで全力では無かったのか…」
グラーヴァ
『当然であろう…?全力など出してしまえば地図が書き変わってしまうからな、たとえ調子に乗ったとて…そのくらいの分別は出来るつもりだ。』
『そもそも、我の様な存在は…現界時に、世界から強い制約が付与される故、全力は実質的に出せぬ状態になる。残念だがな。』
セレス
「そう言えばぁ〜融神様ぁ〜。ながぁ〜く生きてるならぁ〜アーちゃんの事…知ってたりするのかしらぁ〜?」
グラーヴァ
『むっ?アーちゃん…ああ、あの半天使の小娘か…知っておるぞ?良く遊んでやったわい…』
ドクル
「僕からも質問良いですか?」
グラーヴァ
『うむ。言ってみろ。』
ドクル
「マルドュクの事を小童と言っていましたが…彼の過去を知っているので?」
グラーヴァ
『…多少な。あまり我からは話すものでは無い故、詳細は省くが、確かに…あの小童の過去は見てきた…。
まぁ我は良く眠るからな…こうして現界する事がそもそも少ないのだ。それ故、そこまで詳しくは見ておらん。』
ヴィクトル
「それじゃあ…俺らはもう戦わなくて良いってこったな?」
グラーヴァ
『その理解で良い。我もそろそろ眠くなってきておるからな。戻らせて貰うぞ。』
ドクル
「はい。お騒がせしてすみませんでした。」
グラーヴァ
『謝る必要は無いわい…それじゃあお別れじゃな。』
セレス
「じゃあねぇ〜蛇さぁ〜〜ん。」
そう言って手を振りながら、一同は皇都へと足を向ける。
グラーヴァ
『おい…何故そなたがあの者共と群れておる?』
そう…グラーヴァはシグルドだけの脳内に語りかける。
シグルド
(別に良いだろ?それに…バラしやがったら容赦しねぇからな?)
グラーヴァ
『ククク…分かっておるわ。暴食のケダモノとの因縁は決着がついたのか?』
シグルド
(まだだな。尻尾の一つも掴めりゃしねぇ…)
グラーヴァ
『ふむ…ならば《交易都市国家サルクハーム》に行ってみよ。そこにアレは眠っておる。』
シグルド
(本当かっ!?…感謝するぜ?まぁ!まだ戦力的に行けたもんじゃ無いが…)
グラーヴァ
『ククク…まぁ…頑張りたまえ。』
シグルド
(言われなくても頑張るさ…それじゃあな。)
グラーヴァ
『うむ。また会う時があれば、好きに語り合おう。』
そう言って…緑色の身体は、静かに霧散していった。
***
ガァァンッ!!ドォンッ!!
カルデラ
(近づけねぇ…とことん相性が悪ぃぜ…アタイ…ハズレを引いたか…?)
フィアリア
(良く避けるわね…あの子。これだけの飽和攻撃で、これっぽっちも傷がつかないなんて…)
カルデラ
(面倒になってきたぜ…ちょっと本気だすか!)
ボォ……ッ
カルデラの纏っている炎が一層燃え上がり、額から…赤角が少し顔を覗かせる。
フィアリア
(なるほど…彼女、炎角族なのね。となると、)
シュンッ……
カルデラ
「何考え込んでんだっ!!」
フィアリアの背後を再びカルデラが取る。
ゴォォォンッッ!!!
フィアリア
「流石の膂力ね…私みたいな唯の魔人には羨ましいくらいだわ。」
カルデラ
「何言ってんだ…、精霊種の血が入ってるくせによ!」
カルデラはフィアリアに高速で近づき、蹴りをお見舞いする。
フィアリア
「足癖が悪いわね。」
ブゥンッ……
フィアリアの魔力が手の様な形をしながら、カルデラの足を掴む。
カルデラ
「そんなもんでアタイを止めれるかよ!!」
カルデラはその場で二、三回ほど身体を回転させ、その勢いのままに回し蹴りを入れる。
フィアリア
「………っ!?……体…柔らかいのね。」
フィアリアは腕を使って受け止めるが、少し当たった箇所が赤くなっている。
カルデラ
「へへっ…アタイの数少ない長所だぜ!」
しばし攻撃の応酬をしていた二人の元へ、とある男が合流する。
右肩にかかっているマントをたなびかせ、モノクルが、太陽光に晒され…綺麗に反射している。
アルセリオ
「すまん…フィアリア。少し遅れた。」
フィアリア
「あら…遅かったじゃない…探偵さん?」
紅蓮は牙を研ぎ、
探偵は都市をなぞる。
逃走は合図。
狼煙は、まだ上がらない。
──第21話、『破戒の牙と、逃走の狼煙』




