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第17話 最古の龍

ルドヴィクス

「さて…」


 ググッと足に力を込め、敵を見やる。


ダンッ……


 思い切り飛び上がり、一瞬にしてカラドニクスの死角へと近づく。

 そして遥か後方へと蹴り飛ばし、その反動でイグニヴァルに斬りかかる!


ルドヴィクス

「…場所を変えようかっ!!」


ブゥンッ……!


 ルドヴィクスの斬撃をイグニヴァルは何とか躱わす…だが、遅れて発生した風圧によって飛ばされる。


ルドヴィクス(軽く振り返りながら)

「それでは…フィアリア殿。また会おう。」


 そう言って、まるで瞬間移動の様に、その場から消える。


フィアリア

「やっぱ…フィジカルって大事ね…」

「それじゃあ…私達も始める?」


カルデラ(両手を突き合わせながら)

「おう!アタイ、戦いたくてうずうずしてるぜ!!」


フィアリア

「そう…私もよ…」


──しばしの睨み合いが続く。


カルデラ

「行くぜっ!!!」


ドーーンッ!


 カルデラの身体を紅蓮の炎が包み込み、バチバチと音を立てている。


フィアリア

「綺麗ね…観賞用くらいにはなるんじゃない?」


(見ての通りの近接系…近づかれたら厄介ね…とりあえず、牽制してみようかしら。)


 彼女の手から、黒い霧のようなものが立ち込め、それらが集まり…様々な武器の形を取る。


カチャッ…


 全ての黒い武器が、カルデラの方へと刃を向けて待機している。


カルデラ

「すげぇ数だな…」


フィアリア

「あら…褒めてくれてありがとう。それじゃあ、頑張って避けてね?」


 フィアリアの手の動きに合わせて、一斉に音を立てながらカルデラ目掛けて高速で飛来する。


ズガガガガッッッッ!!!


カルデラ

「ふんっ!!」


 カルデラはその場に留まり、炎を纏わせた拳で、それらを粉砕する。


カルデラ

(キリがないな…右から周るか?)


 視線を右へと移動し、足を踏み出そうとしたその時…


フィアリア(横目で)

「……させないわよ?」


ドンッ!!!


カルデラ

「……っ!?」


 他の攻撃よりも遥かに巨大な武器が、進行方向を封鎖する。


フィアリア

(悪いけど…このまま動けずに完封させてもらうわ。)


ヒュンッ……


 フィアリアの頬を小さな炎弾がかすめる。


フィアリア

「……っ!?」


(あの子…自分で生成した炎弾を指で弾いたのっ!?)


 一瞬…フィアリアの生成した黒い武器の動きが止まる。


シュンッ…


カルデラ

「…隙ありだぜ……?」


 カルデラはフィアリアの背後を取り、強撃を振るう…!


ドォォンッッ!!!!


フィアリア

「貴方…意外と頭が回るのね…」


(あまり頭は強そうに見えなかったけど、戦闘センスが高い感じかしら。)


 フィアリアの背後を守るように展開された黒いモヤが、役目を果たしたように消えていく。


カルデラ

「ちぇっ…良いのが入ったと思ったのによ…」


フィアリア

「残念だけど…そんな簡単に攻撃を入れられてたまるもんですか…どんな攻撃でも、致命傷だけは必ず避けるわ。」


「さぁ…もう一回始めましょう?」


ブゥン……


 先程と同じように、大量の黒武器がカルデラに襲いかかる。


カルデラ

(また振り出しかよ〜……)


  ***


一方…ルナヴィータ王国にて、


伝令兵

「国王様…事態は刻々と悪化している模様です。」


アルヴレイド

「イグニヴァルに…カラドニクス。グラーヴァまで現れた上に、苛烈カルデラ縛鎖セクメトまで本格的に動き始めたか…」


「──報告ご苦労…戻りたまえ。」


伝令兵

「はっ!それでは、これで。」


 そう言って、男はその場を後にする。


アルヴレイド

(流石に…皇国だけの問題じゃあ収まらないかもねぇ〜…)


 いつもの様に頬杖をつきながら、外をじーっと見つめている。


ラメリア

「ルドヴィクスちゃん達だけで大丈夫なのかしら…」


カルナ

「俺が行こうか…?まぁフィーなら何とかなるとは思うけど…」


オラクス

「私の個人的な意見なのですが…主目的は他にあるかと。混沌ファビウスが…一体どう関わってくるのでしょうか…」


アルヴレイド

「目的が見えて来ないんだよねぇ〜。ただ皇国の戦力を削ぎたいだけなら、焔王が現れた時に畳み掛けるだろうし…

 本命の相手がいるなら、ここまで大ごとにしなくても良い気がするしねぇ〜。」


「それこそ暗殺で。」


ラメリア

「まるで…ゆっくりと時間を稼いでる様に見えるわね。オラクス君の言う通り、戦力を削ぐのと別に…並行している目的があるはずだわ。」


オラクス

「となりますと…アスペリア皇国の騒動に目を向けさせておきつつ…その過程で皇国の戦力を出来るだけ削ぎ、稼いだ時間で主目的を達成する。…と言う事ですかね。」


縛鎖セクメト苛烈カルデラ、三体の凶獣まで贅沢に投入するほどの大きな目的…ですか。」


カルナ

「……難しい事は分からないが…これだけ派手に暴れるのは、何かを盗む為じゃないか?」


ルドヴィクス

「カルナ…詳しく話してくれ。」


カルナ

「……?ああ。目を向けさせるって事は、その間に何かしたい事がある訳だろ?ド派手な音も鳴ってるんだし、多少物を落としたり歩いたりしても誰も気づかないだろう?」


タッタッタッタ…!


 扉の向こうの廊下から、足音を立てながら走ってくる音が聞こえる。


オラクス

「どうやら…その通りの様ですね…」


ガチャ……


  ***


 皇都から数キロほど離れた区画にて…


ルドヴィクス

「すぐに壊れてくれるなよっ!!」


ガァァンッ!!!


 ルドヴィクス豪撃があたりを揺らす…


ルドヴィクス

(そうは言ったが…こいつら…存外に厄介だな…)


(イグニヴァルへ斬撃を飛ばそうとしても躱される上…近づいて一撃を食らわそうとしても、カラドニクスに阻まれる…)


(だが趣向を変えてカラドニクスを攻めようとすると、イグニヴァルが空中から茶々を入れてくる…)


「攻守がしっかりしているじゃないか…!」


イグニヴァル

「コォォォ…………ッ」


 イグニヴァルが音を立てて空気を取り込み始める。


ルドヴィクス

(ブレスでも吐く気か!)


「させねぇぞっ!!」


ダンッ…


 高速でイグニヴァルの元へと跳ぶが、


カラドニクス

「グラァァァッ!!」


 硬いお腹周りの装甲を、ルドヴィクスの前に張り出して行く手を阻む。


ルドヴィクス

「クソッ邪魔をするなっ!!」


ガァァンッッッッ!!!!


 ルドヴィクスの剣が弾き返される。


ルドヴィクス

(ちっ…相変わらず硬いな…)


 すると、イグニヴァルはその呼吸を止め…準備を完了する。


ルドヴィクス

(ブレスが来るかっ!ならば、一度着地して回避体勢に入ろう。)


ゴンッ!!


 ルドヴィクスはカラドニクスの装甲を足場にして、後ろへと跳ぶ。


ビュンッ……


ルドヴィクス

「………っ!?」


 イグニヴァルが高速で滑空し、ルドヴィクスの側面から、その口を開ける。


キュィインッ!!


 口内の紅は徐々に白く変わり…ついには、音さえも焼き尽くす静寂が訪れる。


次の瞬間──、


ドゴォォォォォオ!!!!


 一つの山を消し飛ばす程の、爆破混じりの高圧ブレスが、けたたましい音を立てて炸裂する…!


シュウゥゥ〜〜……


ルドヴィクス

「ちっ…クソ熱いな…」


 全身を火傷が襲うが…ゆっくりと治っていく…すると、大きな影がルドヴィクスを覆う。


カラドニクス

「ガァァアアア!!!」


ドスンッ!!


 まるで、大地ごとめり込むような衝撃がルドヴィクスの腕を襲う。


イグニヴァル

「コォォ………」


──再度、イグニヴァルが次弾を装填する。


ルドヴィクス

「こいつ…体重だけでも脅威だな!!」


 カラドニクスが体を捻りながらその場を離れる。


イグニヴァル

「グラァァァッッッッ!!!!!」


──瞬間、先程よりも練られたイグニヴァルのブレスが…ルドヴィクスへと、もう一度炸裂するっ!!


ルドヴィクス

「ちっ!…防ぎ切れるか……!?」


ドゴォォオオオンンッッッ!!!


 半径数キロ圏内を吹き飛ばす程の爆発と突風が、膨大な量の粉煙を撒き散らす。

 その中には人1人の影も無く、イグニヴァルとカラドニクスは、ゆっくりと様子を伺っていた。


──粉煙が晴れる。そこには……、


???

「……随分と衰えたな…ルドヴィクス。」


 渋い男の声がした。その声はルドヴィクスの名を呼ぶ。


ルドヴィクス

「…助けを、呼んだつもりは無いぞ?ダガン。」


業魔のダガン

「強がりはよせ。正直、今のお前一人であの二体の相手は厳しいのでは無いか?」


ルドヴィクス

「……その通りだ。認めよう。それで?お前はどちらを相手取るつもりだ?」


ダガン(上を見据えて)

「…俺は飛んでいる方を担当しよう。」


ルドヴィクス

「お前の魔弾では避けられるだろう?」


ダガン

「問題ない。物量で押す。」


ルドヴィクス

「脳筋だな…やはり。」


ダガン

「勝てば良いのだ…勝てば。」


ルドヴィクス

「はっ!違いないな…」


 そうして…ルドヴィクスは体勢を整え、剣を構える。


  ***


 遠く離れた火山の中腹で、五人はグラーヴァと相対していた。


ヴィクトル

「ほんとに見えねぇな…何処にいやがる?」


 彼は辺りを見回すが…普段と変わらぬ光景が映る。


シグルド

「本当に居るのか?ドクル。」


セレス

「確かにぃ〜攻撃を仕掛けて来ないわねぇ〜〜。」


ドクル

「居ますよ。ただ、こちらの事をよく観察しているんでしょう。知能が高いので用心深いんですよ。」


レオナール

「仮に位置が分かったとして…俺たちがダメージを与えられるのか?」


ドクル

「見えないだけで、実体はありますからね。東方に居ると言われる龍の様に、空をっています。」


ヴィクトル

「それで?攻撃を防ぐ方法はあんのか?見えねぇならお手上げだぜ?」


ドクル

「安心して下さい。もう準備が終わりました。

──《塵紋術ヴェズ・ラガル》」


ブワァッ……


 淡く光る微細な粒子が、この山全体を覆う。それを見たシグルドが、興味深そうに小声で呟く。


シグルド(粒子に触れながら)

「なるほど…見えなくても実体があるなら、通った時にこの粒子が反応を示す訳か…」


 すると、確かに粒子がグラーヴァの動きを可視化する。


ユラァ……


セレス

「すっごくゆっくりねぇ〜〜でもぉ〜隙が無いような気がするわぁ〜。」


レオナール

「これで位置は分かったな。あとは…攻撃を与える術がない事だ。暑すぎて、まともに近づけもしないぞ。」


ヴィクトル

「まっ!難しい事を考えても無駄だろ?とりあえず、当たってみねぇと分かんねぇ。」


ドクル

「何処までいっても生物なので、しっかりとダメージは通ります。」


──ピタッ。


 突如、グラーヴァがその動きを止める。


シグルド

「…気づかれた様だな!?来るぞっ!!」


ビュンッ!!!

ガァァァンッッ!!!!


 姿ははっきりと見えないが、確かにそれの攻撃が腕に伝わる。


レオナール

「凄い力だな…っ!押し負けそうだっ!!」


スゥゥゥ……


 場所がどうせバレるのならと、グラーヴァはその姿を露わにする。

 天を突くほどの巨体。深き森を閉じ込めた宝石のような緑をした鱗が、煌びやかに光を反射している。


シグルド

「こう言うのは言うもんじゃ無いだろうが…綺麗だな。恐ろしいくらいに。」


ドクル

「一部では神格化されていると言う話も聞きます。ですが、どこまで行っても魔獣ですよ。」


ヴィクトル

「それもそうだな。」


レオナール

「みんな…俺、そろそろ限界なんだが……」


シグルド

「…とりあえず俺らは横に移動して、レオは上に弾き飛ばせ。」


──その言葉と共に、一斉に横へ避難する。


レオナール

「よし、…はぁぁぁああ!!!」


ガァァンッッ!!!!ズザザザザッッ!


 レオナールは上へと力を逃しながらも、身を傾ける事で巻き添えを食らわない様にする。


 そして、グラーヴァはその巨体を地面に引きづらせながら、上へと登っていく。


──身体が太陽と被り、その姿は言い表せない程の神々しさを纏っていた。


セレス

「本当に…綺麗ねぇ〜」


グラーヴァ

「ォォォォォオオオオン……」


シグルド

「鳴き声まで風格があるな…」


ヴィクトル

「はっ!こっからが本番って訳だ。」


ドクル

「そうなりますね。皆さん、…気張っていきましょう。」

戦場は分断され、思惑は交錯する。

表に見える戦いの裏で、何かが静かに進行していた。


そして火山に現れた、最古の龍。

神々しさの裏で、世界は静かに軋み始める。


──次回、『双璧を穿つ者達』

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