第11話 誇りを背負う者たち
戦士が大樹に横たわっているシグルドの元へと…ゆっくりと近づき、様子を窺う。
そして、シグルドの大きな傷を見て戦士はその場を後にしようと、振り返る……その時だった。
シグルド
「…死んだかどうかは…きちんと確認した方が身の為だぜ?」
先ほどの大傷が嘘の様に消え、モヤを出しながらシグルドの姿が背後に現れる。
「……っ!?」
シグルド
「随分驚いた顔をしてんな?…そんなに珍しかったか?まぁ…良いか。こっからが本番だ。」
「あんま使いたく無かったんだがよ?…周りの奴も見てねぇらしいから、ちょっくら使わせてもらうぜ?」
──続けて、シグルドがこう…口にする。
シグルド
「…『 』っ!!」
突如、辺りを大量の魔力を含むモヤが包み、シグルドの姿を覆い隠す。
戦士はキョロキョロと見回すが、シグルドの姿も、音も気配も匂いも全て、感じられなくなる。
ザシュッ………
戦士の体に次々と斬り傷がつくが、その姿は捉えられない。
「グルラァァーー!!!」
思いっきり戦鎚を振り回すことでモヤを霧散させ、シグルドの姿を遂に捉える。
そして、全力の一撃をお見舞いする!!
ブゥンッ!!!ドーーーーーン!!!!!
大地に大きなクレーターができ、あたりの空気が煮えたぎるが、
──グサッ……
「グ…ラァ……!」
シグルドの二本の短剣が…戦士の急所を的確に貫く。
そして、容赦など一切見せず…斬り刻み始める。
──何度も、何度も。
最後にダメ押しをするようにして、黒炎にて戦士を焼却した。
シグルド
「おっさんもまだまだ現役だってな。
あばよ…哀れな傀儡兵。」
シグルドはその場を後にした。
***
──ヴィクトルもまた、漢と漢の戦いを…今一度始めようとしていた。
カァンッカァンッ!!
壮絶な戦闘音が戦場に響き渡る。
ヴィクトル
「どおしたどおしたぁ!!鈍ってきてんじゃねぇかぁっ!?」
槍使い
「クハ…おま…えも…ひとの……こと…をいえ……んだ……ろう?」
ヴィクトル
「俺は抜いてやってんだよ!!」
槍使い
「そう…か……なら…ばこれを……うけて…みろ」
そう言い、槍使いの体が緑と黒を混ぜた様なオーラが立ち込め、
──それは確かに…死の気配を帯びていた。
ヴィクトル
「はっ!!なら、俺も答えねぇとな。」
ヴィクトルは魔力を使って、身体能力を大幅に向上させる…淡い閃光を纏っていた。
ヴィクトル
「初歩的な魔術だが…そこそこ練度は高ぇぞ?」
ダンッ!!
黒緑と閃光が、互いに干渉し合いながら衝突する!!
槍使いがヴィクトルの頭に最速の突きを入れるが…ヴィクトルは身を屈め、それを躱わす。
ヴィクトル
「おうらっ!!!」
──高速で、膝を槍使いの腹へ入れる。
ヴィクトル
「………っ!?」
槍使い
「足……ぐせが…わる…いな」
槍使いはヴィクトルの足を掴み、高速で振り回し始める…次第に、その風圧が一陣の嵐を発生させる。
ブゥンッブゥンッ!!
「遠心…力とは……こわい…もの…だぞ?」
ヴィクトルの身体がミシミシと小さく音を立てる。
「それ…かい…ほうし…てやろう…」
ヒュンッッ!!!
遥か後方へと投げ飛ばされたヴィクトルの身体に、黒緑のオーラが纏わりつき、反対へと引き戻される…!
「少々……痛い………ぞ?…」
ドーンッッッ!!!!
ヴィクトル
「……がっ!!!??」
引き戻されて来たヴィクトルの腹部に、槍使いが…全体重を乗せた強烈なパンチを食らわす。
更に地面に刺してあった槍を蹴り、空中へ上げた所を掴み、ヴィクトル目掛けて勢い良く投げる!
ビュンッッ!!!!
ヴィクトル
「くそっ……たれ!!」
ヴィクトルはその槍を寸での所で掴み、木へと刺しながら勢いを殺し、何とか一命を取り留める。
タッ…タッ…タッ……
槍使い
「いき…ながら……えたか…」
槍使いはヴィクトルの元へとゆっくり近づき、トドメを刺そうとする。
──その時!!
ヴィクトル(ニヤっと笑う)
「待ってたぜ…?この時をよ。」
「…《伸縮》!!!」
槍使い
「………っ!?」
ヴィクトルの傍に離さず掴まれていた槍が、突如として伸び、槍使いに急接近する。
ヴィクトル
「まだまだぁ!!《旋廻》っ!!!」
──瞬間、ヴィクトルの槍が七色を纏い…異常な量の魔力が奔る…!
ヴィクトル
「そんでぇー、『 』っ!!!」
ドガァーーーーンッッッ!!!!!
「グ……ア"ア"……ッ!!」
まばゆい閃光が体を成し、あたりの暗闇を掻き消した…!!
ドサッ……
ヴィクトル
「へへっ……俺の…勝ちだぜ……」
槍使い
「ああ……俺の…まけだ…」
二人は向かい合う様に倒れ、体を大の字にして寝転がる。
「名を……聞いて…おこう……。」
ヴィクトル
「旋廻のヴィクトルだ…。…あんたは?」
槍使い
「俺は…名など覚えて……いないさ……ただ…一つ言える………ことは…」
「たの……しか…った…ほんと……うに…」
ヴィクトル
「同感だ…良い戦いだった…」
そうして、槍使いは静かに消えていった。
***
一方、レオナールはというと……
レオナール
「はあああっっ!!!」
勢いよく剣を振り下ろすが、軽々と止められてしまう。
ドーーンッッッ!!!!
お返しだ…と言わんばかりに、騎士は大剣を更に強く振り下ろし、大地を大きく抉る。
レオナールらはそれを何とか躱わすが…騎士は大剣を手放し…足を上げながら、レオナールの腹部へ前蹴りをかます。
レオナール
「ぐっ……!!」
騎士は大剣を再度握り…突進。レオナールの身体の2点を抑え──そのまま回転させる。
レオナール
(…空…?……いや、回されたかっ!?)
レオナールが辺りを見回すと…そこには騎士が大剣を大きく振りかぶっていた。
レオナール
「クソ…がっ!!」
なんとか、剣での防御が間に合うが、勢い良く地面へ叩きつけられる。
ギィィィイッッッ!!!
剣の交わる火花が飛び散り、刻々と…レオナールの元へ大剣が迫る…!
体重…大剣の重量…騎士のパワー…そして重力…その全てが乗った攻撃は、レオナールを持ってしても抑えきれない。
レオナール
「ん"ん"あ"あ"あ"ッッッ!!!」
カァンッ………ドンッ!!
衝撃を横に受け流す事に成功し、騎士の大剣が地面へと突き刺さる。
そして、レオナールは寝転がる体勢のまま、右足を騎士へ向けて蹴り出す…騎士の体は少し上へと上がった。
レオナール
「はあ"あ"あ"っ!!!!」
ブゥンッッ!!
騎士の首へ向けて、レオナールが左手で剣閃を放つが…騎士はそれを左手で掴む。
──そして、着地と同時に左腕を上へ上げつつ、右手の大剣で叩き斬ろうとする。
それを見たレオナールは剣を手放し、避け…右手に思いっきり力を込めて殴打する!
ドーーーーンッッッ!!!!
騎士がまた数メートル吹き飛ばされ、レオナールが追撃を行う。
──が、騎士は大剣を横の木に突き刺し、勢いを止めて着地。突っ込んで来たレオナールの顔面にタイミング良く、跳び膝蹴りをかます。
レオナール
「ぐあっ!!!」
レオナールの仰け反った身体の足を掴み、地面へ叩きつけ、反動で身体が浮いたレオナールの腹部を勢い良く蹴り飛ばす。
ゴンッ!!!ビュンッッッ!!
ズザザザァ……
剣を地面に刺しながらレオナールは体勢を整え、ふと…小さい頃、拾われたばかりの頃に、シグルドに言われた事が頭を過る。
──
シグルド
「良いか?レオ。お前は確かに強い。そこらの国に遣える騎士よりも、お前は力が強く…魔力が多い。
だがな、記憶を喪ってるってのもあるだろうから…しょうがない所もあるが、お前には対人経験が圧倒的に足りない。」
レオナール
「人型相手なんて思いっきり殴れば、倒せるだろ?それに、俺の方が速いし。」
シグルド
「その考えは改めろ。もし、お前よりも速く…力が強く、それでいて…お前よりも対人経験が豊富な相手と戦わなければならない時──お前はどうする?勝つ手順が想像出来るか?」
レオナール
「出来ない…かも。」
シグルド
「だろ?だから、今から言う事を心掛けておけ。
攻撃はそのまま受け止めるな…最小限の力で受け流せ。相手の動きをしっかり見ろ。出掛かりを潰せ。相手の力を…勢いを利用しろ。
「それと、やるやら徹底的にやれ。急所を突いただけで満足するな。騎士道だなんて甘い考えは捨てろ。それは強者の特権だ。」
──
騎士がレオナールへ向けて、横薙ぎをする。
「最小限の力で受け流す…」
キィンッ!!
レオナールは剣の面を斜めに向けながら、横へと逸らす。
(相手の動きをよく見て…)
集中し、騎士の動きを注視すると…視界が少しゆっくりになる。
騎士は足を一歩前へと出し、斬り返そうとするが…レオナールは剣の柄を片手で抑え、出掛かりを潰す。
「勢いを、利用する…」
レオナールは騎士の腕を掴み、下へ引く事で、騎士の体勢を崩す。そして、剣を騎士の胸に突き刺す。
「やるなら徹底的に…やるっ!!!」
剣の向きを変え、首元まで斬り裂きながら、騎士の首を落とす。
ザシュッ!!!!!
「……覚えとけよ。これが、俺の流儀だ。」
騎士はその身体を消えゆく焔へと変え…霧散していった。
こうして…四柱の騎士は焔へと還っていった。
焔が揺れ、傀儡の四騎士を退けた彼らの前で、
焔王の残滓はついに“歪な本性”を露わにする。
しかし、それは終わりではなく――災厄の幕開けにすぎなかった。
限界の陣が輝く中、戦場は総力戦へ。
──次回、『残滓の抗い』




