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第9話 焔に吠えるは四騎の亡霊

第9話 焔に吠えるは四騎の亡霊


グルルゥララァァァァァ!!!!


 残滓の前脚が炸裂する!その大きな脚が影を落とす…


アルセリオ

「でっけぇなぁ!!クソ!」


 アルセリオは見上げながら愚痴をこぼす。それと同時に、一同は各々距離を取り、攻撃をかわした。


ドンッ!!!


 強烈な音と共に、焔が舞う。


レオナール

「地面が燃えるせいで、長期戦になると足場を無くすな。」


ヴィクトル

「いや、その心配は無さそうだぜ?」


 そう言うと…ドクルの張った結界の影響か…すぐに冷気に冷やされる。


アルセリオ

「マジで大手柄だな…ドクル。」


ヴィクトル

「もう一発来るぜっ!!」


ドーーンッ!!!!


 残滓は先程よりも強く踏みつけてくる!


アルセリオ

「まずはどう近づくかだな。あと、アレの弱点とか無ぇのか?だとしたら詰みだぞ。」


レオナール

「そうだな。聖属性以外には特に無さそうだ。」


ヴィクトル

「ってなると、またアレでもやるか?」


アルセリオ

「確実に足りねぇだろうな。一撃で消し飛ばすって事ぐらいしか殺れねぇだろ。」


レオナール

「紅蓮牙樹の時の様に一刀両断ではダメか…」


ヴィクトル

「アレで足らねぇならどうすんだ?…持久戦になるか?やっぱり。」


アルセリオ

「持久戦だけは却下だ。俺たちの方が先にくたばる。体力切れを狙うだけ無駄だ。」


 みな、考えを張り巡らせる…だが、一向に結論が出ず、二の足を踏んでいる。


ヴィクトル

「奴さん…うえを向いてるぞ!?」


ガァァァァァ!!!


──そして、焔の王が、空へ向けて唸りを上げた瞬間。

地の裂け目から、焔と共に現れる“兵士”たち。

黒鉄の鎧に包まれた身体、赤い光を放つ瞳、溶けかけた剣を手にした、古の衛兵の亡霊。


 それは、《焔の王の先兵》。

王の意志なき命令に従い、死してなお、焼き尽くすために蘇った者たちであった。


アルセリオ

「全部で四体か…大剣、槍、弓、そんで戦鎚。…バリエーション豊かだな!」


ヴィクトル

「こっちは3人であっちは5体…たまったもんじゃねぇなぁ…ったく。」


シグルド

「俺とマックス君も来たから、これでトントンだな。」


マックス

「おうよ!まだまだ頑張っちまうぜ!!」


アルセリオ

「それで親父…あっちは良いのか?」


シグルド

「ああ。フィアリアちゃんが加勢してくれてらぁ…。それに、王様も出張って来てるぞ?」


ドカーーーーーンッ!!!

 遠くから強烈な爆発音と斬撃の音が響き渡る…


シグルド

「ほらな。」


ヴィクトル

「そうか…そういやあの人…元Sランクだったな…」


アルセリオ

「マジかよ…強ぇだろうなぁとは思ってたが、アイツマジで何なんだ?」


アルセリオ

「まぁ良い、とりま…大剣の奴はレオが、弓は俺、槍はヴィクトル。戦鎚は親父。そんで…

 マックスはひたすら残滓を煽って逃げててくれ。」


 皆その指示に頷き、対応する敵を引きつけ四方に分かれる…そして、マックスは一人佇んでいた…


マックス

「へっ?……またかよぉーーーーーーっ!!!!」


 火山にマックスの悲鳴が反響する。

 

   ***


「さて、テメェの相手は俺だぜ?名前は…まぁ戦士で良いか。」


 構えすら見せない挑発に、戦鎚を握った亡霊は口元をわずかに歪めた。

 ニヤリと──まるで、生前の癖が残っているかのように。


「笑えるってこたぁ……“意思”があんな? これも残滓ってわけか。……おもしれぇ。」


 シグルドは二本の短剣を抜き、片足を引いて重心を落とす。…その刹那、森の熱気がひとつ震えた。


ブゥンッ!!!


 戦士がシグルド目掛けて大きな戦鎚を持っているとは思えない速度で、縦…横と振り回す。それをシグルドは軽々と躱わす。


「そらよっ!!!」


 敵の振り切った戦鎚を流し目で見送ると、シグルドはすかさず左胸と脳天を突き刺す。が、

 

カァンッ!!


 僅かな火花を散らし、彼の短剣は軽い音と共に、敵の鎧にて弾かれる。


「かってぇーー!!こりゃ、隙間を狙わねぇとダメだな…」


 顔をしかめて、距離を取るため、後ろへ下がろうとしたその時──。


「……っ!?…ちっ!」


 シグルドは死角から振るわれた戦鎚を捉えると、舌打ちをしながら高く跳躍する。

 すると…敵は戦鎚を振りかぶり、大地を強く叩く!


 大地がひび割れ、その一角がシグルド目掛けて迫り上がる…!


「馬鹿力が……っ!!」


シグルドは宙で体をひねる。

そして反転し、そのまま起伏を足場に駆け降りた。


「一発目ぇ!!」


 刃が鎧の隙間に滑り込み、肉を裂く感触が手に伝わった。


「グガッ……!?」


 あまりの苦痛に、敵は痛がる声を漏らす。それを見たシグルドは目をギラつかせて斬り繋ぐ。


「しっかり痛ぇんだな?そりゃ良かった…痛ぶり甲斐があんじゃねぇかっ!!」


 今度はさらに多く、戦士の体を斬りつける。

戦士は再び苦悶の表情を見せるが、すぐに戦鎚を持ち換え、反撃をする。


「グラァァッ!!」


ブゥゥウンンッッ!!!


「そう怒んなって…動きが単調になってんぞ!!」


 避けた勢いを利用して再度斬りつけを試みる。

──が、戦士が僅かに口角を上げ…武器を手放し、渾身のタックルをかます…!


「………がっ!?」


 シグルドの体が宙に浮き、体勢が崩れる…そこにすかさず、戦士は戦鎚を両手で持ち直し、シグルドへ重たい一撃を食らわす…!!


「かはっ!!!」


口の奥から鉄の味が広がり、折れた肋骨が皮膚を裏から押し上げる。

 だがその鈍痛すら、戦場の鼓動に変わっていく。


ドーーーーーンッッッ!!!!


 轟音と共にシグルドは幾度かの木への衝突を経て、大樹に横たわる。


  ***


──場面は代わり…レオナール視点。

 彼は自身の剣を構え、格式高い口上を話す。


レオナール

「さぞ高名な騎士とお見受けする。正々堂々…この、騎士レオナールが、貴公を下す者となろう!!」


「………。」


 その言葉に対し、騎士は無言で大剣を大きく構える。


「それが返答か。ならば、…ゆくぞ?」


 レオナールの汗が滴り落ちると共に、その火蓋は切られた。


──瞬間…レオナールは騎士へ向けて豪撃を振るう。

 そして騎士もそれに呼応するかの如く…二人のつるぎは交差する形で衝突する!


「はぁぁぁーーー!!!!」


 何度も何度も交わる剣音が、あたりの空気を振動させる。二人の剣戟は勢いを速めていき、目に追えない速度へとなる。

 だがその均衡を破ったのは他でも無い、レオナールであった。


 一歩前へ踏み込み、体を反転させ…腰を低く…剣を躱しながらの一撃をお見舞いする!


ブゥンッ!!


 騎士はそれを軽く跳びながら避け、そのまま剣を振りかぶり、叩き斬る!!


ガァァンッッ!!!!


 鍔迫り合いの中…少しずつレオナールの体が下へと押し込まれていく。


(くっ…力では劣る……ならば、更なる力を込めれば良い!!)


 突如、レオナールの体を黒き魔力が覆い、身体能力が劇的に上昇する。


「はぁっ!!!!」


カァンッ!!


 騎士の剣を弾き、レオナールはその勢いのまま反転…騎士の頭へと回し蹴りを決め、

 着地と同時にもう一度、騎士の腹に回し蹴りをお見舞いする!


ドンッ!!!


 騎士は数メートル飛ばされるが、後ろの木を足場にし、跳躍。逆に突進を仕掛けてくる。


 そしてレオナールの顔を掴み、地面へと叩きつけ…そのまま地面を抉りながら遠くへ飛ばす。


ゴンッ!!ゴガガガガッッッ!!!


 ダンッと音を立てて、騎士はすかさず追撃を行うため、レオナールの方へと迷わず直進する。


(クソッ…もろに受けてしまった!!奴は…)


 彼の視線は、正面から突っ込んでくる騎士に留まった。


 騎士はレオナール目掛けて大剣を振り下ろし、体を捻り…回転しながら片手に持ち換え、また振り下ろす。


カンッ…カンッ…


 レオナールは飛ばされた勢いを利用して、片足ずつバックステップを挟み、剣で何とか受け流しながら…ダメージを最小限に抑える。


 やっと勢いが止まり、レオナールは地に足をしっかりつけて体勢を整える…その瞬間っ!


ビュンッ…


 高速で、騎士の投げたであろう大剣が、レオナールの頭部へと飛んでくる!

 

「………っ!?」


カァンッ!!!


 レオナールはその大剣を高く弾き飛ばすが、騎士が空中から両足でレオナールの胸部に強烈な衝撃を与える!


ドォンッッッ!!!!


「………ぐっ!!!」


 腕をクロスさせ、何とか力を逃す。…が、騎士は着地と共に高速で移動、木をもう一度足場代わりとし、レオナールの背中を強く蹴り飛ばす。


「………ぐがっ!!!!」


更に、騎士は先回りをし、思いきり上空へと殴り飛ばす。


(受け……切れない……っ!)


雲を越える程高く飛ばされたレオナールは、騎士の姿を探すが、そこにはもう居ない。


 騎士は先程飛ばされた大剣を、慣性のまま空中で掴み…柄を握り締め、レオナールの上から、下へと斬り伏せる…!


「まだ…まだぁっ!!!!」


 レオナールは体をこれでもかと速く身をひるがえし、剣でその一撃を受け止める。


ヒュンッ……ドーーーーーン!!!!!


 遥か上空から大地へと叩きつけられたレオナールは、大きく吐血をしながら、受け身をとり…地面へともう一度足をつける。


 騎士は軽々と着地し、大剣を再度構え…こちらへ、クイッと指を動かして挑発してくる。


「ガハッ……舐められた……ものだな。…後悔するなよ?」


 吐血をしながら、レオナールはそう言い、2人は再び相対する。


そして、こちらでも戦いは始まろうとしていた。


「俺の相手はテメェだな?槍野朗…」


 そう言葉を発するのは、強敵を前に楽しそうに笑い、長い槍を回しているヴィクトルであった。


「……き……さまも…だろ…う?」


 亡霊であるはずの存在から、思いもよらぬ"声"が聞こえてきた。


「……っ!?……喋れんのかよ……こりゃあ、ただの生み出された魔獣じゃあねぇな…」


 その問いに、亡霊は「少しだけだ」と答え、続けて、「さぁ、始めよう。」と、途切れ途切れの言葉で語りかけてくる。


「言われなくとも分かってるさ、さっさと地獄アッチへ送ってやんよ。」


 両者は槍を構え、あたりは静寂に包まれる。そして、同時に前へと飛び出し、勢いよく交えた!!


キィンッ!カァンッ!


 槍使いの攻撃に合わせ、ヴィクトルは先端を上手く当て続ける。


 しばしの打ち合いが行われた後、敵は槍を回すと同時に、ヴィクトルの得物を巻き込みながら突きを行う。


コキッ……


「うおっと……!」


 ヴィクトルは首を鳴らしながらその突きを避け、敵の槍を左手で掴みながら顔面へ蹴りを入れる。


「まだまだ行くぜっ!!」


 槍使いの後ろへと傾いた体を利用し、槍で足元を払い…体勢を崩させ、思い切り吹っ飛ばす!


「ぶっとべぇぇ!!!」


 追い討ちを掛けるように槍をなげつけ、自らも跳躍…投げた槍を自分で掴み、回しながら叩きつける…


「………がっ!?」


 槍使いは自身の槍を思いっきり地面へと刺して、勢いをできるだけ殺す。大地が激しくひび割れる…

 

「もう一丁っ!!!」


 もう一度ヴィクトルは槍を投げつけ、今度はそれを弾いた槍使いに、拳を一撃入れる。


ドンッ!!!


 槍使いは柄の方で受け止めるが、地面に足が少し埋まる。瞬間、ヴィクトルは力を一気に抜き、地面へ着地…そのまま腹に掌底をかます。


「おらよっ!!!」


 再び槍使いの体が宙に浮き、ヴィクトルは弾かれた槍を掴み、また投げる!!


「……あっ?」


 槍使いは体を思い切り後ろへと傾け、それを回避すると同時に、両手を地面につけ、回転しながらヴィクトルの顔面に回転蹴りを入れる。


「……まじか…っ!?」


 ヴィクトルの体が軽く仰け反る…その一瞬で槍使いはヴィクトルの体を両手で掴み、木へと向かって走り始める…


ドンッドンッドンッ!!


 木々を叩き折りながら勢いは止まらず、ヴィクトルは何度も強い衝撃を受ける…


(クソッ……抜け出せねぇ……だったら!)


 ヴィクトルは頭を大きく振りかぶり、槍使いに強烈な頭突きをお見舞いする。


 一瞬、槍使いの力が弱まった時、ヴィクトルはしゃがむ事でそれを抜け出し、同じやり方で真っ直ぐと走り出す。


「テメェも食らってみろっ!!!」


ドンッドンッドンッドンッ!!!!!


 槍使いは負けじと膝をヴィクトルの腹へと入れ、ヴィクトルと同じ様に頭突きをお見舞いした!


「いっつ……!お返しってか……?…槍はどおしたぁ!槍はぁーー!!!」


「それ……は、私の…セリフ……ダァ!!!」


 二人は槍を忘れ、殴り合いを始める。互いに捨て身の殴り合い……両者は一歩も引かず、笑いを見せながら応酬を止めない!!


「………カハッ!!」


 大きな一撃がヴィクトルの意識を一瞬飛ばす…その隙に槍使いが強烈な真空波をヴィクトルの体に撃ち込む!


ヒュンッ……ドーーンッッ!!!!


 木へと強く叩きつけられる事で…ヴィクトルは吐血するが…その血を拭いながら煙の中から現れた。


 そして互いに槍を掴み、もう一度構えを取る。


「だい……2ラウン…ドといこう……か。」

「……ペッ…当然だろ?」


 笑みを溢す両者とは打って変わり、アルセリオは冷静に分析していた。

 

「さぁ〜〜って、どうすっかなぁ…。」


 アルセリオは弓兵の攻撃を、最小限の力で避けながら、考えにふける。

 

「決定打がねぇんだよなぁ……いや、作るか。」


 何かを思いついたのか、アルセリオは避け方を変え、着実に前へと進む。


 それを見た弓兵は、今まで以上に多く矢を放つ。そしてその矢は複数に何度も分裂し、アルセリオの元へと追尾が始まる。

 

「おっ?そんな事も出来るのか。すげぇな。」


 少々驚きつつも、アルセリオはその攻撃の方向を誘導する事で、互いに相殺させ合う。


「それじゃあ、そろそろ俺の番だな。」


 アルセリオは弓兵へと急接近。懐へ入り込むが、弓兵は後ろへ下がろうとする。


──その瞬間、ワイヤーがくうを裂いた。


カシュッ!!


 空中で逃れようとした弓兵の足を、ワイヤーが的確に絡め取る。


「………ッ!?」


 ワイヤーが絞られ、後方へと引き寄せられた身体が、無様にかたむく。


「させねぇぞ?」


パパパァンッッ!!!


 三発も、同じ場所へと弾丸を当て続け、胸の辺りに穴を開けると、懐から瘴焔を取り出しながら、


「そういや、あの時フィアリアに聞かれたっけな……『それ、何に使うの?』って。」


「……答えだよ、これが。」


 そう、いつもと変わらないトーンで淡々と、アルセリオら瘴焔を穴の中へと入れ込んだ。


「お前も、持ち主もろとも燃え尽きな」


ボォッ……!!


 焔は急激に燃え盛り、弓兵の体を燃やし尽くす。


「しっかり効いてんな。もったいねぇが…まぁ良い。

 本体には気休め程度だろうしな。」


「じゃあな。…もう少し戦いたかっただろうが、ここで終いだ。くたばっとけ、三下。」


 弓兵の体が…炭の様に消えていく。


「……瘴焔もまだ少し残ってんな。有効打にはならねぇだろうが、まぁ弾一発分くらいのパウダー代わりにはなるか。」


「──さて、そろそろマックスんとこに行かなきゃなんねぇな。…せっかくだ、準備も整えてから行こう。」


 アルセリオはそう言って、その場を後にした。

焔の王の残滓が唸りを上げ、アールデンスは大きく揺れる。

そして、その戦場にたったひとり取り残されたマックス。


迫りくる灼熱。

追いかけてくる災厄──。


果たして彼は、この災厄を生き延びることができるのか。


──次回、『俺と災厄の追いかけっこ』

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