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第4話 焼却されし記憶

熱風が、地下の階段を吹き抜けていく。


 灼けたような岩肌が眼前に広がる中、一同はゆっくりと降りていく。階段の壁は赤黒く変色しており、ところどころから湯気のような蒸気が吹き出していた。


 通路を一歩進むごとに、靴底から焼けるような熱が伝わってくる。金属製の装備はすでに熱を帯び、軽く触れただけでやけどしそうなほどだ。


セレス

「んも〜〜、地上より暑いなんて……これじゃあスチームバスじゃな〜い……」


ヴィクトル

「バカ。汗出るだけならまだいいが、これ以上気温が上がると、まともに戦えねぇぞ。」


フィアリア

「……でも、おかしいわね。さっきの層には“熱の源”なんて見当たらなかったの……」


フィアリア

(………っ!…これは……私の空間が揺れた…これで5回目…と言う事は…あと2回ね……)


 足を踏み入れた先に広がっていたのは、焼け焦げた大回廊だった。


 巨大な柱が両脇に立ち並び、天井には炎のレリーフと古代語で刻まれた祈りの文。どこか儀式の場であったような気配が漂っている。


 だが、既にすべては崩れ、歪み、溶けていた。かつて神殿だった場所が、まるで《何か》の咆哮で焼かれたかのように。


マックス

「うぇっ……地面まで熱くなってやがる……まさかこの下に溶岩でも流れてんのか……?」


ドクル

「それは…十分にあり得ます。ここは《焔の王》が暴走した直下層……まだ“記録”が残っているかもしれません。」


 その言葉を受けて、アルセリオは周囲の壁を見渡す。崩れた瓦礫の間に、石板のようなものが半ば埋もれていた。


(彼はそれを掘り出すと、ドクルに手渡す。)


アルセリオ

「どうだ。読めるか?」


ドクル

「……今度はゼーレバラン語と旧ハイグラ語の混合……いや、それだけじゃない。いくつかの文字は完全に独自体系です。

 でも、繰り返される構文パターンがある……これは、おそらく“詩文”。予言や神話によく使われる形式ですね。」


 ドクルは持っていたチョークで、石板の文を紙に写し取りながら、少しずつ読み上げていく。


ーー


《灼熱の碑文》


⸺《焔の王、名を棄てし時、魂は灰となりて封ぜられた》


⸺《七の誓いは、炎の裁きに散りぬ。されど、声は残る》


⸺《我らは嘆願す。“目覚め”来たる前に、最後の鍵を、正しき姿に》


⸺《焔は今も、叫んでいる。我らの罪を、赦すことなく》


ーー


アルセリオ

「七の誓い……目覚め……“最後の鍵”……。今までの印と同じ流れだな。

 けど、鍵が“正しき姿”ってのは気になる……」


フィアリア

「“正しき姿”……つまり、形が変えられる“何か”って事かしら?」


 その時、セレスが柱の裏に隠れていた小さな台座に目を留める。


セレス

「これ、見て……なんだかパズルみたいよぉ?」


(彼女が指差したのは、掌ほどのサイズの立方体だった。

六面すべてが異なる紋様で覆われており、接触すると“カチリ”と音を立てて回転した。)


ーー各面は九つに分割され、それぞれが炎・眼・剣・心臓・爪・尾・羽根といった、今までに見た“七つの印”に対応するような模様となっていた。


アルセリオ

「……なるほど。“正しき姿”に組み直せって訳か。

 これは……いわゆる、“変形式構造体”だな。」


ドクル

「《フォルマ・ヴォルテクス》……古代アウル=ヘウム文明に残された、知的競技具ですね。中でもこれは“封印認証型”かと」


ヴィクトル

「……要するに、解けなきゃ先に進めねぇって事だな。」


アルセリオ

「……たぶん、こっちを先に回して……いや、待て……重ねると…」


(彼は慎重に、赤熱した面のひとつを回転させる。その瞬間――)


 ボンッ!


 立方体の中心部から小規模な爆発音とともに、業火のような蒸気が噴き上がる。


アルセリオ

「っち、熱っ……!」


(彼は反射的に手を引き、袖口が焦げる)


セレス

「あらら〜。そこはダメみたいね〜。でも、気づきはあったんじゃな〜い?」


ドクル

「どうやら、内部構造の“気流”が正しく繋がらないと、安全弁のような熱を吐く仕組みのようです……」


フィアリア

「なるほど、魔術的な導線というより、“熱脈”の通し方が鍵ってわけね……面白い構造だわ」


アルセリオ

「あぁ…くそ。もう一回っ!!」


(アルセリオがもう一度、一から解き始める)


ーーその時、通路の奥から「ヒィィィィィィィ……」という甲高い風鳴りが響いた。


 次の瞬間、壁の側面に空いた小さな裂け目から、白い蒸気が高圧で噴き出す。


ヴィクトル

「おいおい…なんだ今の音。鳥肌が立つぜ……」


レオナール

「“地鳴り”とも違うな。……通気孔?だが、蒸気の温度が高すぎる……」


ドクル

「これは……地熱の調整装置かと。ここの構造自体が“蒸気圧”を利用した機械仕掛けになっている可能性がありますね」


アルセリオ

「つまり…ここの温度が上がりすぎれば、“何か”が作動するってことか……」


ヴィクトル

「このまま気温がさらに上がれば……蒸気だけで、俺たち丸ごと蒸し焼きだな」


フィアリア

「ふふ……ますます面白くなってきたじゃない」


(天井の方で、また風が鳴る。どこかが動いている――この空間そのものが、“何かを試している”ように思えた)


セレス

「わたし、こういうの結構得意よ〜〜。手、貸す?」


アルセリオ

「ああ、助かる。俺じゃ無理そうだ…頼む。」


セレス

「はぁ〜〜い。分かったわ〜〜〜」


 セレスが慎重に回転させていくたびに、パズルは僅かに光を帯びていく。

 やがて、“カチリ”と最終面が揃った瞬間——


ゴゥン……


 部屋全体が震え、台座の背後に隠されていた“扉”が開く。そこから熱風とともに、さらに深い通路が顔を覗かせた。


ドクル

「開いた…… ですね。パズルは正解だったようです」


アルセリオ

「なんか……虚しい気分になるな…」


ヴィクトル

「どんまいだぜ…兄弟。また、次があるさ。」


レオナール

「気張って行こうか。アル。」


アルセリオ

「もう、気張ってんだよ…」


(気を取り直して、アルセリオはこう言う…)


アルセリオ

「王は名を棄て、魂は灰に……。だとしたら、この先にあるのは……“焔の記憶”そのもの、かもしれねぇな」


セレス

「……でも、ここまで来たら、もう後戻りは出来ないわねぇ〜〜」


ヴィクトル

「上等。焔の王でもなんでも、叩き起こしてやろうじゃねぇか」


レオナール

「だが、既に眠っていない可能性もあるな。この熱は……まるで怒りが滲み出てるかのようだ」


 マックスは一同のやりとりを背に、静かに一人、開かれた扉の先を見つめる。


マックス

(……やっぱり、ここだよな……

 ヘリオス……あんたの言ってた“神域に続く道”ってのは……)


 彼の胸元に下げられた、黒ずんだ“鏡の破片”が、かすかに紅く輝いた。


 そして、開かれた回廊の奥からは、新たな鼓動のような音が響き始めていた。


 焼けただれたような空間の中で、“目覚めの兆し”が、少しずつ熱を帯び始めていた――。

焔は再び、天を仰いだ。

眠り続けた王が、その名を思い出す時――

世界の均衡は、ひとつ、軋みを上げる。


炎の王は怒りを超えて、いま、語り始める。


次回、第5話『焔に呼ばれし地上』

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