第3話 混淆の森
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ーー静寂が、そこにはあった。
耳を澄ませば、遠くから水の音。ざぁざぁと流れる滝のような響きが、地下とは思えぬ開放感と違和感を運んでくる。
崩れた通路を抜けた先に、ぽっかりと開けた空間。
そこには、ひとつの“森”が広がっていた。
黒く焦げたような地表と、赤銅色に枯れた巨大な木々。空を見上げれば、青でも闇でもない――淡く薄明るい“何か”が、天井のように揺らめいている。
アルセリオ
「……森、か……」
呆然と立ち尽くす一行の前に広がるのは、誰も知らない、誰も踏み入れたことのない、地底の森。
だが、その静けさの裏には、確かに“熱”があった。
セレス
「この空……まるで、本物の空を見てるみたいねぇ〜……地下なのに…ふふ…」
彼女が微笑んだ、その刹那。
バサッ……
高い崖の上――何の変哲も無いような枯れ木が突如変容し…獣の形を取りながら叫ぶ…
???
「グオオオオォォッ!!」
ヴィクトル
「おっとぉ!お出ましか!よっしゃ、レオナール、いっちょ暴れっか!」
レオナール
「ああ。体が鈍っていないか心配だった所だ……任せておけ。」
崖の上から現れたのは、巨大な翼と鉤爪を持つS級魔獣――“紅蓮牙樹”。
(樹皮と火山岩が融合したような質感を持ち、表面は赤銅色で、ところどころ燃えるように発光しているのが分かる。)
(ゆっくり…葉脈のような模様が走る翼を広げると、どこか“巨大な枯れ葉”の様にも見えた。)
戦闘の緊張が走る中、ひとり後方で、マックスはじっと“森の奥”を見つめていた。
マックス
(……ああ。懐かしいな……神秘…やはり、あんたは…)
彼の目が細められたその先には、森の奥に埋もれかけた、巨大な“焦げ跡”――
焼けた印の痕跡が、まるで呼びかけるように、赤く鈍く光っていた。
***
紅蓮牙樹
「グオオオオォォッ!!」
(紅蓮牙樹は空を羽ばたきながら、こちらの様子を窺っている…)
ヴィクトル
「ちっ…様子見する知能があるとはな。これじゃあ攻撃が出来ねぇな…」
レオナール
「そもそも、攻撃が届いたとて…まともなダメージを与えられるかすら分からん…。」
アルセリオ
「ヴィクトル…同じS級だろ?戦った事、あんじゃねぇのか?」
ヴィクトル
「あるにはある…だが、あん時はまだA級で、他のS級の奴に助けられたんだよ。だから、弱点とか、詳しい事は分からねぇ。」
(ふと、フィアリアが能力で観察しながら話す)
フィアリア
「あの魔獣、背中の部分に逆鱗があるわね。そこを、あの騎士が全力で攻撃すれば、なんとか倒せると思うわよ。」
レオナール
「俺か?…だが、まずそこまで辿り着けるかどうか…。」
ヴィクトル
「いや、足場は…どうにかなるたぁ思う。が、問題はその後の、動きを止める事だな。」
ドクル
「それは僕がなんとかします。少し、"拘束術"には心得があるので。」
セレス
「私はぁ〜騎士君に神聖強化魔術を掛けるわぁ〜〜。魔獣にはかなり有効よぉ〜」
マックス
「それじゃあ!!俺が揺動だな?逃げ足だけは速ぇぜっ!!」
アルセリオ
「ほれ、これを持っておけ。」
(そういって、小さな袋を手渡す)
マックス
「これは…まさか匂い袋か!?おいっ殺す気かよ?俺を…」
アルセリオ
「その方が良い囮になるだろう?ほら、お札で封じてるから、それを取ればスタートだ。」
(マックスは匂い袋の紐を緩め、お札を剥がす)
ーーその瞬間、紅蓮牙樹の眼の色が変わる…
マックス
「くそっ!もし死んだら、化けて出てやるからなぁーー!!!」
(そういって、マックスは全力で逃走する)
ヒュンッ……
紅蓮牙樹がマックス目掛けて、高速で飛来する…その通り道には、大量の炎の種子が撒かれ、爆散する…
ドカーーンッ!!!!
噛みつきや火弾で攻撃してくる。
その牙には、燃焼性の瘴気が漂っていた。
ーーマックスはそれを、森の地形を利用して巧みに避ける。
アルセリオ
「フィアリア。この爆発跡に残る瘴炎…集めて保持出来るか?」
フィアリア
「出来るけど…何に使うつもり?」
アルセリオ
「それは内緒だ。まぁ…いづれ分かる。」
フィアリア
「何となく分かっちゃった気がするけど、楽しみにしておくわ。」
ヴィクトル
「レオナール…。奴がもう一度空へ高く飛び上がりやがったら、そのタイミングで崖上から思いっきり跳べ。」
レオナール
「分かった。なら、俺は崖へ登って待機しておく。合図は任せたぞ。」
レオナールはタタッっと崖を登ると、紅蓮牙樹を見据えていつでも全力で跳べるよう…構えておく…
ドクル
「……よし。僕も準備が整いました。いつでも行けます。」
(そう言うドクルの足元には、見慣れない古代の術陣が淡く光っている)
フィアリア
(あの子…良くあんなものまで知っているわね。凄く興味深いわ…)
セレス
「私もぉ〜準備おっけいよぉ〜〜」
(アルセリオは思いっきり息を吸うやいなや、大声でマックスに合図をする)
アルセリオ
「マーーックス!!!思いっきり、匂い袋を上に投げろっ!!!!」
かなり遠くへ離れたマックスの耳に、小さく合図が聞こえる…
マックス
「上へ投げろ…だな。分かったぜ!!」
マックスは強く地面を蹴り、反転しながら勢いを利用し、空へ思いっきりぶん投げる。
マックス
「行ってきやがれっ!!腐れモンスター!!!」
紅蓮牙樹はその袋へ引き寄せられる様に、上空へ一気に飛び上がる!
ヴィクトル
「今だ!!!レオナール!!!!」
ドクルとセレスが、詠唱を開始する
レオナール
「……了解した。」
レオナールは足に魔人種由来の膨大な力を込め、崖から大きく跳躍する。
ドンッ!!!
レオナールの前に複数の小さな大樹が現れ…次々と膨張を始める。
レオナール
「………なるほど。そう言う事か。」
その大樹を"足場"とし、一気に駆け上がる。そして、紅蓮牙樹との距離がすぐ目の前まで近づく…
紅蓮牙樹
「………っ!?」
紅蓮牙樹が身を翻そうとしたその瞬間っ…
ドクル
「《界影の縛鎖》……起動……構成開始。」
彼の掌から、影が溶けるように地へ染み出す。そこに――
《ᛗ(マンナズ)》《ᛃ(ユル)》《ᛞ(ダガズ)》《ᚾ(ナウディズ)》のルーンが、“影そのもの”に刻まれる。
それはまるで、深淵から這い出た亡者の手のように、紅蓮牙樹の四肢をつかみ――
動きを、霊核ごと「止めた」。
ヴィクトル
「……あの影、ただの魔力じゃねぇ。……“命令”してやがる……」
フィアリア
(やっぱり……この術、ただの模倣じゃない。
影魔術と、旧王朝のルノミア理論の独自統合……ドクル、あんた……)
レオナール
「これは……狙いやすいな。………なるほど、逆鱗とはアレのことか…」
レオナールは確かに紅蓮牙樹の逆鱗を見つけ、そこへ向けて剣を高らかに上げる。
セレス
「行くわよ〜〜。《祝福》っ!」
レオナールの体を微弱な光が覆う…けれど確かに、彼の力は数倍にも膨れ上がる感覚がした。
ヴィクトル
「オマケだ…『 』ッ!!」
フィアリア
(今の…魔術的な流れが一切無かった…)
ーー剣がこれ以上ない程に神々しく煌る…
レオナール
「……?まぁ、良く分からんが、殺れという事だな。………行くぞ!」
レオナールは身体中の力を一点に集め、剣の柄を軋む程強く握り、狙いを定め、振りかぶる!!!
ブゥンッ!!!!!!
偽りの空が揺れ、放たれた剣撃は…紅蓮牙樹の体を二つに分かつ
紅蓮牙樹
「グガァァァァアア!!!!」
紅蓮牙樹の瞳の光が消え、そのまま地面へと落下していく。
ーー炎の残滓だけが、ぱち、ぱち、と森を照らした。
タタッ…
レオナール
「ふん…。呆気なかったな。」
アルセリオ
「まぁ、これだけいりゃあな。」
(向こうから無傷のまま、マックスが走って帰ってくる)
マックス
「ふぅ〜〜…死ぬかと思ったぜっ!!」
ヴィクトル
「何であれで無傷なんだよ……逃げ足速いっつったって限度があんだろ…。」
ゴゴゴ……
崖の下側に大きな扉が現れ、下への階段が続いていた。
アルセリオは紅蓮牙樹の魔石を抜き取り、袋に包んで懐に入れる…
セレス
「それじゃあ…行きましょう〜〜」
まだ、下から熱風が吹き上がっている。
――“本番”は、これからだ。
熱が、語る。
忘れられた王の声、焦げた祈り、燃え残る夢。
灼けた空間で、過去が息を吹き返す時――
彼らは知る。“焔”がまだ、赦していなかったことを。
次回、第4話『焼却されし記憶』




