一年前期
一年前期。
事故や怪我もなく、淡々とこなして行った。
朝陽とスカイとエリオに図書館バイトを始めたことを知らせたら、朝陽は凄く喜んでた。尻尾がブンブンして蜂みたいだった。スカイとエリオはびっくりしてたけど、分かる、なるほどね、と言っていた。なにを納得してたんだろう。
時々、図書館に会いに来てくれたりしてとても楽しい。試験時期に朝陽とスカイが図書館で昼寝をしてしまって、怒れなくて、先輩に起こしてもらったりもしたな。こんな混んでる時に何事かって、普段怒らない先輩が怒ると凄く怖いんだな……
その先輩のお陰で無事に試験を終えました。本当に感謝しています。ありがとうございます。
朝陽はこの先輩に足向けて寝れないって言って崇拝してた。怖い。
図書館の先輩や職員さん達は皆んな優しい人達で後期の選択授業を相談したり、色々な先生について教えてくれた。噂好きの先輩もいて面白かった。
他にも院生の先輩が居て、とても面白い人。いつも色々な話をしてくれる。
その院生の先輩の名前は有栖川澪先輩。
ある日、先輩と一緒のシフトの時にいつも通り雑談をしながら本を返してた。
「雨宮くん、リス教授の本戻しておいてくれる?」
「リス教授?」
「あー、サップリング教授だよ。ウィンストン・サップリング教授。知らない?」
「はい、すみません」
「いや、大丈夫だよ。……私、ゼミ生なんだ。」
「どんな教授なんですか?」
「えっとね、一言で言えないんだけど……」
その教授について色々教えてもらった。
ゼミでは鬼の様に鍛えてもらった、とか。徹夜した資料を同じ熱量で評価してくれた、とか。
「あの人、本気でやる人にはちゃんと応えてくれるんだよ」
この言葉が凄く印象的だった。
だから、後期にサップリング教授の必修科目「多文化共生と同和人権論」を入れた。どんな人なんだろう。有栖川先輩はリス教授って言ってるけど、どういうことなんだろう。
後期が凄く楽しみになったし、有栖川先輩はすごく喜んでた。
「教授に律くんのこと話しても良い?」
「特に話すこと無いと思いますけど……どうぞ」
「あと、子ども食堂の事もいいかな」
「はあ、いいですけど……なんでですか?」
「多分ね、教授、好きだと思う。」
子供が?子ども食堂が?ボランティア精神に溢れた人なのかな?
「そうですか……」
子ども食堂も相変わらす通っていて、自分自身のリフレッシュになったり、子供たちが笑顔でいてくれるから、また行こうって力貰ってる。恩返しがしたい。ずっと悩んでる。