入学式
地球を異星人と共有して何百年も経った。
右を見れば灰色に光る肌をした黒目がちな女性が歩いていくし、左を見れば長い髪が蛍光ピンクに光る男性が立っている。
目の前の友人は、薄ベージュ色のふわふわな垂れた耳とこれまたふわふわな長い尻尾を振りながら大きな身体を縮こませながら入学式の受付をしている。
パンフレットを受け取るのを見届けて指定された席に向かう。
僕の前の席の人は背が大きいな。肌がひび割れている。多分岩肌なんだろう。
ステージに司会者が立ってマイクを持つ。息を呑むような静けさが広がり、入学式が始まった。
今日は入学式。
僕が通うのは国立星清大学教育学部。僕の周りに座っている人たちは先生を目指してる。皆んな賢そうで僕はやって行けるんだろうか。
「おーい、大丈夫か、律?」
「わあ」
「もう移動だ。寝てたか」
「寝てないですよ、起きてます。」
態々迎えに来てくれた友人、朝陽 颯真。高校時代からの付き合いで、元気な獣人系異星人と地球人のハーフだ。地球で言うゴールデンレトリバーを祖先に持っているらしくふわふわで耳と尻尾が憎たらしい。地球人の顔立ちをしていてハーフということがわかりやすい。大きな身体で話す時は耳を傾けて屈んでくれるような人だ。彼も同じ学部で先生を目指してる。緊張はこのずっと笑顔の顔でほぐれていく。
「教室に行こうぜ」
「そうですね、お待たせしてすみません、急ぎましょう」
講堂を出てまた違う講堂に向かう。朝陽は歩いてるけど僕は小走りだ。教室は三階。息がギリギリ上がらない距離だ。
黒板に貼られた学籍番号順に座る。右廊下側の前から2番目。今回は、僕の前にも席があるんだな。
チャイムが鳴って教員が複数入ってきた。一番渋い男性が前に進みマイクを持った。
「こんにちは、皆さん。入学おめでとうございます。式が終わってホッとしたでしょう。今からは学部オリエンテーションです。」
話すたびに髪が輝く。白色だ。光系異星人かな。
「ではまず私の紹介をします。私は学年主任のリュシアン・ヴェルニエです。専門は異種共生教育論をしていますが一般教養や進路相談もしています。」
黒板の上から白い布が降りてきて教室が暗くなった。プロジェクターが付いて、学部オリエンテーションが始まった。
しばらく説明があり、終わると辺りは少し明るくなってコースごとの先生の紹介に入った。
一人前へ進みマイクを持って話し始めた。透き通るような肌と虹色に輝く瞳、淡い光沢のあるシルバーやプラチナ色の髪、スリムで背が高く、光系異星人らしい整った顔立ちだ。
「皆さん初めまして。入学おめでとうございます。私はオリバー・ノヴァ。 小学校教員養成コース、A組の担任教員です。一年生の基礎授業の基礎共通語をしています。専門は通語応用表現、国語教員育成をしています。二年間よろしくお願いします。」
澄んだ声をしていて良く通り聞き取りやすい。
すごいな、夢が話してるみたいだ。こんな綺麗な人が担任なのか、毎回緊張しそうだな。
マイクを横に居る女性に渡した。
「初めまして、副担任の佐々木百合子です。私は教育実習や事前授業などを担当してます。皆さんと授業をするのはまだ先ですが、困った事や分からない事があったら遠慮なく相談してくださいね、よろしくお願いします。」
落ち着いた雰囲気で、品があって控えめだけど温かみのある笑顔が素敵な地球人女性だ。ベテランと呼ばれる年齢のように感じられる。
マイクが次の教員に渡っていった。静まり返った教室に淡々と説明する声が通っていく。
最後に学年主任の手に渡った。
「それでは先生の紹介はここまでです。明日は授業登録や学内施設の利用についての案内を行います。集まる教室はコースごとになりますので一度確認してくださいね。それと今日配布された仮学生証と資料を一緒に持ってきてくださいね。では以上で終わります。」
先ほどまでの静けさを覆すようにガヤガヤと話し声が響いていく。少し伸びをして身体を解す。指先が冷えていて思ったよりも緊張していたみたいだ。
席を立ち上がり朝陽を探す。大きくて白いから目立つな。手をブンブンと振っている。
「入学式終わったな〜帰ろうぜ」
「はい」
これから四年間。大学生活が始まる。