夕暮れの教室 続き
中学2年の秋、文化祭の夜にユウキがミホに思いを告げた。あのキャンプファイヤーの炎が揺れる中、ミホの曖昧な返事と優しい笑顔が、ユウキの心に小さな波を立てた。あれから季節は巡り、冬の足音が近づいてくる。クラスメイトの喧騒、期末テストのプレッシャー、そしてクリスマスのきらめきが、ユウキとミホの日常を彩る。二人はまだ「恋人」と呼ぶには遠いかもしれない。でも、図書室でのささやかな時間や、笑い合う瞬間が、二人だけの特別な何かをつむいでいた。これは、ユウキとミホが冬の光の中で見つけた、温かな一歩の物語。
ユウキがミホに気持ちを伝えた文化祭の夜から、二人の距離は少しずつ近づいた。キャンプファイヤーの後、ミホはユウキに「これからも一緒に本読んだり、話したりしようね」と言った。その言葉が、ユウキの心に小さな希望の灯をともした。告白の返事は曖昧だったかもしれないが、ミホの笑顔はユウキにとって「これから」を約束するものだった。
中学2年の冬、クラスは期末テストとクリスマスムードでざわついていた。ユウキはミホと放課後に図書室で勉強する時間を増やした。ミホは数学が得意で、ユウキに問題の解き方を丁寧に教えてくれた。「ほら、ここで式をこう変えるんだよ」とミホがノートに書く姿に、ユウキはつい見とれてしまう。「ユウキ君、聞いてる?」とミホが笑うと、ユウキは「う、うん!」と慌てて目をそらした。
そんなある日、クラスのムードメーカー、タケシがユウキをからかい始めた。「お前、ミホとめっちゃ仲良いじゃん! もう付き合ってんの?」ユウキは「バカ、違うって!」と否定したが、顔は真っ赤。タケシの声は大きく、近くにいたミホにも聞こえてしまった。ミホは少し恥ずかしそうに微笑み、「タケシ君、うるさいよ」と軽くたしなめた。その一瞬、ユウキはミホの優しさに胸が熱くなった。
冬休み前、クラスの担任・佐藤先生が「クリスマス会の企画を立てるぞ!」と提案した。ユウキとミホは再び同じグループになり、飾り付けや出し物の準備を任された。準備中、ミホが「ユウキ君、クリスマスってどんなのが好き?」と聞いてきた。ユウキは「え、なんか…イルミネーションとか? ミホは?」と返すと、ミホは「雪が降る夜に、暖かい部屋で本読むのが好き」と答えた。その言葉に、ユウキはミホらしいなとほほ笑んだ。
クリスマス会当日、教室はキラキラの飾りと笑顔で溢れていた。ユウキはミホに小さなプレゼントを渡す決心をしていた。図書室で借りたファンタジー小説に、ミホが好きそうな栞を挟んだものだ。会の最中、ユウキはミホを廊下に呼び出した。「あのさ、ミホ…これ、受け取ってくれる?」と差し出すと、ミホは驚いた顔で「え、ユウキ君から?」と言い、丁寧に包みを開けた。「わあ、栞かわいい! ありがとう、大切にするね」とミホが笑う。その笑顔に、ユウキの緊張が溶けた。
「ユウキ君、私も…」ミホが小さな袋を取り出した。中には手編みのミトンと、ミホが書いた短い手紙が入っていた。「ユウキ君、いつも一緒にいてくれてありがとう。来年も、たくさん話そうね」。手紙の文字は丁寧で、ミホの気持ちが込められているようだった。ユウキは「マジで…ありがとう」としか言えず、胸が熱くなった。
クリスマス会の後、校庭に雪が降り始めた。ユウキとミホは並んで校舎の軒下に立ち、雪を見上げた。「ミホ、俺…これからもずっと一緒にいたい」とユウキが言うと、ミホは「うん、私も」と小さくうなずいた。二人の吐息が白く混ざり合い、雪の夜に溶けた。
春になれば3年生になり、進路や受験が待っている。それでもユウキは、ミホと過ごす時間があればどんな未来も怖くない気がした。雪が静かに積もる中、ユウキはミホの手をそっと握った。ミホも、そっと握り返してくれた。
雪の降るクリスマスの夜、ユウキとミホは互いの手を握り、未来への小さな約束を交わした。春になれば新しい学年が始まり、受験や進路という現実が二人を待っている。それでも、ミホの笑顔と手編みのミトンの温もりが、ユウキに勇気をくれた。ミホにとっても、ユウキの不器用な優しさと栞に込めた思いが、心のどこかをそっと照らしていたのかもしれない。二人の物語はまだ始まったばかり。雪が解け、桜が咲くころ、どんなページが開かれるのか――それは、ユウキとミホだけが知る未来だ。