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短編

迫害聖女は幸せになりました

作者: 猫宮蒼

 マトモな登場人物を期待してはいけない。



 それは本当に突然だった。

 異世界に召喚されて、聖女として世界を救わねばならなくなったのである。


 いや、ラノベにしたってもっと導入ちゃんとしてるぞ、とか思ったくらいだけど、逆に言えばそれだけいっぱいその手の作品があるから導入が雑だろうとも大体把握できてしまうという恐ろしさ……悲しさ? まぁいいや。


 乙女ゲーム展開でイケメンにちやほやされつつ聖女として頑張るパターンだったなら、私ももうちょっとときめいたかもしれないけれど。


 乙女ゲーム展開ではなかった。


 どっちかっていうと冷遇とか迫害とかそっち方面だった。ダークファンタジーかつラストは希望もなんもねぇ、みたいな気配がぷんぷんしている。


 大体世界を救ってもらおうっていう聖女に対してそういう態度はどうなの? と思われるけれど、人間って異端者を排除しがちだからね。される側からすればたまったものではないけれど。

 この世界の人間は、私のようないかにもザ・日本人みたいなカラーじゃなかった。アニメの中なら違和感ゼロってくらいキンキラしたカラーである。

 一番地味な色合いの人でも明るめの茶髪。

 黒髪黒目とかどこ見てもいやしねぇ。あと皆顔立ちが自分の世界で言うところの西欧系。

 日本人とか平たい顔族すぎてまー好き勝手言われてますわ。


 正直そんな態度の悪い連中に聖女として力なんて貸したくもないってのが本音なんだけどさ。

 え、だって自分に親切にしてくれた人が困ってるなら助けてあげよう、って思うかもだけど。

 学校や職場で自分に嫌がらせしてくるような相手のために奉仕活動してあげよう、って思う奴いる? いないと思うんだ。むしろ死ねやクソ野郎が、とか内心で罵詈雑言とともに呪うくらいするのが普通では。


 でも異世界だからさ。完全にアウェーなのよ。

 わかる? 下手な事したら世界中の人間全部が敵に回ってもおかしくないの。

 内心で自分の住んでる世界でもあるまいしよそ様に多大な迷惑かけないと存続できないような世界なんざとっとと滅んじまえよ、とか思っても間違っても口に出したらその時点で自分の生命の危機なの。


 ただ、この手の話ってほら、聖女を異世界から召喚したらさ、戻す方法がわからないとかありがちじゃん? むしろそういうパターンのが多いまであるじゃん?


 でも一応戻る方法がちゃんとあるらしいのよ。

 聖女の意思で残る場合もあったみたいだけど。なんて物好きな……


 と思ったら、残ったかつての聖女の時は、どうやらこの世界の人たちから丁重に持て成されてきちんとした人間関係が構築されてて、迫害なんてされてないっぽかったのよね。ちなみにこの国じゃない別の国でのお話らしい。

 まぁ同じ世界でも国が違えば常識や価値観が違ってもおかしかないからね。その時の聖女様は当たりだったんだろう。私? ハズレですねぇ。



 ともあれ、この世界を覆わんとしている瘴気とやらを浄化する必要があるんだけど、それは聖女がいないといけないらしい。

 聖女が直接浄化するのかと思いきや。

 聖女は浄化装置の鍵であるとの事。

 鍵って言葉がなんか不穏だなと思いつつももう少し詳しく聞けば、瘴気を浄化する力をもった女神がおわす座で、眠りについた女神を起こすための役割を持つのが聖女なのだとか。

 で、起きたら女神さまが元の世界に帰してくれるらしい。


 まぁ、こいつら召喚はできても戻すのはできそうな気がしないし、神様が帰してくれるっていうならそっちのがまだ信用はできるかな……


 とはいえ。

 その女神さまが眠っている土地は、険しい山の上。それもこの国から遠い、というか世界の中心にも等しい場所らしく。どの国で召喚されても辛く苦しく険しい旅になるのだとか。


 聖女一人で行け、とやったとして道中は危険が一杯だ。魔物だけじゃない、人間にだって悪党はいくらでもいる。聖女一人に任せて途中で死なれた場合、新たな聖女を召喚するにしても、すぐにはできないのだとか。


 呼び出すための魔力が溜まらなければ無理との事。


 それで、世界各国がそれぞれの国でコツコツと魔力を集めて溜め込んでるんだけど。

 今回はちょうどこの国が聖女召喚できるだけの魔力が溜まったのだとか。

 これ失敗したら次に多く魔力を集めた国が呼び出す事になるかもしれないけど、そっちはまだもうちょっと魔力が足りていないのだとか。


 だからこそ聖女を護衛しつつ神の座まで行くのだとか。



 まぁね?

 道中私にとっては険しいものだったよ。

 護衛の連中ノンデリカシーなクソ野郎ばっかだったし。顔が良くても性格とか人間性とか心根がよろしくないとだめね。根は悪い奴じゃないんです、みたいな事言われてもさ、茎も葉っぱも花も実も全部だめだったら根っこだけ良くてもさぁ、って話よ。まぁこいつらは根っこから駄目っぽいけど。


 大体我現代人だぞ?

 こんな移動は基本徒歩か馬車、みたいな中世か? みたいな暮らししてなかった現代っ子だぞ?

 車の運転はまだ年齢的に免許とれないから無理でも、バスや地下鉄だとかの交通機関を駆使して移動する現代っ子だぞ?

 徒歩一時間とかかったるくて無理だし、そもそもそんな長時間歩くことも滅多にない現代っ子だぞ?


 ひ弱だのなんだの言ってくれたけど、うるせぇよ異世界原人どもとしか思わんよね。


 確かに私は典型的な日本人体型だし外見もそうだけど。

 もう見た目全体を貶してこなくても良いと思わん?

 そりゃあプロポーションだってモデルみたいにとはいかないよ。だがしかし東洋の神秘舐めんな。

 こっちの女性は多分西欧とほぼ同じ感じだろうから、若いうちはそりゃあ綺麗だろうけど年と共に下手したらドンと変わるぞ。若いうちは妖精のようとか言われても中年くらいになったら恰幅の良い肝っ玉母ちゃんみたいになる可能性がとても高いぞ。まぁ年をとっても若く美しい感じを保ってる人もいるけどもさ。


 自分に対して友好的でもなんでもない選民思想バリバリのノンデリ野郎どもとの旅路とか、正直いって苦痛である。どれくらいで目的地に着くんだろうね。うんざりである。



 一日の間に何度心の中でこいつら死んでくれねぇかなぁとか思ったか数える事すら無駄に思えてやんなかったけど、たぶん千回くらいは思ってる。

 そう言い張れる程度にはこいつらと共に旅をしてきたわけだ。


 そして、いよいよ女神が眠る山の神殿へたどり着いたのである。

 長かった。何度事故に見せかけてこいつら始末しようかなとか考えた事か……

 異世界の人間って私の世界の人間じゃないからこいつら殺しても殺人罪にはならないんじゃないかな、って思い始めてたよね。こっちの法とか知らんけど。でも私の世界の法は異世界人が人間としてカウントされてるかは不明だもの。

 って考える程度には毎日スクスク殺意が育っていたわけだ。


 それなりに長い旅をしてきたけれど。それでも、体力がついたとは思えないくらいに私は疲労困憊で。

 ぜぇはぁしながらも、女神が眠っているらしき座までやって来たのである。

 そこで聖女が祈れば、女神が目覚めて世界の瘴気を浄化してくれるのだとか。今更だけどなんでこの世界の人間が祈るんじゃ駄目なん? って思ったんだけど、まぁ波長とかそういうアレなのかもしれない。知らん。

 ぶっちゃけ常に起きてろよとか思うのだけど、この女神さまは瘴気を浄化する力と、あとは聖女を帰すくらいの能力しか持っていないらしい。この世界には複数の神様がいるけど、人と関わる事がある神様は限られているのだとか。この女神さまもその中の一柱だ。


 浄化が終わり聖女を帰せば、次の役目までの間に眠り力を蓄えるのだとか。


 まぁ、帰れるならね、うん。まぁいいよ。うん。



 というわけで祈って女神さまを起こしたわけだ。


 そして女神さまは起き抜け一発奇跡のように世界中に蔓延していた瘴気を打ち払ってくださった。光が世界を満たして、あっという間だった。

 さて、私の護衛についていたくそ野郎どもはこれで凱旋したら晴れて英雄扱いなわけだ。何事もなければ、だけど。


 だがしかし、私は今までの仕打ちを忘れていない。

 こっちの意思を無視した誘拐。そして労働の強制。モラハラパワハラに該当する態度や言葉。

 そんな事を平然とできるクズが国を、世界を救った英雄扱いとかさ、納得いかないよね。

 護衛そのものが不本意だったかもしれなくても、でもこの世界に住んでるお前らの問題であってそこに巻き込んだ相手に対して敬意はあって然るべきじゃない?


 だからこそ私は女神さまに確認したのである。


 帰すのも残るのもどっちでも構わないのか、と。

 女神さまは大層美しい笑みを浮かべて是と言った。

 異世界よりの春告げ鳥よ、貴方の望みを叶えましょうとも。


 だからこそ、私は言った。


「では、ユリエは残ります。そして私は帰ります」


 その言葉に不思議そうに眉を寄せたのは、私とともにやってきた護衛のくそ野郎どもだけだ。


 この世界に召喚された時、私の名前を勿論聞かれた。まぁいつもは聖女としか呼ばなかったから名前なんて教えてもその名で呼ぶ奴はいなかったけど。

 でも、名前を使って魂を縛る、とかいう話はいくらでもある。そういった、魂を縛り付けて使役するみたいな事がないわけじゃない。

 だからこそ、私は自分の本当の名前なんて名乗らなかった。


 ユリエは私の名前ではない。


 本当なら私とは関わる事のないはずの存在だった。

 一切関係のないままでいたかった。けれどそれは無理で。どうしても無理で。

 縁を切りたくても切れなくて。このままだとばかり思っていた。


 けれど。


 縁を切る機会が訪れた。


 今までの聖女に対するお世辞にも良いとはいえない態度も言葉も。

 全て。


 全て許しましょう。


 ユリエと縁を切れるのであれば。


 女神さまがそれを断るのであれば、私は最後に、帰る直前にせめて一発くそ野郎どもにいれていくつもりだったけれど。


 女神さまは聖女としての務めを果たした私に対して、その願いを叶えると言葉にしたために。

 本当に実行してくれたのだ。



 ユリエをこの世界に残して、私を元の世界に帰してくれた。


 もしかしたら、女神さまは危機感がなかったのかもしれない。

 それとも、どうにかできると思ったのかもしれない。

 でも、帰る意思のない相手を強制的に帰すことができるかはわからない。

 そして、もし意思のない相手は帰すことができないのであれば。


 ユリエはきっと帰ってこない。


 元の世界。私の故郷。私の家。私の部屋。

 そこに戻ってきて、そっと鏡を見る。

 酷い、顔をしていた。


 けれど。


 ユリエはもういない。


 だから。


 きっとこれからは大丈夫。


 日時を確認すれば召喚された時と変わっていない。身体の方はどうだろう、と思ったけれどそれも恐らく召喚された時と同じままだろう。女神さまのアフターサービスは護衛してたくそ野郎と違って行き届いていた。


 だから私は。

 まずはシャワーを浴びてすっきり爽快な気分になったところで。

 少々雑に髪を乾かすとそのままベッドに潜り込んでまずは睡眠を貪ったのであった。



 ――ユリエという存在と直接の面識はない。

 いや、この言い方だと少し語弊がある。

 生前のユリエの事は知らない、が正しい。


 聖女として召喚された少女にとって、ユリエというのはぶっちゃけていうなら悪霊である。

 恐らくは明治か大正あたりの人らしいのだが、詳しくは知らない。

 少女の家は分家筋ではあるものの、一応寺とか神社とかそっち系統のそれなりに由緒正しいところだ。分家も分家すぎて詳しい話はほとんど知らないのだが。


 歴史を遡れば江戸かそのちょっと手前あたりくらいからの家系図はあるらしい。

 本物かどうかは知らん。まぁ平安あたりから続いてる由緒正しい~とかよりはまだ信憑性がありそうな気がしなくもない。


 ただ、令和の今となっては、そんな昔の話など知らんし、という気持ちでしかないし、ましてや悪霊とかオカルトだって廃れつつあって今更感が強い。

 ユリエ以外の幽霊なんて見たこともない少女からすれば、ユリエの存在だって眉唾物だったのだ。


 自分が憑りつかれるまでは。



 明治か大正か知らないが、その頃に生きていたであろうユリエという女は、どうやら不思議な力を持っていたらしかった。姉妹で巫女をしていたそうだ。巫女さんならちょっと不思議な力があっても、神様のご加護かな? とかそのくらいの時代なら思ったのもあったのかもしれない。まだその頃なら今のようにオカルト全否定とまではいかなかっただろうし。


 ただ、その不思議な力を恐れたりした者も当然いたらしく、そしてその時代はまだ男尊女卑が根付いていた。そうでなくともその頃の日本など島国としての閉鎖的な面が、駄目な意味での田舎と同じくで、異端というものは排除されがちでもあった。


 人にとってユリエの不思議な力が上手い方に作用しているうちはよかったかもしれないが、それ以外の――たとえば伝染病のようなものだとか、天候不順による作物の不足だとか、人の力ではどうしようもないものであっても、ユリエの不思議パワーでどうにかなるのでは、と考えた者も出たらしい。


 お年寄りが過剰にコンピューターに信頼を寄せるかのような無根拠での信頼は、当然と言えば当然だがまぁ裏切られる。

 大体ユリエの不思議な力とやらがどういったものかは知らないが、それでも奇跡を簡単に起こせるようなものではなかったのだけは確かだ。

 だというのに、自然に立ち向かうような真似をさせたって上手くいくはずがない。


 結果としてユリエはペテン師だ詐欺師だと罵られ、今までは巫女であったのもあって多少なりとも敬われていたが一転罪人の扱いであった、らしい。


 今までさんざん持ち上げておいて、都合が悪くなれば手のひらを返し裏切る。

 周囲の人間たちの変化を、ユリエがどう思ったかは知らない。少なくとも良しとは思わなかっただろう。


 今までは神の子のような扱いが、忌み子となったのだ。


 周囲の他人だけならともかく、身内までもが敵に回りユリエは恐らく殺された……のだと思われる。

 そして死後、悪霊となって蘇った。

 正直分家も分家すぎてほぼ名ばかりの状態である少女の家にはそこら辺の情報はあまり伝わっていないし、少女がユリエに憑りつかれるまではそもそもユリエの存在も知らなかった。


 ユリエという悪霊は。

 女に憑りつく。

 そしてじわじわと生命力を奪う。

 そして周囲の人間も不幸に陥れる、らしい。


 憑りつかれた者の生気がすっかり奪われた後は衰弱死し、そうすると次のターゲットに憑りつく。


 本家の人間は、女性が短命らしいとは聞いていた。

 けれどそういう話があったとは少女は知らなかったのだ。

 自分が憑りつかれるまでは。


 だが、本家の女がほとんど死んで、本家に近い分家に憑りついて、そうして若い女が死んでいく。

 ユリエが憑りつくのはあくまでも若い女であり、年がいっていても三十代までだ。それ以上の――四十代からそれ以降の女性には憑りつく事がなかった。よそから嫁にきた女であればまだしも、最初からこちら側とみなされた者ならばいくら血が薄れている分家の端の端のそのまた端っこに位置していそうな相手であっても憑りつくのだ、と知ったのは、少女が憑りつかれたからこそだ。


 憑りつかれる前までの少女は活発で元気いっぱい走り回ったりするのも苦じゃないアウトドア大好き人間だったが、憑りつかれた後は違った。

 とにかく重いのだ。

 肩だけで済めばいいが、頭痛も酷い。常にぐわんぐわんと揺れているような状態で、未成年ながらにお酒を飲んだあとの二日酔いとはもしかしたらこういうものなのかもしれないな、と思うもので。

 寝ても疲れなんてとれないし、お風呂に入ってもさっぱりした気持ちにもならない。

 常に頭痛があるせいで集中力も続かないし、中途半端に眠気が残っているような状態のせいで、まず学校の成績がガクンと落ちた。

 勉強をしようにも集中できないし、ちょっとあれこれ難しいことを考えようとしたら頭痛がとても邪魔。しまいには意識を保つのだけで精一杯。


 少女はそのせいで、本来行きたかった高校を断念し通信制に変える事になってしまった。

 たまにぐっすり眠れそうなときもあったが、そういう時は決まって悪夢を見る。そして目覚めは最悪。


 今までは元気溌剌なそこそこ愛嬌のある少女は、寝不足と頭痛肩こりありとあらゆる不調のせいで、一気に老け込んだようにも思えた。目の下にはマッキー黒で塗りたくったのかと疑いたくなるくらいのクマが常駐していた。


 酷い時は幻聴だって聞こえていたし、よくまぁ生きていたなと思う。


 もう少しユリエと一緒にいたなら間違いなく少女の命は散っていた。


 周囲の人間が不幸になる、というのは思えば少女の周囲ではそこまでではなかった。

 少女の変貌っぷりを悪くいうような相手がいたのであれば、そいつらにユリエの呪いか天誅かは知らないが、まぁそれなりに不幸な何かが訪れていた事だろう。

 そういう意味では少女は虐められたりしなかっただけマシなのかもしれない。


 仮に他者からのいじめがあったとしても、果たしてそちらに意識を向ける事ができたかは定かではない。

 気休め程度でしかなかったがロキソニンを摂取してどうにか痛みは誤魔化してきたけれど。

 本当に限界だったのだ。


 他人の悪口とかにまで意識を向ける余裕なんてこれっぽっちもなかった。


 明らか不調ですと言わんばかりの少女に対してあえて嫌がらせをしてくるようなのがいなかったのは、救いだったのだろう。少女にとっても、相手にとっても。

 もし嫌がらせをしてきたのであれば、ユリエによってどんな目に遭っていた事か。


 健全な精神が維持できないし身体も疲れ果ててボロボロだし、いっそ死ねば楽になれるんじゃないか、と思った事も一度や二度じゃない。

 そんな中で、聖女として異世界に召喚されたのである。


 異世界のくそ野郎どもにユリエは特に何もしていないようではあった。とはいえそれはきっと、自分が今までいた世界と異なるせいで力を使うのもうまくできなかったのだろう。

 異世界にいた時、体調不良は少しだけマシだったのだ。だからそう思ったのもある。


 そうでなかったなら。

 ただでさえマトモな精神を維持するのも大変なのにそこであいつらの相手とかしてたら即発狂して暴れていたはずだ。初手顔面グーパンくらいはしていたかもしれなかったのだ。八つ当たりパンチを食らわせていた可能性が大だった。


 けれど、久々にいつもよりはマシな体調だったから。

 だからまぁ、聖女としての務めだか知らんが付き合ってやっていたというのもある。

 こちとらユリエのせいであとちょっとで命を捨てるかもしれなかったのだから、異世界で身寄りもない状態ともなれば失うものなど命くらいなまさに無敵の人なので。

 いざとなったら刺し違えてでも一番むかつくやつだけは殺そ、とか思っていたりもしたのだ。


 絶不調だったせいで精神がとても荒んでいた。


 自分が幸せな時は周囲のちょっとしたことなど割と大らかに受け流せる人が大半だと思うが、逆に体調不良で心細くなっていたり、先が見えない不安だとかで精神的にもストレスマッハだと、いつもは気にしないようなどうでもいい部分でカリカリする事もあるだろう。少女の精神は常にそんな状態で余裕なんてなかったのだ。

 ヒステリックに叫んだり喚いたりしないだけの理性はあったけれど、そうでなければ何度だってあのノンデリカシーなくそ野郎ども相手に喚き散らしていたに違いない。


 それでなくとも同年代の学友たちは悪霊に憑りつかれたりしていないで青春を謳歌しているというのに、何故自分だけ、という気持ちだってあったのだから。なんで私だけ、というのは確かにあった。

 これが、皆も何らかの悪霊に憑りつかれていて皆大変なんだよ、とかであったなら少女もじゃあ仕方ないか、となったかもしれない。自分一人が被害に遭っているわけじゃない、というのならまだ諦めもついた。なんの解決にならなくても一人じゃないというある種後ろ向きな安心感はあっただろう。



 そうして毎日鬱々として、いつこいつらに殴り掛かるか自分でもわかんないな……と思いながらも続けていた旅の間に、少しでも多くの情報を得た。聖女に関して、女神に関して。

 そして、無事に聖女としての役目を果たし女神を目覚めさせた。

 僥倖だったのは女神との対話ができた事だ。


 それによって、少女はユリエをあの異世界に置き去りにすることができたようなものなのだ。

 賭けだった。

 勝つか負けるかは完全に運だった。

 勝算はなかった。ゼロでなくとも限りなくゼロかもしれないと思いながら、それでも口に出していた。


 召喚された時に聞かれた名を、ユリエと偽った事で。

 彼らが知っている聖女の名はユリエだと向こうも信じて疑わなかっただろう。

 ユリエが聖女である事はなくとも、あちらにとっては聖女とユリエはイコールなのだ。


 彼らがそう思い込むことで、うっすらとではあっても縁ができた。

 彼らと、ユリエとの縁が。

 もっとも、彼らはユリエとの縁ができたなど思ってもいなかっただろう。


 ただ、聖女の護衛として。

 生活に疲れ果てたようなお世辞にも可愛いとも言えないような女を守らねばならない。聖女だから。

 どうせなら、きっともっと美少女を想像していた事だろう。

 異世界からこの世界を救うためにやってきた薄幸の、はたまた凛とした美少女であったなら。

 時として困難を乗り越え、恋に落ちたかもしれない。

 異世界からの来訪者だ。あの世界には家族も友人もいない。身寄りのない聖なる乙女。

 そんな相手が自分だけを頼りにしてくれたなら、という妄想をした者もきっといたとは思う。


 だが、やって来た聖女は美少女ですらなかった。

 目の下に真っ黒なクマをこさえたにこりともしない愛想も可愛げもない女。


 妄想したラブロマンスは早々に破綻した。

 きっと、それも彼らにとって不満だったのかもしれない。

 少女にとってはどうしようもないような事をグチグチと言われたのだから。


 けれど、彼らは。

 少女をユリエだと思い込んで、ユリエの悪口を言っていたのも同然なのだ。

 少女の悪口であっても、彼らはユリエも同時に貶めていた。


 悪霊としてのユリエがどれくらい強いかは少女にはわからない。

 ただ、それでも本家の若い娘は既にいないし、近しい分家からも絶えた。結果としてすっかり分家も分家すぎて繋がりとかまだあったんだ……くらいに遠縁の少女のところまでユリエはやってきてしまっていたけれど。



 恐らくユリエが若い娘にだけ憑りついていたのは、彼女の生前、巫女の姉妹――ユリエがどちらの立場だったのかは不明。姉のような気もするが、妹かもしれない――にすら裏切られたのもあったからだろう。

 赤の他人の裏切りは意外とすとんと受け入れる事もあるけれど、やはり近しい身内や友人の裏切りはそう簡単にのみ込めるものではないのだから。

 最初から最後までいがみ合っていたならともかく、一時でも仲睦まじい時期があったのなら。愛が憎しみに転じるように、恨みつらみは大きくなる。



 だが既にユリエが憑りついていた血筋はほぼ若い娘が絶えて、少女と同等くらいに繋がりの薄い娘があと精々一人か二人残る程度だった。男には憑りつかないようだが、しかし男だから被害がないわけではない。ユリエに祟られたとしか思えないタイミングで大怪我を負った者はいるし、呪われたとしか思えないような事になってしまった者もいる。

 一族は皆、ユリエをどうにかしようとしていたのだ。それこそ、ユリエがその存在を知らしめた時点で。

 当時は他に巫女と呼ばれる者や、霊能力と言えなくもないような力を持った者もいた。神社仏閣、それらの知恵や知識、力を借りてどうにかしようと試みた先祖は確かに存在していたのである。


 ところが、元々力を持っていた相手が肉の器を捨て怨霊となった事で、今までは肉体があったからこそ制限されていたであろう力は解放されてしまい、ユリエのせいで命を落とした者も大勢出てしまった。

 どうにかする、の方向性をなるべく穏便に……と変えて対処法を探るうちに、気付けば令和。少子高齢化の波は少女の一族にも及んでいたし、故にここにきて少女の一族からは若い娘が絶えようとしていた。


 一族から若い娘が皆いなくなった後、果たしてユリエがどうなるかは未知だった。

 気が済んで成仏してくれるならいいが、そうでなければ被害は広まる一方である。


 ところが、異世界に呼ばれ、そこで一時的とはいえ自らの力をうまく扱えなくなったユリエは。

 果たしてそこで何を思ったのか、は少女にはわからない。

 わからないけれど、それでも想像はできる。


 力をほんのり封じられた状態で、自らを貶められるような言動。

 それはきっと、かつて彼女が死に至る前の出来事に近しいものだったのではなかろうか。

 自分を知る者たちの掌返し、知らない者たちの好き勝手な、事実無根の噂。

 見知らぬものにこういうものだと決めつけられて貼られた悪のレッテル。


 ペテンでも詐欺でもないが、いくら真実を訴えたところで大衆の前にユリエはきっと、無力だった。

 そうでなくとも昔、女性の立場は低かった。自分の無実を訴えたくとも、本当のことを口にしても、それすら生意気だと、でしゃばるなと叱られる。

 少女からすればその時代に生まれなくて良かった、と思う部分はたくさんある。

 女に生まれただけで理不尽な目に遭うなんて冗談ではない。

 だがユリエは、その理不尽な時代を生きていた。


 死んだ後、再びその理不尽としか言いようのない状況に見舞われて――実際見舞われていたのは少女であるけれど――生前の記憶が果たしてユリエにどれくらい残っていたかはわからない。

 けれど、思う部分がないわけではなかったはずだ。


 少女が感じていた身体の不調は、間違いなくユリエの気分にも作用していただろうから。

 憑りつかれていたからこそ、少女とユリエは繋がっていた。

 少女が不調であればあるほどユリエもまた恨みつらみといった負の感情を強くして、そうして少女を蝕んでいた。少女が護衛として共に行動していた連中から言われた言葉に、内心で「クソ野郎どもが、死ね」とか思っていた感情は、ユリエにも流れていたはずだ。


 同じ血縁の存在はなくとも、あの世界には若く美しい娘が大勢いる。

 あの世界に置いていかれたユリエが憑りつこうと思えば憑りつけるだろう存在に困る事はないのだ。


 血の繋がりが希薄すぎる少女にですら憑りつけたのならば、異世界で新たな縁を結んだ相手経由で憑りつくこともまた可能だろう。

 そもそも悪霊だ。怨霊だ。幽霊だ。

 道理が通じるとは思っていない。

 人間から見て理不尽だったり無茶苦茶だったとしても、ユリエにとってそれは当たり前の事である可能性は否めない。



 もし、ユリエが血縁にしか憑りつけなかったのであれば、何が何でも少女にしがみついていただろう。けれどユリエは少女から離れてあちらの世界に残った。

 もしユリエに残るつもりがなかったのなら、少女がユリエをあちらの世界に置いていこうとした時に、もっと激しく抵抗したはずなのだ。



 あっちの世界に魔法があるから、もしかしたらユリエの存在はそう大したものではないのかもしれない。

 ユリエがあの世界を恐怖のどん底に叩き落そうとも、はたまた魔法の力であっさりユリエが消える結果になろうとも。


 少女からすればどちらでも良かったのだ。

 ユリエから離れられるのであれば。


 ベッドに潜り込んで貪るように眠った後、目覚めた時、あまりにも爽快な気分になって。


「あは」


 少女は思わず笑っていた。

 こんなにも爽やかな目覚めはいつ以来だろう。ユリエが憑りつく前までは、これが当たり前だったのだ。


「おかえり、私」


 ユリエのせいで色々な制限がかかってしまっていたけれど。

 学生時代を数年棒に振ったも同然であるけれど。


 それでも。


 この先、少女の未来にユリエはいない。


 それがどれだけ幸運な事か。

 自分の意思などお構いなしに異世界に召喚された時は殺意すら抱いたけれど。

 こうしてユリエと縁が切れた今となってはあの世界は少女にとっての救いの主だった。


 聖女としての役目は果たした。

 なら、これくらいの恩恵があったっていいだろう。


 罪悪感なんて、これっぽっちも湧かなかった。


 聖女だから救わねばならないとしても。

 聖女だって救われたっていいではないか。

 救う相手がそれを望まぬとしても。




 ――聖女が元の世界に帰ったあと、再び女神は眠りについた。

 護衛として共にいた彼らは、女神の力で一先ず故郷へ帰された。


 そうして凱旋した時点で、彼らは英雄として持て囃されることになったのだが。



 聖女が最後に言った、ユリエは残るが自分は帰る、という言葉の謎はそのままだった。

 だがもうあの少女はいない。見た目も美しいわけではない少女。最初あれを聖女と言われた時は何の冗談だと思ったくらいだ。もし、あの聖女がこちらの世界に残るなどと言いだしていたならば。

 護衛として付き従って――実際文字通り付き従っていたわけではないが――いた彼らは聖女に女神の所まで行くようにと告げた王が、彼らのうちの誰かと結婚させるなどしていた可能性もあった。


 本来ならばそれも有りだと思っていたのは事実だ。


 異世界からやってきた、よすがのない少女。聖女と呼ばれるに相応しい乙女であったなら、故郷を捨てこちらの世界を選び愛に生きた、とか美談はいくらでも用意しようがある。聖女を娶ったならば王家との縁も多少強化はされるだろうし、聖女を保護する事で民たちの支持率を操作するつもりでもあった。


 聖女召喚をする前に、護衛として選ばれていた彼らには事前にそういった話が持ち込まれていたのだ。

 彼らのお眼鏡に適う美しき乙女であったなら、旅の途中彼らは聖女を留めるためにあの手この手で迫った事だろう。けれどもやってきた聖女は彼らにとって女として見る事ができないもので。

 だからこそ、彼らはさっさと旅を終わらせるつもりで体力のない女に内心イライラしながらも急ぎ旅を終わらせたのだ。


 もし聖女が元の世界に帰ったところで、その場合は王家が彼らに対して良い縁談を、という話にもなっていたからこそ彼らにとって損はなかった。


 なかった、はずなのだ。



 だが、その縁談は相手側からことごとく断られた。


 未だ婚約者が決まらぬ娘からすれば、英雄ともなった彼らはそれなりに良縁であるはずなのに。

 縁談の相手はあくまでも王家からの紹介であり、王命での政略結婚などではない。

 ただ、令嬢側の家に関しても事前にもし聖女がこちらに残らず帰った場合、英雄となった彼らとの結婚を考えて欲しい、という話はふわっとではあったがされてはいたのだ。


 もし聖女が残り、自分がいいなと思っていた令息が結婚を決めてしまったらそれはとても残念な事ではあるけれど、それでも令嬢たちの新たな結婚相手の紹介も王家が多少は手を貸すつもりであった。

 聖女絡みであるがゆえに、世界の命運がかかっていたのだ。

 本来ならもっと早くに婚約を結んでいた家の者もいたけれど、それを少し先延ばしにしてもらったりしていたので、ある程度の介入や手助けはこれくらいなら当然だろうと王家もそれぞれの派閥に声をかけていたのである。



 旅に出る前に、あの方が素敵、もし聖女が彼を選ばないのであれば是非結婚したいわ、なんて乗り気であった令嬢ですら彼らが凱旋を果たした後、婚約の話はなかった事に、と断ってきた。

 元々そこまで乗り気でもなかったが、まぁ家や王家からちょっとだけ待ってほしいと言われていた家の令嬢が断るのはまだしも、乗り気であった家の令嬢たちまでもがそうなったのだ。


 一体何があったのか、と令嬢の親や祖父母が聞けば、なんと夢を見たのだという。


 その夢は、令嬢が英雄となった令息の誰かと結婚をした未来のものだった。

 最初は幸せだったのだと思う。けれど、子ができたあたりから。

 夫となった男性は自分に対してとても酷い態度になった。


 醜い。女として見れない。せめてもう少しどうにかしようという努力もないのか。


 そんな暴言から始まって、何から何まで文句をつけられる始末。


 子ができている状態であるが故、悪阻で少し辛そうにすればそれすら夫は文句をつけるのだ。


 ほっそりとしていた身体だったとはいえ、子を胎の中で育てている以上胎児は成長するしそれに伴い胎が膨れるのは妊婦であれば当然の事だ。子を産んだ後、体型が崩れるという話も聞いてはいるが、それでも元に戻らないわけじゃない。けれども、結婚前の姿と違うと夫となった男は詐欺だなんだと罵るのである。


 誰の子を育てていると……! という思いが令嬢の中で膨らんで、こんな男だとわかっていたなら結婚しようなんて思わなかった、という思いすら膨れ上がっていく。

 英雄だからなんだというのだ。

 家のためを思うのであれば、他にもマシな男はいた。


 ただ、英雄として名を馳せた相手であるならばきっと人格者なのだろうと思い込んでいた。聖女と旅をしていながらも、そちらと男女の仲にならなかったのだから、誠実な相手なのだろうという思い込みもあったに違いない。いや、思い込みもそうだが、聖女という相手がいてもなお、戻ってきて自分を選んでくれたという優越感だろうか。ともあれ、そういった感情があったのは否定できなかった。


 聖女が女性として見た目がパッとしなかった、という話も聞いてはいたけれど。


 それでも間違いなく令嬢は相手の男性に過剰な期待を抱いていたのだ、と気づかされたのだ。


 悪阻で具合が悪くなり、吐いているその様を直接見られたわけではないが、まるで汚物を見るような目をこちらに向けてきたのは確かで。


 そうしていくうちに、夫になった相手に結婚した直後はあったはずの愛も情もすっかり冷めきってしまうのを感じていた。



 そうしていよいよ子を産んだ後――男は生まれたばかりの赤ん坊を見て、

「似ていないな。本当に俺の子か……?」

 などと吐き捨てるのである。


 産まれたばかりの赤ん坊なんて大体皆しわくちゃのお猿さんみたいなものだというのに。


 けれど、そこで。

 女の情は完全に冷めた。


 そうしてそこで、目が覚めるのだ。


 清々しいはずの朝だというのに、最悪な気分だった。


 夢、と掠れた声で呟いて、それでもまだ夢であることに安堵した。

 そうだ自分はまだ結婚してすらいない。あれは夢。ただの夢。

 ちょっと、結婚に思いのほか過剰な期待をしてしまっていたのかもしれないわ。そんな風に言い聞かせて。


 だがその夢を、毎夜毎夜見るようになれば話は変わってくる。


 最初や二日目、三日目あたりまではまだ夢見がちょっと悪くてね、という言葉に周囲もまぁ大丈夫? なんて言う余裕はあったけれど、それが五日、六日と続けば偶然だと片付ける事もできない。


 毎日同じ夢。夢なんて普段は起きたら忘れている事の方が多いくらいなのに、毎日同じ夢を見ていると起きてからも把握できているのだ。

 そして、楽しい内容ではないので精神的にもぐったりしてくる。


 もしかしてこれは、神様の警告なのかしら? と令嬢は思うようになっていた。

 一度や二度ならまぁそんな事もあるでしょうと思うけれど連日の悪夢はまるであの男と結婚してはならない、すればこうなる、と未来を先に見せられているかのように思えてくる。

 夢を司る神が、自分の未来を哀れんでそっと奇跡を与えてくれているのでは、と思い始めていた。

 この世界に神は複数存在しているが、誰でも気軽に関わる事ができるわけではないので令嬢のそれがただの思い込みである可能性もあるけれど。

 それにしたってあまりにも……となったのだ。


 それにもし、この夢を無視して結婚して、本当にそんな事になったのならば。

 きっと後悔してもし足りないだろう。


 気晴らしにと友人たちを呼んで茶会を開けば、自然と英雄たちの結婚相手の話も出てくるが、その話題になった途端他の令嬢たちも一様に顔を曇らせた。


 そうして一人が、こんな突拍子もない事を言うのはどうかと思うのですが……と、悪い夢を見たのです、なんて言いだして。


 令嬢とほぼ同じ夢を見ているのだと知った。


 えっ、貴方も?

 えぇっ!? まさかそちらも……?


 あ、でも私の場合少し違う内容でした。

 私は夢で聖女様の代わりに彼らと旅に出る夢でした。


 そんな風にそれぞれが見た悪夢の内容を話せば、夢で聖女として旅をしていた内容も大概だった。

 何せ本来紳士であると評判だったはずの彼らが、聖女に対してとてもじゃないが紳士とはいえない態度だったのだ。容姿を貶し、体力のなさを責め、何をするにも足手纏いだと文句を言う。

 それは実際聖女として呼ばれた少女が体験した事ではあるのだが、令嬢たちは知る由もない。

 けれど、結婚後の悪夢を見た者や、聖女として旅をしている夢を見た者の共通点として、どっちにしても彼らの態度は女性にしていいものではない。


 確かに聖女の外見はお世辞にも可愛いとは言えなかったけれど、令嬢たちが見た事のある平民のような逞しさがあったわけではない。

 直接聖女をお目にかかったという令嬢はこの場にはいなかったが、それでも遠目で見た事ならある、という者はいた。

 そんな彼女の証言から、聖女様はもしかして、あちらの世界で療養なさっていたのではなくて? といかにも体調不良ですと言わんばかりの状態だったと他の令嬢たちにも知れ渡り。

 もし病み上がりであったのなら、体力なんてなくても当然だろう。

 なのに彼らはそんな聖女を慮るわけでもなく、使えない愚図だと罵っていた。


 そしてそれは、夢の中で夫の子を妊娠した将来の自分に向けられる言葉と重なって。


「もしかして、聖女様の最後の力なんじゃないかしら。それか女神さまの温情」


 そんな風に誰かがぽつりと呟いた事で。


 だってそうじゃないとこんなに揃ってあの英雄と呼ばれた令息たちがどうしようもなく酷い男であるなんて夢を見るはずがない、となってしまったのだ。


 夢の内容が事実かどうかを確認しようにも、聖女との旅の出来事を彼らが正直に言うか、となれば言わないだろう。自分が悪くても悪くないように見せるのは、よくある話だ。聖女に対して常に暴言を吐いていました、なんて正直に彼らが言うはずもない。そしてそれを確認しようがないのだ。


 これが、街の中であったならまだ目撃者もいたかもしれないが、聖女と共に女神の元へ行く旅の途中には、聖女の護衛である彼らを更に護衛するような者はいなかったし、王家の影、というようなひっそりと彼らを監視するような存在がいたわけでもない。

 彼らが口裏を合わせれば、いくらでもなんとでも言えるのである。


 今回茶会に参加した令嬢以外にももしかしたら同じ夢を見ているかもしれない、となった令嬢たちは、ともあれ他の令嬢たちにも声をかけてみる事にした。


 結果として、彼らの婚約者として、とまだ婚約を決めるのは待って欲しいと声をかけられていた令嬢たちのほとんどが夢を見ていたことが発覚したのだ。

 ここまでくると、もう女神さまがあの男たちはやめとけと言ってるようにしか思えなくて。


 家のために迎え入れる男が最低な奴だと家の評判にも関わる。

 自分だけではなく、他の令嬢たちも見ている夢だと親を説得し、かくして令嬢たちは一斉に英雄たちとの婚約を拒否したのである。


 たかが夢で、と鼻で嗤いそうではある。これが夢を見たのが一人だけであったなら、周囲もせせら笑ったに違いない。けれど、自分だけではないのだ。他にもう一人や二人程度なら、結婚したくなくてそう言ってる可能性も疑われた。けれど、ほぼ全員である。中には乗り気だった令嬢もいたのだ。


 だというのに、異例の集団拒絶。

 王家も縁談に関して手を貸す事になっていたのに蓋を開けてみれば一件も婚約が成立しない。男側からあちらの家の令嬢と……なんて望んでも令嬢側の家から断られるのだ。

 無理矢理に王命で政略結婚をさせるにしても、令息たちが望む相手とはそこまでする旨味がない。むしろ強制すれば周囲の反発は必至である。


 あまりにもあまりだったから、王もそれとなく令息たちに探りを入れた。

 結果として、聖女との旅の間の暴言が事実であるとぽろっと自白した一人の令息に始まって、そこから芋づる式に令嬢たちが見た聖女との旅の夢が概ね事実であると知れ渡ってしまったのだ。

 最初に自白する形になった令息とて、何も本当に素直に白状したわけではない。王のさりげない誘導尋問に引っかかった結果である。

 けれどもその結果、紳士としての風上にも置けぬ、となり。


 流石に結婚の手伝いはこうなると無理、となったのである。


 英雄と呼ばれていた令息たちは、国中の令嬢たちから見向きもされず、いくら英雄として知名度があっても同時に女に対する態度が最悪である、となってしまった事で。

 本来なら家の後継ぎになるはずだった令息は外聞が悪すぎるとなり後継者の梯子を外され、後継者ではなかった他の令息も華々しい社交の世界から遠ざけられる形となってしまったのであった。

 この世界も多少男尊女卑の傾向にあったとはいえ、それでも彼らの聖女に対する態度はあまりにも酷かったのだ。暴言だけで済んで暴力まではいかなかったとしても、それでもこの世界を救うのに欠かせない存在である聖女相手でそれだ。

 他の令嬢たちにいつその酷い態度が出るか、という疑いは常にある。


 そうでなくとも夢の中と同様ちょっとでも外見に陰りが出るような事になれば、ああいう態度に出るかもしれない、と多くの令嬢たちに思われているのだ。聖女に対する態度が事実であると知られた以上、いくら本人たちが口で否定したところで全面的に信じるなんてのは、無理だった。


 彼らの輝かしくなるはずだった未来は、こうして閉ざされた。






 ――ユリエ、と呼ばれている女は生前の事などもうほとんど覚えていなかった。

 ただ、信じていたはずの身内に裏切られ、他人に虐げられ、全てを憎んでいた事だけは覚えていた。


 死んだ後、自分が死んでいると気づくまでに時間はかかったが、血縁の若い女に憑りついていたのは、裏切った身内と同じ扱いをしていたからだと思われる。ユリエもそこら辺上手く言語化できなかった。ただ、憎しみだけがそこに在った。

 他人がクソなのはどうでもいいが、身内がクソなのは許せぬ。

 そういう思いもあったのだろう。そして、自分を貶める相手に対しても、激しい怒りを覚えていた。


 身を粉にして尽くしても返ってくるのが罵倒や暴力であれば、まぁそうなっても仕方がない。挙句裏切りからの殺害である。

 いつか、魂が擦り切れるまできっとこのままなのだとユリエも漠然と思っていた。

 助かりたい、とは思っていなかった。いっそ最後まで思うままに暴れて、そうして終わればいいと思っていた。


 とはいえ、最後に憑りついていた少女はもう血縁といってもほとんど他人くらいに薄い縁しかなくて。

 そろそろ潮時かもしれない、とも思っていたのは確かだ。

 それでも、満足したという思いはない。

 ここまで他人に近い身内に憑りつくくらいなら、次はもう身内じゃなくて気に入らない相手に憑りついて憑り殺してやろうかと思う程度にはユリエはまだ先の事を考えていた。ずっと感情的になっているわけでもなく、案外冷静な部分も存在していたのだ。

 憑りついて相手の生命力をじわじわ奪って自分の力に変えて。


 そうしてある日、異世界とやらに召喚された。

 呼ばれたのは憑りついた少女であってユリエ本人ではなかったが、少女にくっついていたユリエも招待された判定だった。

 異世界は、自分が今まで悪霊としてやってきていた世界と理が少々違うからか、最初の内は力をうまく使えなかった。少女から生気を奪うのも少しばかり中断されて、勝手が違う事に戸惑いつつもユリエはそれでもどうにかしようと考えてはいたのだ。


 ただ、こちらの世界には瘴気と呼ばれるいかにも人体に有害そうな何かがあったり、魔法が存在しているからか魔力が空気中に漂っていたりと、少女から生気を奪わずともユリエは存在を維持するエネルギー確保に困りはしなかった。むしろ空気中に漂う魔力を摂取していく方が生気を奪うより効率が良かった、と思える。


 生前のユリエはそれなりに勤勉であったので、異なる世界、異なる理に興味を持ち始めていた。

 だが、そこに水を差したのは聖女と旅に出る護衛として選ばれた野郎どもである。

 ユリエ本人を貶しているわけではなかったが、しかし少女がユリエと名乗った事で。

 あと、生前に何か迫害されてた頃の記憶が刺激されるような感じがして。


 元々それなりにあった恨みつらみに更なる燃料投下がなされたのである。


 少女の外見が貶されているのはユリエが生気を奪って見た目をぼろぼろにしているからこそなのだが、ユリエは悪霊なのでそこは華麗に棚上げした。

 自分の事を自虐で下げる分には構わないが、他人に言われるとくっそ腹立つ、みたいな心境に近いかもしれない。

 ボロクソに言われている原因はユリエにあるのだけれど、少女はユリエに対して怒りを抱いたりはしなかった。ただ、野郎どもに対してクソ野郎死ねという負の感情はたっぷり出していたけれど。

 ユリエにとってはそれも一種の糧だったので、遠慮なく摂取していた。


 よくもまぁ、こんな毎日同じように殺意を生み出せるものだ、と感心しながらもユリエは少女から与えられる負の感情とこの世界の魔力と、時々瘴気を取り込んで着実に力をつけていたのである。

 すぐに野郎どもをどうにかしなかったのは、ここで仕留めるのは簡単だが今はその時ではない、と判断した結果だった。仮にも護衛であるので、ここで彼らを殺っちまうと宿主の今後が大変である。少女が死んでユリエと同じような存在になるかは微妙なところだった。

 大体、今までに憑りついた血縁であり子孫にあたる娘たちはそうならなかったので。


 ともあれ、ユリエは着々と力を蓄えていたのである。


 そうして運命の日。

 女神を起こした後。

 少女はユリエをここに残して自分は帰ると宣言した。


 一歩間違うとそれはユリエをここに捨てていく、という発言と同じなのだが、しかしユリエは悪霊のわりに冷静だったので。

 違う理の世界で散々魔力や瘴気を取り込んだから、今からあっちに戻っても、今度は人の生気だけで満足できるかわからないな、と思ったのである。死んでから黄泉竈食を体験するとは思わなかった。生きていた時ならもう少し慎重になったかもしれない。でも死んでるし。


 それに。


 憑りついていた少女は一応ギリギリ血縁で子孫判定していたから憑りついていたようなものだけど。

 けれども少女の在り方はユリエにとって悪いものではなかった。

 自分が憑りついた事で色々な制限がかかったのは事実だけど、それでも少女は自分にできる事を日々模索し、真っ当に生きていた。少なくともかつてユリエを裏切った身内のような、おぞましい人間性の持ち主ではなかった。

 だからだろうか、ここでお別れというような事になってもあまり怒りは湧かなかった。

 ユリエにとって裏切りにはならなかったのだ。少女の言葉は。

 どっちにしても少女越しにユリエの事も馬鹿にしていた野郎どもに対しての落とし前はまだつけていないので、ユリエはどのみちここに残るつもりでもいた。

 だから裏切りというよりは、代弁だったのだ。少女のあの決別の言葉は。


 なので思っていたよりも晴れやかにユリエは少女が元の世界に帰るのを見送ることができていた。



 ちなみにその後、女神は早々に眠りについたのだけれど。


 ふと思ったのだ。

 世界の瘴気をあっという間に浄化してみせたわりに、でも瘴気を取り込んだユリエは消滅していない。

 もしかして、この女神実は大した事がないのでは? と。


 なのでほんの出来心で。

 眠る女神にユリエは憑りついてみた。

 相手が寝ていたのもあって、あっさりと。本当にあっさりと身体を乗っ取ることができてしまった。

 そのついでに女神の意識を完全に取り込む。下手に抵抗されて追い出されるだけならいいが、そうなると次はこちらが消滅するかもしれない。そうなる前に無防備な女神の魂をユリエはサクッと吸収した。

 今まで沢山の娘の生気を奪い憑り殺してきたのだ。ユリエにとっては娘も女神も抵抗できる状態でないのならどちらも同じものであった。


 そして女神に成り代わったユリエは知った。

 この女神、別に聖女がわざわざ起こさなくても良かったという事を。

 というか、ある程度瘴気が溜まってきたら浄化するのが役目だとも。


 では何故異世界から聖女を召喚させてまで、無駄に旅をさせたりしているのか。


 全ては、信仰である。


 この世界の神は複数いるが、その全てが強大な力を持っているわけではない。神々の中には歴史の中に埋もれその存在を忘れ去られ消滅するに至った神もいる。

 故にこの女神は考えたのだ。

 瘴気を定期的に浄化する女神、というのはいずれそれが当たり前になるかもしれない。勝手に瘴気を浄化するのであれば、人間たちはそれを大した問題に考えず瘴気をじゃんじゃん発生させるかもしれない。だがそれを浄化するのは当たり前である、と。


 まぁ、女神のその考えをユリエは否定しない。

 人間なんてそんなものだ。自分にとって便利な存在を本当は大事にしなければならないのに、気付くといつの間にか軽視しているのである。そして後になって痛い目を見るのもよくある話だった。


 だからこそ、女神はあえて瘴気を浄化しなかった。

 そして世界がいよいよ大変な事になりそうだとなった時に、人間たちに異世界から聖女を召喚させ、旅をさせ女神の元へたどり着くようにし、そしてそこで聖女の力によって目覚めたかのように振舞い、人の祈りに応えてやったという形で瘴気を浄化するのである。


 本来ならやって当たり前の仕事を、さも相手の願いを聞くというような形でもってやるのだ。

 聖女に関しては自分が異世界から呼ぶように仕向けたのもあって、そこは相手の願いによって戻すようにしているらしいが、そうでなかったらこの女神、他の神から邪神認定されてもおかしくない状態である。


 ちなみにこのパフォーマンスを他の神は、信仰集めのためのもの、と思っているからか特に何を言うでもないようだ。完全に仕事をボイコットしているならともかく、一応は働いているのでまだお咎めに至るまでではないらしい。信仰は力になる。故に、他の神視点この女神は一応仕事をしているという認識なのだ。

 人間からしたらとんだ怠惰な女神だと思われるとしても。


 ユリエは元は人間で悪霊になってからは人間の気持ちとか大分あやふやになってきていたけれど、理解できないわけでもない。女神を乗っ取って自分が成り代わったとはいえ、神の考えもまぁ、全部は無理でもそこそこわかる気がしなくもない。


 信仰が薄れたとしても、ユリエはこの世界に溢れる魔力や瘴気を取り込んで力を蓄えることができるので、こんな面倒なパフォーマンスをする必要はないなと判断した。


 とはいえ、ある程度瘴気が世界に満ちてきたら次の聖女召喚が行われるかもしれないので、定期的に瘴気をそこそこ浄化しつつ、各国の聖女召喚のために魔石に溜めている魔力もこっそりといただく予定ではいる。

 これ以上元の世界から犠牲者を出す必要はもうないし、いつかこの世界の人間が聖女なんていなくてもいいや、で魔石に魔力を集める事もしなくなったらその時はまぁ、瘴気を少し溢れさせて危機感を抱かせればいい。そしてまた魔力を集めるのなら、そこを頂けばいい。


 ともあれ、ユリエは乗っ取った女神の身体に馴染むために、軽く動くことにした。



 憑りついていた時に相手に見せていた悪夢を応用して、今まで散々貶してくれたくそ野郎どもの婚約者になるかもしれない国の若い娘にこぞって悪夢を見せた。それはさもこの先の未来で起きるのだと言うような内容で。ついでに旅の間に少女が受けた仕打ちというか暴言をリプレイさせたバージョンの夢もある程度ばら撒いた。


 結果としてあのくそ野郎どもは、自分の口が災いの元となって結婚できなくなったらしい。

 本来ならば聖女を守り女神の元へ届け、世界を救った英雄として称賛され是非そんな彼らの嫁に、とより取り見取りだったかもしれない状況が一転。誰からも望まれない存在となったのだ。

 それはかつて、ユリエが裏切られた時のように。

 ちやほやされていた――ユリエは別に望んでいたわけじゃなかったけれど――ところから一斉にそっぽを向かれるというのは案外精神的にキツイものがある。


 彼らの場合は特に華々しい栄光の未来が待っていた、という思いが強いので、余計に厳しいだろう。社交界とやらで脚光を浴びるはずが、人の目を避けるように縮こまって生きていかなければならないのだから。


 けれども命を奪うまではしていないのだから、ユリエからすれば優しい方である。

 悪霊だったユリエは今までも気に入らない相手には容赦のない対応をしていたので。むしろ五体満足生きてるだけとても慈悲。


 生きてるならワンチャンやり直せる可能性もあるでしょう、と乗っ取った相手の身体でもって微笑む。

 ユリエなりの女神ムーブであった。



 とりあえず、受肉と言っていいかは微妙だが、生身の身体を手に入れたので。

 ユリエは女神とわからないよう外見を変化させて人里に繰り出す事にした。


 向こうの世界ではもう死んでたから食べることができなかったけれど、こっちの世界でも気になる食はあったし、ユリエが生きていた時代と比べると服も装飾品も様々である。

 こっちの世界になければ、作らせればいい。無いなら作って流行らせるまでの事。


 悪霊として憑りついてたのが若い女性だったので、ユリエもつられるようにそういった物に興味があったのだ。


 死んで悪霊になってからの年数はそう長い方ではないけれど。

 ユリエが死んだ後の時代はまさしく激動の時代でもあったので。

 女神という人の枠組みを超えた存在は、ユリエにとってまさにうってつけの器であったのだ。


 ふふ、と知らず笑みがこぼれる。

 こうなった以上、楽しまずして何をする。


 気に入らない人間はそっと今までのように対処して、第二の住処を整える。

 ユリエの思想は未だに悪霊の時のままだ。


 けれども彼女が気に食わない人間は大体ロクでもない奴ばかりなので。


 これより先、ユリエが他の神によって断罪されるという事はなく。

 それどころか、前より真面目になった、と他の神に言われる始末。


 悪霊より評価の低い女神ってどうよ、と思いつつも、ユリエの感想としてはところ変われば品変わる、ってやつかしらね……であっさりと納得してしまったのだった。

 次回短編予告

 国同士の政略結婚、つまりそれって契約なわけで。

 だからまぁ、まさかとは思うけどそれを台無しにするような真似するわけないですよねーぇ?

 まぁないと思うから、もしやらかした時の事も含めて契約結んでおきましょうねッ♪

 ま、ないとは思いますけれども。えぇ、お互いに。ねぇ?

 っていう感じのそうはならんやろ、なっちまったやろがい! 系の話。

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― 新着の感想 ―
まぁ日本産の悪霊なので、 祀られてる内に御霊信仰的に昇華されそう感はある(それはそれとして祟神の側面も残りそう)
[良い点] 聖女の英断! そして適材適所なのか場所によっては悪霊、場所によっては神様と言う日本の伝承神話あるあるを上手く使った話でした [一言] 人は暗雲が立ち込めて良い人が生きづらい世になっても…
[良い点] タイトルを見た時は、またよくある話か、と思ったら、内容はまったく違っていて。 面白かったです。満足。
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