表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

比較的最近更新した短編のまとめ場所

暗雲スタートライン

作者: 斎藤由希



 地獄のような受験勉強に猛勉強で戦った後、見事勝利をおさめた私は、春から新しい学校へ通うことになった。


 地元を離れて心機一転。


 新入生な私は、その学校の寮に入って一人暮らしにもチャレンジだ。


 どうせなら、青春のある学生時代を送りたい。


 制服の可愛い、行きたかった高校に入学できたんだから。


 貴重な十代の時間を無駄にはしたくない。


 そう思っていたのだけれど、さっそく目の前には暗雲が立ち込めていた。





「オラオラオラ! 竜聖院様がお通りじゃあ! ぼさっとしてんじゃねぇ、道を開けろ!」


 学校の廊下をリーゼントな男子高校生がはばを聞かせて歩いていた。


 そんな高校生たちの前に立って歩くのは、シルバーアクセサリーをじゃらじゃらつけた金髪の男子生徒。


 漫画の中にしかいなさそうな、典型的な不良たちが目の前にいた。


 廊下の隅で唖然としながら、「一体どうなってるの」とつぶやく。


 不良イコール頭が悪い、というわけではないだろうけど、そういうイメージがあった私は、それなりの学力が求められるこの学校にいるのが信じられなかった。


 すると、この春友達になった女子生徒が偶然近くにいたようで。


「ああ、あれ。たぶん入学してからグレちゃった人、頭のいい不良ってやつよ」

「ええ?」


 その子が言うには、もともとは頭がよくて、人当たりがよくて、物腰柔らかな好青年だったらしい。


 間違っても不良になって、人に迷惑をかけるような人間ではないとか。


 それでも、ああなってしまったのはーー。


 今まで友人だと思っていた人にだまされてお金をとられたあげく、美人局のトラブルに巻き込まれて、なおかつ本物の不良に借金した人に身代わりにされてしまったらしい。


 それでやり返したら本場の不良のリーダーをのしてしまって、いろいろな事情でやむなく不良をやってる子たちの面倒を見ることになってしまったとか。


 めちゃくちゃ災難だった。


 そんな経験したら、ああもなる。


 私は遠ざかっていくリーゼントな集団に向けて、思わず哀れみの視線を投げかけていた。


「えっと、いい青春おくれるといいね」

「おくれると思う? ここ、ばりばりの秀才有名校だよ」


 先生に指導されて、退学にならないといいな。


 これほど、他人の未来を悲観して遠い目になったことがあっただろうか。


 いや、たぶんない。


 思えばその時(なんとかできればいいんだけどな、できることがあれば力になってあげたいなーー)なんておもってしまったのが、フラグだったのだろう。









 数日後。


 なぜか私は不良の軍団にさらわれていた。


 くだんの優等生不良君と同じ学校に通っているというだけで、どっかの不良に目をつけられてしまったらしい。


 宇流虎羅(※うるとら)とかいう名前の不良軍団だ。


 それでそこにくだんの優等生不良が救出にきて、いま大乱戦勃発中。


 私の目の前で、不良たちがみんな拳を振り上げ、喧嘩しあっていた。


 どちらが優勢かというと、優等生不良君たちの方だ。


 優等生だったころに不良のトップを倒すだけあって、もともと素質があったのだろう。


 めちゃくちゃキレのいい動きで立ち回り、相手の不良たちを倒していった。


 このままいけば、完勝するのは時間の問題ーーと思われたが、そこにまさかの伏兵。


 なぜか私からしか見えない位置に、極彩色のモヒカン(おそらく敵の不良)が潜んでいた。


 その人は激しく立ち回る優等生不良くんに向けて、改造してるっぽいごついスタンガンをバチバチならしていた。


 私は心の中で涙する。


 あれでしょ?


 もうわかってる。


 ここで助言すると私も優等生不良君の仲間認定されて、不良の世界に片足つっこんじゃうんでしょ?


 さらわれたまま、何もせずにいれば、巻き込まれただけの無害な存在でいられるんだけど。


 でもーー。







「さすがに私を助けに来てくれた人を見捨てたら、寝覚めが悪いでしょ」







 ああ、さようなら私の普通の高校生ライフ。


 華麗なる青春スタートライン。


 新しい生活は、とても暗雲で覆われています。


 私は心の中で再度涙してから、一度息をすって、くだんの優等生不良君へと警告の叫び声をあげた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ