もういない人に会えるカフェ
もう何年になるだろう・・・
私は、震災で飼っていた猫を喪った。
当時学生だった私は、自宅の瓦礫を片付けたとき・・・
悲しみにくれた・・・
「ミア・・・」
だいぶ歳をとった猫だったが・・・
ベンガル種らしき雑種の、かしこくなつっこい猫だった。
自分がこれほどまでに、いくじなしな男であるか・・・
「あれからどれくらいか・・・」
会社の帰りに、カフェをみつけた。
カフェの中には、客がおらず・・・
執事風の服を着たマスターらしき人物が・・・
しかし・・・
黒猫をそのまま人間にしたような男性である。
「猫!?」
「はい。
黒猫亭にようこそ。」
「猫!?」
「はい。
お客様にお勧めなのは・・・」
手早くコーヒーを淹れ・・・
すっと、私の前に出す。
気付けば、私は・・・
カウンター席に座っていた。
コーヒーを飲み始めると・・・
目の前に、幼い印象の猫耳娘が現れた。
「ミア・・・」
年のころ、十代後半のようだった。
「ご主人様!
ようやく会えたにゃ!」
「ミア・・・
ごめんよ!
すぐに助けに行けなくて!」
「それが聞けて、安心したにゃ!
いつも・・・
ミアが呼ぶと、ご主人様は来てくれたにゃ!
でも・・・
もう行かなくちゃならないにゃ・・・」
「え!?」
「約束するにゃ!
今、人間に生まれ変わっているにゃ!
あと少しで、ご主人様のところに「帰る」にゃ!」
そう言うと・・・
ミアの姿は、消えていった・・・
「はッ!?」
気付くと、私は・・・
コーヒーを飲み干していた。
「お客さん・・・
会いたかった人に会えたんですね。」
マスターが言った。
「お代を・・・」
「頂いておりません。
ここは・・・
不本意な別れをした人を救うカフェでございます。」
店を出ると・・・
「あれ?
確かにカフェがあったはずなのに!」
カフェは、跡形もなかった。
そして・・・
春のある日・・・
「今年は、新人が来たんだ。」
上司が言った。
「皆川 美亜です。
よろしくにゃ!」
そう・・・
帰って来たのだ。
「ミア」が、人間となって・・・
絆は、確かにあったのだ・・・