表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/11

9話「穏やかな楽しみもあるものです」

「民から愛される王女でありたいですから……できるだけ」

「ああそういうことでしたか」


 それが国の平穏を守ることでもあると思う。


「はい。王女であることは変えられずとも皆の心に寄り添うことはできるはず、そう思っているのです。……と言っても、若干世間知らずな要素があるところなんかは変えようがないですけど……そこは、まぁ、置いておくとして、ですね……」


 完璧な人間にはなれない。

 誰しも欠けはある。

 ただ、それでも、それ以上の良いところを持った愛される人間になれたら――そう考えてはいるのだ。


「セレスさんは素晴らしい方ですよ」

「……口説いてます?」

「いえ、そうではなく。純粋にそう思うのです。王女でありながら威張っていないしいきってもいない、金だけを見ているわけでもなく、贅沢することだけを生きがいとしているわけでもない。素朴で可愛らしい女性です」

「え、っと……それって口説いてます?」


 違うと分かっていても敢えて言ってしまうという、呆れるような性。


「何回も仰いますね」

「ちょっとそう聞こえます……」

「それは失礼しました」

「い、いえ……」


 少し、沈黙があって。


「それに、セレスさんの衣服のセンスが好きです」

「えっ……」

「前から思っていたことなのですが、セレスさんはいつも落ち着いた服装をされていますよね。ドレスにしても過剰な装飾のないものですし。……そういうところも素敵だな、と」


 べた褒めされると顔が溶けてしまいそうになる。


「あ、ありがとうございます……でも、ええとその……ヴォルフさん、さっきからどうしてそんなに色々褒めてくださるのですか」


 問えば。


「貴女は貴女の良いところにもっと気づくべき、そう感じたからです」


 思っていたよりすんなりと答えが返ってきた。


 彼はこんな場面ですら冷静だ。


「他者に言われて初めて気づけることもあるのではないかと思いまして」


 そうか、だから真剣に教えてくれていたのか――何だかとても腑に落ちた。


「嬉しいです、ありがとうございます」

「参考になればと」

「はい! 元気になってきました!」

「いやいや……元から元気でしたよね……」

「あ、言われてしまいましたね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  セレスとヴォルフ、遠慮はなくても優しい会話が心地いいです。  肩肘張らず思ったことを言い合える相手は貴重ですよね。 [一言]  違うとわかっているからこそ聞ける、『口説いてる?』  そ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ