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ゲノム・レプリカ  作者: 伊都川ハヤト
Human after all

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2-9 始まりの合図 ⑧

  


 アドベンチャーニューワールドから十数キロ離れた、とある埠頭。

 

 海を眺めて愛を語り合っていたカップルの前に、それは突然現れた。


 全身黒づくめのインドラ――北上である。


 勢いをつけて海から上がると、北上はカップルに頭を下げて、彼らから少し離れた場所へ移動した。ガスマスクは、海に落下した時になくしてしまっていた。


 北上は髪をかき上げ、ベストとシャツを脱いで水を絞る。濡れた革靴が、歩く度に不快な音を立てている。


「あの……大丈夫、ですか……?」


 カップルの男の方が、彼女を後ろに下がらせながら、北上に話しかけた。二人の顔は突然の事に驚きつつも、北上の身を案じている。


「大丈夫です」


 固く絞ったシャツを軽く叩いて伸ばすと、北上はそそくさと着替え始める。


「あの……救急車とか、呼びましょうか?」


「いえ。不要です」


 頭を下げて礼を伝えると、北上は濡れたベストを肩に掛けて方角を頼りに歩き出した。


 見上げた空には、月が浮かんでいる。


 クシャミを一つ。日付が変わる前には帰りたいものだと、北上は独りごちた。


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