2-8 夢の終わり ⑨
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十七時四十分。
アストロエリア内の避難は概ね完了し、淡路や公安一課の人間たちは、一般客と共にスケートリンクを抜けて「アクア」方面へと移動していた。
当初は隣のダイナソーエリアを通過してエントランス方面へ向かう予定だったが、ハンターの出現情報を受け、急遽、変更を余儀なくされたのだ。
アナザーは、アストロエリア内にのみ出現している。
これ以上の脅威はないだろうと判断して、淡路は足を反転させて再びアストロエリアへと向かった。
その途中、エントランスへ向かう人の流れの中に、淡路はよく見知った姿を発見する。
「リリカちゃん?」
「淡路さん!」
学生らしきグループから離れて、リリカが淡路に駆け寄った。
「あの、淡路さん。ごめんなさい、私……」
犯行予告を受けた場所へ出向いたことを後悔し、リリカは言葉を探している。
淡路はリリカに、直ぐに避難するようにとだけ伝えた。お説教をしているような時間はない。
「ヒカル君は、一緒じゃないね」
淡路の口調は、断定していた。
しかしヒカルの名前を耳にした途端にリリカの表情が変わったのを見て、淡路は背筋に薄らと冷たいものを覚える。
リリカが、淡路のコートにしがみ付いた。
「淡路さん! ヒカル、アクアで見たの。でも、何度も何度も連絡してるのに、全然出なくて……!」
淡路の脳裏に、アオイの姿が浮かんだ。
淡路はリリカを宥めて、友達と一緒にエントランスへ向かうように伝える。出来るだけ早くここから離れるようにと念を押すと、淡路は直ぐにアストロエリアへ向けて駆け出した。
無線で連絡を試みるも、アオイからの返答はない。
淡路の額から、汗が零れ落ちる。
アオイのスマートフォンの位置情報を確認すると、淡路は林の暗がりの中へと飛び込んでいった。




