2-8 夢の終わり ⑦
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同時刻。
アストロエリア傍の林の中。
暗闇に紛れて、中林はアンズとキツネの様子を眺めていた。彼は普段のように白衣姿ではあるものの、老人の変装はしておらず、本来の青年の姿だ。
アンズがキツネから狙うことは、中林の予想通りだった。今、アンズは密集した木々の中へキツネを追い込み、彼の持つ武器を無効化することを狙っている。
彼方こちらで悲鳴が上がり、銃声が響く。
発砲しているのは一人だけだと気付いて、中林は其方へ意識を向けた。
銃声の主は、最小限の攻撃でアナザーを怯ませるに留めている。半端な攻撃は、悪戯に分裂させるだけとなる事を理解しているようだ。
頭の回りそうな人間がいるようだと、中林は口元を歪ませて笑った。
再びアンズとキツネとに意識を向けた時、中林は、二人に近づく別の気配を察知する。ハンターのそれではない。しかし、どうやら、人間でもない――。
その正体に気付いた時、中林は再び運命が動き始めたことを悟った。
「ヒカル。聞こえるか、ヒカル」
ヒカルのスーツに組み込んだ無線機に、中林は呼びかける。
少しの間を置いて、ヒカルの声がそれに応えた。彼の息は、上がっている。
中林は構わずに、興奮するまま言葉を続けた。
「ヒカル。君の姉さんが危ない! 直ぐに先ほどのエリアまで戻ってくれ!」
中林の目は、暗闇の中を走るアオイの姿を捉えていた。




