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ゲノム・レプリカ  作者: 伊都川ハヤト
Human after all

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54/408

2-5 あなたは最高 ①

五、あなたは最高


 ヒカルが目を覚ました時、彼の体は知らない部屋のベッドの上にあった。上半身を起こし上げて、ヒカルの目は直ぐにリリカの姿を捉える。


 リリカはベッド脇の椅子に腰かけて、スマートフォンを握りしめたまま、ヒカルの足元で伏すようにして眠っていた。リリカの服は所々が砂埃や土で汚れているが、彼女に目立った怪我はないようだ。


 すっかり安堵して、ヒカルはベッドの枠にもたれるようにして部屋の中を見回した。


 時計は、二十時を過ぎたところ。

 個室の中は薄暗く、少し寒い。ここは病院のようだ。


 ベッドサイドテーブルには、酷く汚れたスマートフォンが置かれている。その横には、ヒカルが身に着けていた衣服が畳んで積まれていた。


 洋服の上にメモが置かれているのを見つけて、ヒカルはそれを手に取った。それは病院の職員がアオイからの伝言を書き留めたもので、迎えの時刻が書かれている。


 ヒカルは、胸に手をあてた。そこに伝わってくる鼓動は、彼が確かに今を生きていることを証明している。


 ヒカルは無我夢中だったので、あの時なにが起きたのかよく覚えていない。だが校舎が崩れ始めた時、彼は自分の体が咄嗟に動いたように記憶している。


 ヒカルはふと、ここが病院であることを思い出して不安を覚えた。気を失っている間に、体を検査されていないかと考えたのだ。


 しかしヒカルのその不安は、スマートフォンに届いていた中林からの連絡が解決した。中林は医師として潜り込み、ヒカルの体の秘密は彼によって守られていたのだ。


 不安に思うことはないのだと理解すると、ヒカルは途端に瞼が重くなるのを覚えた。他の友人たちや学校はどうなったのだろうと考えたが、それらは直ぐに遠くへ消えていく。


 微睡の中。ヒカルは、誰かの声を聞いた。その声は繰り返し、何かを伝えようと囁いている。


 遠くで、ガラスの割れるような音。しかし何故かヒカルは、それが現実ではなく夢だと確信している。


 夢の中、暗がりに明かりがついて、アオイが顔を出した。彼女は、髪も眼も普段とは別の色をしている。現実にアオイの髪や眼の色が変化したことなどないはずなのに、ヒカルはそれを不思議と懐かしく思った。


 アオイに手を取られ、ヒカルは共に歩き出す。吐く息は白く、空気は肌に刺さるようだったが、アオイの手の温かさがヒカルを安心させていた。


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