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ゲノム・レプリカ  作者: 伊都川ハヤト
Human after all

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31/408

2-1 予感 ①

第二部 Human after all



一、予感


「ヒカル……?」


 リリカの言葉を受け止めた背中が、殴られたような衝撃を覚える。ヒカルは、ゴーグルとフェイスガードで覆われた自分の顔が、青ざめて凍り付いていくのを覚えた。

 月は欠けていて、現場は薄明り。いつものように変装し、顔は誰にも見られていない。


「違うの? ねえ、あなた……」


 頼りなさげな、リリカの声。


 近づいてくる足音。跳ね上がる心音。敗れたスーツから露出した左腕が、風の流れを痛いほどに感じている。


 ヒカルの頭は混乱して何も考えられなくなり、額から頬を伝って大粒の汗が流れ落ちていく。どんな敵と対峙している時でも感じることのなかった震えを、ヒカルは今、確かに感じている。


 東條ヒカルは、巷でハンターと呼ばれるアナザー狩りの少年である。しかしその正体は、誰にも明かされていない。それは家族にも、友人にも、そして、恋人にさえも――。

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