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ゲノム・レプリカ  作者: 伊都川ハヤト
Another

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210/408

4-3 月の裏側 ⑥



 十二時半。


 昼食を終えたヒカルは、ダイニングテーブルでポッチーの箱を並べていた。ドミノのように並べて倒してみたり、縦に積んでみたりと繰り返しているが、彼はそれを楽しんでいる訳ではない。ヒカルの目は、目の前のポッチーではなくソファへと向けられている。


 ソファではリリカが横になって、友達とチャットで盛り上がっていた。皆の話題は、昨日のバレンタインについてだ。友人の美津野ヒマワリと及川マリィも、それぞれ彼氏や家族に手作りのチョコレートを渡したのだという。


「マリィのチョコ可愛い~」


 ソファから聞こえてくる単語で、ヒカルは胃にチクリとした痛みを覚えた。体調はもう回復しているはずなのだが、チョコレートという言葉を聞く度に胃が小さな悲鳴を上げる。


 ヒカルは今、リリカの気を惹きたい一心でポッチーの箱を手にしている。昨日はリリカからポッチーゲームを提案されたはずなのだが、彼女の中では既に忘れ去られているようなのだ。


 かといって自分から提案する勇気もなく、ヒカルはさり気ないアピールを繰り返している。


 ヒカルがリリカの気を惹きたい理由は、他にもあった。


 今から、一時間程前のこと。淡路から連絡を受けたヒカルがチャットを確認すると、そこには第二東京タワーで開催中のイベントについて記載があった。ヒカルはこれに、リリカを誘いたいと思っている。


 一方、リリカも、チャットで友人たちとその話題になっていた。昨日、ヒマワリが彼氏と第二東京タワーの水族館へ行ってきたというのだ。




  マリィ:いいなあ。綺麗になってた? イルミもやってるんでしょ~?


  ヒマ:そうそう! めっちゃ綺麗だった。おススメ。


  リリィ:私も行きたい! Bonnカフェって行った?


  ヒマ:混んでて無理~。リリカは誕生日に連れてって貰ったら? 


  マリィ:そうそう! リリちゃん、カップルフォト撮ってきて!




 

(カップルフォトねえ……)


 友人から送られてきたハッシュタグを検索すると、SNS上には既に撮影を終えたカップルの様々なツーショットが並んでいた。イベント期間中に写真を撮ってSNSに投稿し、最も多くの「イイね☆」を獲得したカップルには賞金と記念品が贈られるというのだ。


 リリカは体をソファの上に起こして、それからチラリとヒカルの方へ目をやった。


(でも……ヒカル、こういうの苦手だしな~)


 リリカの目には、何故かポッチーの箱で遊んでいるヒカルの姿が映っている。


 ヒカルはリリカと入れ違いに、視線を自分の手元に戻していた。何気なく傍にあったカップの縁にポッチー箱の角を乗せたところ、それが絶妙のバランスでピタリと動きを止めたのだ。ヒカルは静かに、興奮している。


 ふと、ヒカルは視線を感じたように思い、リリカの方を見た。しかしヒカルがそうした時には、リリカの視線は手の中のスマートフォンに向いている。


 そうして互いに言い出せぬまま、午後の授業が始まった。



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