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ゲノム・レプリカ  作者: 伊都川ハヤト
Another
193/408

4-2 愛のかたまり ①

二、愛のかたまり


二〇×二年 二月 十四日 月曜日


 東條家。ダイニング。


 時計を確認して、ヒカルは学校から貸与されているタブレットPCの電源に触れた。新型インフルエンザの大流行のため、学校は急遽オンライン授業になっている。


 テーブルの向かいでは、リリカが同じようにしてタブレットPCに向かっていた。既に朝のホームルームが始まっているようで、彼女はイヤホンを着けてなにか聞き取りながら手元でメモをとっている。


 PCモニターに担任の上川が映ると、ヒカルはヘッドホンを着けて音量を調節しながら彼の言葉に耳を傾けた。


 上川は、今週一杯は自宅学習になる予定だと告げた。部活動も休止だという。


 上川の言葉を聞いて、クラスメイトからは絶望の声が上がった。その中でも一際目立つ声が友人の山田だと気付くと、ヒカルは声を出さずに笑う。


 山田少年は野球部で、春の大会に向けて練習していたのだ。インフルエンザの大流行という理由があるとはいえ、彼は部活の練習が出来ないことを嘆いている。野球部は、既に半数近くがインフルエンザで出席停止となっていた。


 PCモニターには、今後の課題の提出方法や緊急時の連絡先について書かれたプリントが表示されている。だが上川が不慣れなために、それは大分斜めに写っていた。一部分は、判読が難しい状況だ。


「先生。プリントが、確認出来ないようです」


 控えめな声。クラス委員の長山だ。


 上川は試行錯誤の末、長山の提案もあって、印刷物をカメラに映すのではなくデータを共有する方法で皆にプリントの内容を確認させた。定年間近の上川は操作を覚えたことを喜び、クラスメイトは彼に拍手を送っている。


 ヒカルも優しい気持ちになって、同じように拍手を送った。


 テーブルの向こうのリリカは、それを不思議そうに見ている。


 後で話すよと、ヒカルはリリカに目で語りかけた。


 ホームルームが終わると、直ぐに授業が始まる。リリカの一限は英語で、ヒカルは数学だ。


 画面に現れた数学教師の北上タツキは、相変わらず黒のスリーピースにグレーのシャツという出で立ちだった。鉄仮面と揶揄される彼の表情は、今日も硬い。


 ヒカルのクラスの男子はスキー合宿中に北上に叱られたこともあって、皆は一層真面目に授業を受けている。


 ヒカルはノートを広げると、早速教科書の練習問題に取り組み始めた。



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