3-9 unmask ⑬
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同時刻。
鳴り響くサイレン。廊下から響く、騒がしい音。
向島は目を覚ますと、軽い違和感を覚えて額に手を当てた。いつの間にかソファで眠っていたようで、サイドテーブルには冷え切った紅茶のポットが置かれている。
不思議な夢を見ていた。様々な惑星が、砂糖菓子のように粉々に崩れていく夢。その中には、見覚えのある愛おしい青い星も含まれていた。
向島はその夢の中で、美しい少女の両腕に抱かれ、子どもの頃の自分へと姿を変えていくのだ。それは不思議で、それでいて温かい夢だった。
スリープになっていたスマートフォンを起動させると、画面はアオイへ向けて打っていたチャットの編集画面のまま。向島は、その文面を削除した。
カーテンが、閉じられている。覚えのない事ばかりだと、向島はそれを不思議に思う。
陽の光を求めて立ち上がると、向島はカーテンを開いた。
目を細めて辺りを見下ろし、そして彼は、眼下のスキー場に警察と思われる人間たちがワラワラと溢れていることに気付く。
一体なにがあったのかと、向島は警察の一人の動きを目で追いかけた。それは雪の上をドタドタと走り、それから遠くを指して仲間になにか知らせている。
コースをなぞるように、向島は段々と視線を移動させていった。
「――嘘から出た誠、というやつか」
向島の視線の先には、昨日とは形を変えた山の姿があった。
休暇は終わりだなと、向島は舌打ちする。
彼のスマートフォンにアオイから仕事の連絡が入ったのは、それから程無くしてのことだった。