表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲノム・レプリカ  作者: 伊都川ハヤト
progress
148/408

3-6 大胆に、情熱的に ⑤



 二〇×二年 二月 四日 金曜日


 キオスクで働く静野ヨシエは、勤続二十年のベテランだ。彼女はいつも東京駅のホームから、旅立つ人々の安全を祈り見送っている。


 今日は朝から、学生の団体を見送った。長野方面へ向かうことから、恐らくスキー合宿なのだろう。学生たちのワイワイと楽し気な様子をみると、ヨシエは自分も学生時代に戻ったような若々しい気持ちになった。


 それから一時間程して、ヨシエは珍しいものを目撃することになった。二メートルを優に超える大男と、絵画に描かれるような美女の組み合わせだ。彼らは人目を惹いていていたが、当人たちにそれを気にする様子はなかった。


 大男は首から唐草模様のガマ口を下げていて、キオスクでは弁当とペットボトルの麦茶と冷凍ミカンを買った。彼は電子カードで決済したのだが、一本一本がちくわくらいの太さの指でカードをつまむ様子は面白くもあった。


 その二人が列車に乗り込んだ少し後、今度はキオスクの前を、キャリーケースを牽いた男性が通過していった。品の良いコートに身を包み細身のグローブをはめたその男性は、彫刻のように整った顔立ちで人目を集めていた。


 これには思わずヨシエも見惚れてしまい、思わず仕事を忘れそうになった程だ。彼がグリーン車へ乗り込んでいくその後姿でさえ、まるで映画のワンシーンのように輝いていた。あの瞬間、彼に目を奪われなかった者は恐らくいないだろう。


 そうして、現在。ホームは、出張と思われるビジネスマンや、旅行へ向かう家族連れで賑わっている。彼らの楽し気な表情を眺めて、ヨシエは今日も元気を貰っているのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ