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3-3 boy ⑦
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十五時五十分。
自宅を出て近所のスーパーへ向かう途中で、ヒカルは制服姿の女の子とすれ違う。
肩で切り揃えられた、艶のある黒髪。
(西園寺さん――?)
振り向いて、ヒカルは直ぐに人違いだったと気付く。髪型が少し似ているだけで、やはり別人だ。
制服姿の女の子は片手でカバンを怠そうに持ちながら、坂の方へ歩いていく。
前を行くリリカに声を掛けられて、ヒカルは慌てて彼女を追いかけた。リリカに話しかけながら、彼の脳裏では黒髪の少女が目に涙を溜めて微笑んでいる。
あの日、観覧車で交わした、二人の約束。
もう会うことはないのだろうと、ヒカルは自分に言い聞かせていた。