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ゲノム・レプリカ  作者: 伊都川ハヤト
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3-1 (don't) wake me up ⑤

 


 十六時。


「アーオーねーえー!」


 アオイがキッチンで作業している所へ、リリカが飛び込んでくる。理由は、聞かずとも予想が出来た。


「なあに? 淡路に、ヒカルを取られちゃった?」


 アオイは手元でそば粉を捏ねながら、リリカの方へ笑いかけた。

 既に二回目の挑戦となっているが、そば粉は一向に練り上がる気配がない。


「ちっちゃいヤカンで、お湯沸かしてるの! コーヒー豆もゴリゴリしてて。わざわざ外で! こんなに寒いのに」


 信じられないという口ぶりで、リリカはスマートフォンで撮影した写真をアオイの前に突き付ける。


 なんだかんだ撮影している辺り、リリカも興味があるのではないかとアオイは思った。単に、SNS更新のためのネタ集めかもしれないが。


「わざわざ外でコーヒー淹れながら、腹筋とか背筋の鍛え方とか話してるの! ヒカルがマッチョになったらどうしよう……」


「マッチョっていう程には、ならないと思うけど……」


 アオイは、無意識にヒカルと自分の部下とを比べていた。ヒカルが能登や城ヶ島のような体型になるとは、とても考えにくい。


 なにより今のアオイには、弟の筋肉の行く末よりも手元のそば粉が気に掛かっている。 


「リリちゃんも、コーヒー貰ってきたら? ヒカルは、リリちゃんと一緒が好きだから」


 アオイがカップの方を指すと、リリカは少し考えるような、悩むような素振りを見せた。照れているのだ。


 キッチンで手伝えることはないかと尋ねられたので、アオイは、手伝ってほしい時が来たら声を掛けると返した。


「じゃあ、手伝えることあったら、いつでも呼んで! アオ姉がウドン作ってるって、伝えておくから」


 リリカはお気に入りのカップを手に、テラスから庭の方へ出ていく。


 開いたガラス戸の向こうからは、微かにコーヒーの香りが運ばれてきた。


「蕎麦、なんだけどねえ……」


 どうしたものかと、アオイは頭を抱えた。

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