おやすみ、そして名前は、
人は何故、消える時に限って、後悔をするのだろうか。
想えば、俺は恥の多い人生を送ってきた。
自分に何か優れた才能がある訳でも無いのに、すぐ人を見下した。
でもかと言ってそれを行う度胸も、それを云う勇気もなかった俺は、いつしか上っ面だらけの言葉を人に対して吐くようになった。
そして自分にはどうせ何も出来ないと云う免罪符を作り、才能を作ろうとすらしなかった。
嗚呼、これは何者にも成れなかった、唯の屍として生きた俺に対する神様からの罰だ。
でも、そんな、恥と罪に溢れた俺を、世界でたった1人、たった1人だけ、信じてくれた人が、居たはずなんだ。
みんなが嫌がって居た俺の話を、面白いと言って、最期まで聞いてくれた、
周りから才能がないと言われた俺の絵を、素晴らしいと言って、最期まで見てくれた、
こんな、嘘と恥で構成されて居るようなただの肉片を、人として認めてくれた、
思い出せ、思い出せ、
朧げになった記憶の中を、必死に泳いだ。
春のような、暖かくて、優しい名前をした、誰かを、
記憶の中、1人置いて逝きたくは無いんだ。
あ、あ、やっと見つけた、
そうだ、貴方の名前は、
刹那、世界が崩れる音がした。
「どんな事があっても、これだけは忘れないでくれ」
「あのね、僕はね、君のする話が大好きなんだよ。唯斗。」