仕合わせを、
帰る時に、担任に今までのお礼を伝えた。今までと言ってもまだ出会って2ヶ月だが
「先生」
「はあい」
「今日もありがとうございました。」
担任は困ったような驚いたような顔をした後微笑みながら
「どういたしまして」
そう言っていそいそと部活に行ってしまった。
そういえばあいつが部活動の作品制作がいよいよ大詰めだと自慢げに話していていたな。嗚呼、俺もっとちゃんと部活に行けばよかったなかな。もしもちゃんと行けていたら何か創れていたのだろうか。なんて。
その日、俺は家に帰らなかった。理由としては世界最後の日を家で過ごしたくなかったからだ。普通の人間なら世界最後の日くらい、家族と暖かいひと時を過ごしたいと思うのかも知れないが、俺は違う。何故なら、家族は俺を嫌っているからだ。それに俺は家族の事が嫌いだ。
所詮、俺は「失敗作」だったらしく弟が生まれる迄の代替えに過ぎなかった。いつもいつも弟と俺の成績、才能を比べてくる両親。そしていつも弟よりも駄目な結果を伝える俺。
そんな事ばかりやって居たからだろうか、遂に俺は両親にこんなことを言われた
「お前は失敗作だ。」
「産まなければよかった。」
「なんでお前は紬みたいに普通で居られないんだ」
と。言われた時、あ、この人たちは最初から俺の事を一人の人間として見てなかったんだ。そう思った。
そんな出来事があって以降、俺は家族と話していないし、家族は俺と話そうとしなくなった。
きっと、家族は俺の事が嫌いだ。それに俺も家族のことが嫌いだ。この世界が崩れても、この事実は変わらないだろう。
でも、それでも尚、家族の仕合わせを願ってしまう俺は、どこか普通じゃないんだろうな。そんなことを思いながら、駅の改札を潜った。