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46話 メイドも風邪は引くようです

遅くなってすみません!

 テストから1週間、今日は珍しくリアラに起こされるよりも前に起きる事ができた和樹。

 しかしそれは別に早く起きれたという訳ではなかった。


「ん? もう7時か……」


 リアラに起こされる事が習慣になっていた和樹は、アラームをかける必要もなくなっていた。だが、今日は7時になってもリアラが起こしに来なかった。


「もしかしてリビングで倒れてるとか?」


 しっかり者のリアラが起こしに来ないという事は今まで無かった。もしかすると何かあったのかもと心配になった和樹は、急いでリビングに向かった。


「え……あ、もうこんな時間ですか、すみません起こしに行けてなくて」


 リアラは朝食を作っていたようだが、ぼーっとしていて時間の事を気にしていなかった。


「おはよう、起こしに来なかったから何かあったのかと思ったけど……」


「すみません、少しぼーっとしてました」


「いや、何もなかったならいいんだ」


 そもそも起きるのにもリアラを頼ってしまっているのが悪いので、リアラが謝る必要はない。今までは自分で起きていたのに、リアラが来てからはリアラに甘えてしまっているのだ。


「朝食はできましたので」


「ああ、ありがとう」


 いつも通りの朝食を食べる。朝食に関しては曜日によってメニューは固定している。その方がリアラもいちいちメニューを考えなくて済む。


 和樹は味噌汁をすする。だが少しだけ違和感があった。


(……ちょっとだけ濃いな)


 普段からリアラが作った味噌汁を飲んでいる和樹は、味噌汁がいつもより少しだけ濃い事に気がついた。

 おかずや副菜には多少なりソースにアレンジなどを加えて飽きさせないようにしてくれるリアラだが、おかず本体の味の本質は変わらず、一定の味が保たれている。

 特に味噌汁に関してはいつも同じ味。和樹の好みの味を一切崩さず、同じ味を保ち続けている。

 しかし、今日に限っては少しだけ出汁の味が濃い。不味いというわけではないが、いつもとは違う味噌汁に過剰に反応してしまっただけだ。


(……たまにはこういう事もあるよな。リアラも人間なんだし)


 身体能力に関しては人間か怪しいところではあるが、それ以外はれっきとした人間だと、あまり気にしない事にした。



 ―――――――――――――――



「……やっぱりおかしい」


「ん? 何がだ?」


 昼休み、和樹はやはりリアラの様子がおかしいと弁当を食べながら思っていた。

 授業中にしてもぼーっとしていて、当てられた時も反応が遅れていたり、移動教室の際もぼーっととしていて慌てて準備をしていた。

 極めつけは弁当。やはり少しだが味が違う。微妙な変化なのだろうが、普段から食べ慣れている和樹からすれば気づかない訳がない。


「リアラ」


 和樹は少しだけ席を後ろにずらし、リアラに近づく。今はリアラも弁当を食べているが、


「……あ、はい、どうされました?」


 やはりぼーっととしていて反応が遅い。それにいつもよりも息が荒いように見える。


「ちょっと……」


 和樹はリアラの額に手のひらを当て、自分の体温と比べてみる。すると予想通りリアラの体温は自分の体温よりもかなり熱く感じた。


「やっぱり熱あるな……息も荒いし」


「え……いや……大丈夫です」


「駄目だ、無理はするな。今日は早退しろ」


 普段から任せっきりになっているのは自覚しているので、体調が悪い時に無理はさせられない。


「……わかりました」


「職員室に行って早退するって言ってこい」


「はい」


 リアラは渋々といった感じで返事をして、教室を出ていった。


「大丈夫かな、リアラちゃん」


「……どうだろうな」

 

「そんなに心配なら一緒に帰って看病してあげたら?」


「いや……リアラは大丈夫だろ」


 おそらく普通の人よりは体は丈夫であろうリアラを、和樹は心配しつつも大丈夫だろうと思っていた。

 だが茜は、


「リアラちゃんだって女の子だよ?しんどい時って一人だと心細いものだよ」


「……」


「別に行ってあげたらいいだろ、学年3位の和樹さん」


 友樹にも行ってあげろと言われる和樹。少し考えた後、


「……行ってくるわ」


「おう」


 和樹は教室を出て職員室の方に向かう。しばらくするとリアラの姿が見える。やはり熱のせいか、足取りも重く、少しフラフラとしている。


「リアラ、大丈夫か?」


「あ、和樹様……大丈夫です」


「うん全然大丈夫じゃないな、俺も帰るから」


「いや、そこまでしていただかなくても……」


「いいから、行くぞ」


 リアラの反対を押しのけて、和樹はリアラと職員室に向かった。

 職員室についた和樹は、白崎先生に事情を説明した。


「わかった、今日は帰っていいぞ」


「ありがとうございます」


「ああ、リアラが体調悪いからって変な事するなよ?」


「しませんよ!」


 冗談は言ってくるが、自分が体調不良でもないのに帰らせてくれる白崎先生は、かなり優しい先生だ。


「後で課題は出すがな」


「えっ……」


「冗談だ、リアラもかなり悪そうだし、早く帰ってやれ」


「わかりました、ありがとうございます」


 和樹とリアラは職員室を後にする。

 思ったよりもリアラの体調は悪くなっていて、和樹はもう一回額を触ってみると、さっきよりも熱くなっていた。


「リアラ、そこで待ってろ」


 和樹は教室に戻り、自分とリアラのカバンを持って教室を出た。

 

 ドラッグストアで薬を買う事も考えたが、それよりも先に帰って安静にさせたほうがいいと、真っ直ぐ家に向かう。


「はぁ……はぁ……」


(こんなになるまで気づかないなんてな……)


 リアラが隠しきれていたのもあるが、それでも体調不良に気づけない自分の情けなさに、和樹は自分に腹を立てる。


「リアラ、乗れ」


 見ていられなくなった和樹は、リアラの前でしゃがみ込み、背を向ける。


「……はい」


 熱のせいか素直なリアラは、ゆっくりと和樹の背に乗った。


「寝ててもいいからな」


「はい……すみません」


 余程辛かったのだろう、リアラは和樹の背中に乗ってからすぐに寝てしまった。


(やべえ、やっぱり柔らかい……そんなこと思ってる場合じゃないな)


 和樹は背中の柔らかな感触に心が揺さぶられるが、切り替えてできるだけリアラを起こさないように急いで帰る。


 マンションにつくとすぐに寝室に運び、ベッドに寝かせる。体温計で熱を測ってみると、39.2度と表示された。


「マジか……」


 取り敢えず今日は様子を見て、明日も酷いようなら病院で見てもらう事にした。


「薬あったっけな……お、あったぞ」


 和樹は部屋の色々なところ見て、薬がないか探した。買った覚えが無かったのだが、リアラが買っていたのか机の引き出しに薬が入っていた。

 水と薬を持って寝室に戻ると、丁度リアラが目を覚ましていて、


「リアラ、薬持ってきたから飲んでまた寝とけ」


「はい……ありがとうございます」


 リアラは起き上がって薬を飲むと、またすぐに眠ってしまった。

 

 和樹はリアラが眠ったのを確認した後、コンビニに行ってスポーツドリンクと熱冷ましシートを買い、すぐにマンションに戻ってきた。


「……あと何すればいいんだろ」


 熱冷ましシートをリアラの額に貼り、スポーツドリンクはいつでも飲めるようにそばに置いている。後は何をしたらいいのか分からず、和樹は困惑する。

 そして考えた結果、どうせ勉強も手につかないと判断した和樹は、リアラのそばで待機しておく事にした。


 薬を飲んでから6時間、ようやくリアラが目を覚ました。


「起きたか、体調はどうだ?」


「はい……大分楽にはなりました」


 言っている通り顔色も大分良くなっていて、熱を測ってみると38.0度まで下がっていた。


「何か食べれそうか?お粥なら作れるぞ」


「……お願いしてもいいですか?」


「ああ、ちょっと待ってろ」


 しばらくして、和樹は卵入りのお粥を作って寝室に戻ってきた。


「ほら、持ってきたぞ」


「ありがとうございます」


「食べられるか?」


「……」


 リアラは無言でじっと和樹の事を凝視する。そこで和樹はなんとなく察した。

 和樹はスプーンでお粥をすくい、息を吹きかけてお粥を冷ます。


「はい」


 口元に差し出されたお粥を、リアラはゆっくりと食べる。


「……美味しいです」


「なら良かった」


 どうやら食欲はあったようで、残りのお粥も全部食べてしまった。


「ごちそうさまでした」


「まだ何かしてほしい事はあるか?」


「……では申し訳ありませんが、体を拭いていただけないでしょうか。汗でベタついて気持ち悪いのです」


「……わかった」


 言い出したのは自分なので、今更やっぱりやらないとは言えない。

 和樹はタオルを濡らして寝室に戻る。すると既にリアラは服を脱いでいた。背中を向けているので、前は見えていない。


「すみません、お願いします」


「ああ」


 和樹は痛くならないように優しく背中を拭いていく。


(……汗をかいてるから余計になんかエロい……いや、リアラがしんどいのに俺がそんな事考えてどうする……)


 背中を何とか全て拭き終わり、ホッとする和樹。


「では前を」


「ごめんそれは自分で」


 冗談も言えるほどには回復してることが分かったので、取り敢えず一安心する和樹。


 全身を拭き終わったリアラは、和樹が用意した服に着替える。この調子だと、明日には回復しているだろう。


「ごめんな、俺がもっと早く気づいてればな」


「いえ、私が悪いのですから和樹様が気にする事はありません」


「……けどな次こんな事があったら怒るぞ。体調が悪かったらすぐに言え」


「はい……申し訳ありません」


「わかったならいいよ」


 和樹は風呂に入る為に寝室を出ようとする。


「あ……」


「ん? どうした」


「……早く戻ってきてください」


 弱々しい声でリアラはそう言った。良くなってきたとはいえ、やはり一人は心細いのだろう。


「わかってるよ」


 和樹はリアラの為にいつもより早く頭と体を洗い、寝室に戻ってきた。


「寝てても良かったんだぞ」


 リアラは和樹を待っていたようで、まだ起きていた。


「いえ……早く戻ってと言ったのは私ですし」


「……早く治してくれ、リアラがそんな弱々しいの見てられないからな」


 リアラが辛そうなところは見たくない。リアラにはいつも元気でいてほしい、ただそれだけが切実な和樹の願いだった。


「はい。じゃあ、手を握っててください」


「わかった」


 いくらなんでも病人と一緒に寝る訳にはいかないと、椅子を用意してリアラの手を握っていた和樹。リアラ寝た後もしばらく手を握っていたら、知らないうちに眠気が来てたようで、和樹は椅子に座ったままベッドにうつ伏せて寝てしまった。

 




 

 

 





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