45話 メイドは悔しい
少なくてすみません!
テストが帰ってきた日の昼休み。慢心はしないとは思っているが、初めて一桁の順位にランクインできたのは嬉しくないわけがない。
上機嫌な和樹はいつも楽しみにしている弁当の蓋を開けた。
「……?」
(なにこれぇ)
和樹の弁当の中身は、いつもより米が少し多いうえに、おかずが、アスパラのバター醤油炒め、ミニトマト、きんぴらごぼう、茄子の煮物という野菜だけのレパートリーになっていた。
普段はハンバーグや唐揚げ、何かしら肉類入っている筈なのに、今回の弁当にはそれが一切無く、卵焼きすら無い。それに、和樹が少し苦手な梅干しも入っている。
「おお……野菜だけじゃん。遂にベジタリアンになったか」
「なってねえよ……楽しみにしていたのに……」
「でも何で? リアラちゃんならもっと和樹君が好きな物入れるでしょ?」
和樹は感づいていた。これはおそらく朝の行動が原因だと。
リアラの方を見ると、リアラ顔をプイッと逸してこちらを見てくれない。確かにやりすぎたとは和樹も思っていたが、まさかこんな反撃の仕方をしてくるとは思っていなかった。
「まあ……色々あるんだよ」
朝の行動なついて他の人にバラすわけにはいかない。自分でも恥ずかしい事をしたと反省しているのだ。
和樹は肉類が無い寂しさを紛らわすように、アスパラガスのバター醤油炒めをよく噛んで味わうように食べる。
「……でも美味いんだよなぁ」
野菜だけでもリアラはちゃんと味に気を使ってくれていて、しょっぱすぎないように絶妙に調整されている。
きんぴらごぼうもまろやかでコクも深く、繊細な旨味を感じる。こうして味わって食べると、リアラの仕事が凄いということが分かる。
「私のおかずを分けようか?」
雫は優しさで自分のおかずを分けようと提案する。
雫の弁当もリアラが用意したもので、雫の方は和樹と同じおかずに加えて、ミニハンバーグと唐揚げが入っている。
一瞬貰おうかと思った和樹だが、後ろから食べては駄目ですと言わんばかりの謎の圧力がかかる。
「……大丈夫だ」
「そうか? んぐ……美味しいぞ」
朝の出来事を知らない雫は、和樹の前で美味しそうに唐揚げを食べている。
和樹は肉を食べたい欲を抑え、我慢して野菜をむさぼり食うのであった。
―――――――――――――――
「なあ……俺が悪かったから、機嫌直してくれよ」
学校から帰り、和樹はソファーでずっとリアラの頭を撫で続けている。それでも和樹の方を向こうとはしない。
「……な〜あ」
和樹はリアラの頬を痛くない程度にむにむにと触る。
(サラサラで柔らかい……)
そんな事をしている場合ではないが、あまりに触り心地が良いので、和樹はしばらくリアラの頬を触り続けた。
「なあ、何でもするからさ……あ、やべっ」
何でもするから、そう言うとリアラはすぐに和樹の方を向き、
「言いましたね」
「……はい」
「じゃあ今日は一緒にお風呂に入ってくださいね」
「それってどっちも恥ずかしくね?」
「いいんですっ、いいから今日は一緒に入ってください」
「……分かった」
むしろご褒美とも言える提案をされた和樹は、なんとも言えない気分になる。
リアラは急に体をこちらに向けて抱きついてくる。
「お弁当をあんなおかずにしてしまってはメイド失格ですね」
「いやリアラより優秀なメイドいないだろ」
「……膝枕しましょうか? どうやら眠たいようですし」
「いいのか?なら頼むわ」
殆ど寝てなかった和樹は、リアラの膝に頭を預けると、1分もしないうちに寝息を立てて寝てしまった。
「……和樹様」
「……」
「……寝ましたね」
リアラは和樹の頬にゆっくりと口を近づけ、キスをした。和樹は寝ているので当然気が付かない。
リアラは頬を赤らめ、
「……雫には渡しませんから」
和樹のメイドは思ったよりも独占欲が強いようだ。
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