33話 料理教室、再び
よろしければ見てくれたら嬉しいです。
言い争いといい、バイクに轢かれかけた事といい、かなり濃い内容の日の夜、雫はリアラに料理を教えてもらう為に和樹の部屋に来ていた。
「はぁぁ、疲れた」
「お疲れ様です」
いつもより労力を使った為、気持ち的にいつもより体が怠い。
「あんな女もいるのだな、助けてもらったのにお礼も言わんとは……」
雫は優花に初めて会ったが、既に優花への好感度はゼロだ。
「雫、あいつの話はしないでください、反吐がでます」
リアラは優花が嫌いになりすぎて、優花の話になると自然に口が悪くなる。
「……そうだな。それで、今日は何を作るんだ? 私は大した事はできないと思うが」
「そうですね……時間はありますし、唐揚げならまだ簡単に作れると思うので唐揚げにしましょう」
和樹も唐揚げなら何回も作ったことがある。漬けだれに鶏もも肉を漬け込み、しばらく寝かせたあとに片栗粉と小麦粉を混ぜた粉をまとわせて揚げる。火加減や味付けを間違えなければ比較的簡単に作れるだろう。
「家ではいつもメイド服なのか?」
雫は和樹の部屋にお邪魔する時は、いつもリアラがメイド服を着ているところしか見ていなかった。なので和樹は単純に気になって質問をした。
「そうですね、やっぱりメイド服が着慣れていますので」
それを聞いて雫は納得したようで、改めて料理に取り掛かる。
「ではまず鶏肉を食べやすい大きさに切ってください」
「わかった」
張り切って返事をした雫は包丁を持って鶏肉を切ろうとする。が、リアラの反応がちょっとおかしい。
「ちょっと待ってください」
「どうかしたか?」
「それは人を刺す時の持ち方です」
確かに雫の包丁の持ち方は明らかに物騒な持ち方をしていた。
「これは……こうです」
「す、すまない」
本当に料理が出来るのか心配になってきた和樹。
それでもリアラが教えているので、まともな品にはなるだろう。と、期待しながら待つことにする。
「……驚きました。食材を切るのはとても上手ですね。これなら教えなくても大丈夫です」
リアラは雫が鶏肉を切るところをしっかりと監視していたが、最初の包丁の持ち方からの心配が嘘のようで、スムーズに大きさも殆ど均一に切られていた。
「あっちでは沢山魔物を切ったからな」
魔物を切ることと食材を均一に切ることに関係はこれっぽっちも無いはずだが……もしかすると魔物を切るときでも大きさとか気にしていたのだろうか。……そんな事気にしてたらそのうちに殺られますね、はい。
「漬けだれは作りましたので、一時間ほど漬け込んでおきましょう」
リアラはボウルに入れていた漬けだれに鶏肉を入れて、ラップをして冷蔵庫に入れた。その後にリアラは米を洗って炊飯器にセット。後は1時間待つだけだ。
「あ、電話だ、ちょっと出てくる」
和樹は寝室に入って電話の発信者の名前を確認する。
「神様? 何のようだ?」
渋々和樹は電話に出る。
『やっほー久しぶり』
「何のようだ?」
『いやー学校では色々あったね、中々カッコ良かったじゃないか』
「……言いたい事はそれだけか?」
やはり神様はいつでも和樹の事を観察しているらしい。和樹は啖呵を切って発言したのは初めてだった為、少しだけ恥ずかしい気持ちがあった。あんまりカッコつける事は避けなければならない。別にカッコつけて発言したわけではないのだが。
『それだけかな……まあ後は元気にしてるかなって』
「全部見てるくせに……あ、そう言えば雫を当てたとき、最初はパーティに入れられたのは何故なんだ?」
『それは最初召喚するか迷ってたんだよ。メイドさんとの関係も良好みたいだしね。けど召喚したほうが面白そうだったから』
「……召喚するのはいいが普通にやってくれ」
和樹は本当に神様が何を考えているかは分からなかった。少なくとも気まぐれで行動する事が多いのは確かだ。と言うか普通とは何なのだろうか。召喚するだけで普通ではないが……気にしたら負けなのだろう。
『まあまあ、楽しそうだからいいじゃない』
「……切るぞ」
『えーもうちょっと話してもいいじゃん。まあいいや、じゃあね』
そう言って電話は切れた。相変わらずマイペースな神様だ。
リビングに戻ると、
「誰からだったんですか?」
「ああ、神様だった。元気にしてるか確認の電話」
「いつも見ているはずでしょう?」
「ちょっとからかおうとしたんだろ」
リアラと雫はソファーに座っていた。鶏肉を取り出して揚げるまではまだ時間はある。雫もいる事なのでゲームをする事にした。するゲームは安定のレースゲーム。
「はいリモコン、操作は教えるから一緒にやろう。ただ待ってるだけじゃ暇だしな」
「ゲームか、一度やってみたかったんだ」
当然雫はゲームをするのは初めてなので、操作方法も興味深そうに聞いていた。
「操作はこれぐらいかな」
「わかった、ありがとう」
雫も操作方法を理解したようなので、リアラの隣りに座ってレースの準備をする。
すると何故だろう、リアラは立ち上がって和樹の方を見る。
「ん? どうした?」
するとリアラはいつもゲームをやっている時のように和樹の足の間に座る。
「あ、あのリアラさん? 雫もいるんだけど……」
「……」
「おーい」
どうやら返事はしてくれないようだ。雫の方を見ると、驚いたような目をして和樹の方を見ている。
「な、何をしてるんだ! ……もしかしていつもそんな感じなのか!?」
「あー……いや……まあ、はい」
「……むぅ」
「ま、まあハンデみたいなものだ」
と苦し紛れに言ってみるが、疑いの眼差しが和樹を襲う。
切り替えてゲームをする。雫は初めてにしては思ったよりも操作が上手く、終わる頃には上位争いに参加してくるようになった。ゲームのセンスで言えばリアラよりは上なのかもしれない。
「勝てなかったけど面白いな! またやりに来てもいいか?」
「ああ、時間があれば来てもいいぞ。これからもリアラに料理を教えてもらうんだし、その時とかにすればいいさ」
ゲームが終わり、リアラと雫はキッチンに向かう。そして冷蔵庫からボウルに入れていた鶏肉を取り出し、片栗粉と小麦粉を混ぜた粉をまとわせていく。この作業は雫が行い、その間にリアラは野菜を切っていく。
粉を全ての鶏肉にまとわせた後は、充分に温めた油に入れて、こんがりときつね色になるまで揚げる。この作業ももたつくことなくスムーズに進み、リアラも味噌汁を作り、料理が完成した。
「なるほど、これなら私でも慣れれば簡単にできるな」
「注意する事は温かい油に水が入らないようにする事ですね。油が跳ねますから。漬けだれのレシピは後で渡しますね」
「ああ、ありがとう」
唐揚げは安定の美味しさで、カリッとした食感がとても良い。雫も満足げに唐揚げを食べていた。
あっという間に食べ終わり、食器を片付ける。時計を見ると午後8時。時間も遅いので今日はもうお開きにした。
「今日はありがとう、美味しかったよ」
「それは良かったです」
「あと……和樹……学校では助かった、ありがとう」
雫は少し頬を赤らめながら和樹にお礼を言った。
「ああ、気にするな」
「じゃあ……また明日な」
そう言って雫は自分の部屋に戻っていった。
「ふう、疲れたな」
「では和樹様」
「なんだ?」
「一緒にお風呂に入りましょう」
どうしていきなり風呂に一緒に入る流れになるのか和樹は全く理解ができなかった。
リアラは既にメイド服を脱ぎ始めていた。
「ちょっと待て! まずなんで一緒に入るんだよ!」
「擦り剥いて怪我をしてしまったようですし、私が優しく洗って」
「どっちにしろ染みるわ! てか最近一緒に入っただろ、身が持たない!」
リアラは和樹をからかいたいのらしい。あの時一緒に入った時は本当にヤバかった。一緒に入るにしてももう少し期間を空けたいものだと和樹は複雑な気分になるのだった。
幼馴染の性格やりすぎじゃね?って思っている人もいると思います。確かにちょっと大袈裟に書いてる部分はありますが、僕の友達の彼女がちょっと似たような性格でした。なので幼馴染はその人を少し参考にさせてもらってます。その友達は彼女と別れて今でも陰キャの僕と友達してくれてます笑
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