2話 簡単にバレてしまった
もしよろしければ見ていってください!
「男子高校生の部屋としては合格ですね。きちんと片付けられています」
朝、玄関の扉を開けた先にいたリアラ。目立ってはまずい為、和樹は取り敢えず部屋に案内した。
ゲームの中だけの存在と思っていたリアラが目の前にいる。その状況に和樹は頭の整理が追いついていなかった。
まずリアラは本物なのだろうか?和樹はリアラに聞いてみることにした。
「本物のリアラだよな?」
「はい、正真正銘和樹様のリアラです」
(『和樹様のリアラ』──そんな最高の言葉がこの世にあったのか。だが一旦落ち着こう。何故俺の部屋でメイドとして一緒に住むことになったんだ?)
「何で俺のメイドになったの?」
「和樹様が私をガチャで当てましたので、こうして地上に降りることができました」
ここにリアラがいると言う事は、ゲームではどうなっているのかと和樹は頭を悩ませる。もしかすると、リアラが出るのは一人限定なのかもしれない。
和樹はゲームから出てきた張本人に聞くことにした。
「ゲームではリアラはどうなったの?」
「私はもうゲームでは当たらないようになっています」
和樹はガールズブレイカーの排出キャラ一覧を見る。するとリアラの言っていた通りにリアラはゲームから消えていた。
消えていたというより名前だけが残って実体が消えていると言ったほうがいいだろう。
となるとやっぱりここにいるリアラは本物なのだろうかと様々な疑問が浮かぶ。
そもそもリアラは自分がゲームのキャラということを知っているのだろうか。
和樹はその事が気になり、
「リアラは自分がゲームのキャラって事は知ってるのか?」
「はい、理解しております」
「何でゲームからこっちに来れたんだ?」
「はい、それは……」
リアラは謎の人物によって、和樹のメイドになるようにと、こちらに送られた。そして気がつけば和樹の部屋の前に召喚されていていた。
その時には和樹の情報を何故か全て理解していたリアラ。正直これだけ話をしても、和樹の頭の中はまだ理解が追いつかない。
「そんな事あるのか……」
「なので和樹様の言う事なら何でも、エロい事でも構いませんが」
「何でだよ」
どうやらリアラは冗談も言えるメイドのようだ。
しかしまだ腑に落ちない。色々考えてみると、父からメールが来ていたことを思い出した。なので和樹は父に電話をかけてみることにした。
電話をかけると、2、3コールほどしたところで父が電話にでた。
『お、どうだ、ちゃんとメイドは来たか?』
「いや来たけどそうじゃない!何でリアラが俺のところに来たんだ?」
『いや、なんか昨日神と名乗るやつが来たんだよ』
なんとも怪しいやつが実家に来たもんだと疑う和樹。まずこの世に神が存在していると言う事が怪しすぎるが、取り敢えず話を進める。
「……それで?」
『お前がゲームでリアラを当てたから、リアラを召喚してメイドとして向かわせるって言われたんだよ』
「何だそれ」
「信じてないだろ、けどな、実際会ってみた時の雰囲気は他の人とは全然別物だったぞ」
と言うことは本当に父が会った人は神だというのだろうか?だが、何故こうなったかは理解することができたので良しとしよう。
『母さんも興奮してたぜ? なんせラノベのような展開になってるからな。今度そっちに行くから俺達にも会わせてくれ』
「会ってなかったのか?」
『ああ、俺も欲しかったよ。密かに狙ってたんだがな』
父がガールズブレイカーをやっている事を初めて知った和樹は驚きを隠せなかった。
「父さんもやってんのかよ!」
『母さんもやってるぞ。まあ有名だからな、やっていくうちにどんどんハマってしまってな』
「……まあいいよ、取り敢えずわかったから、もう切るよ」
『ああ、じゃあリアラちゃん、和樹の事よろしく頼むよ。素直じゃないが、いいやつだから』
「お任せください」
そう言って父は電話を切った。
「さて、何とか状況は理解できたが……」
銀髪にメイド服の美少女がこうして自分の部屋にいる。妄想の中だけと思っていた存在がこうして目の前にいる事に喜びを隠せない和樹だった。
「じゃあこれからよろしく頼むよ」
「こちらこそよろしくお願いします」
リアラは丁寧に頭を下げる。こうして見ると、本当にメイドのようにしか見えない。メイド喫茶などのメイドとは違う、本物のメイドの雰囲気が出ていた。
和樹は、リアラという存在に感動していた。
「本物のリアラなんだな」
「そんなに感動するものですか」
「当然だ! 艷やかな銀髪に美しい顔、抜群のスタイルに透き通るような肌、誰もが欲しいと思っていた筈だよ」
思はず熱弁してしまう和樹だったが、リアラの反応は思っていたのとは少し違った。
「あまり褒めないでください、恥ずかしいです」
そう言って顔を赤らめるリアラ。それはいつものクールな雰囲気とは違う、とても可愛らしい女の子の表情をしていた。
「可愛いな」
「ですから、褒められるのは嬉しいですけど、恥ずかしいです」
「ごめんごめん。けど、ゲームの中でずっとクールに振る舞っていたから、こうして俺に可愛らしい表情を見せてくれるのが嬉しくてな」
「───っ!?」
和樹がそう言うと更に顔が赤くなっていくリアラ。あまり褒められるのに慣れていないのだろう。
和樹は、自分で言ったことに少し恥ずかしくなったのか、目を逸らすようにスマホを見た。するとどんどん和樹の表情には焦りが見えてくる。
「やばい、もう少しで友樹が来る……。しかも茜を連れてくるだと……」
浜村茜、友樹の彼女であり、茶色の髪のショートカットで、胸は控えめだが、スタイルはいい。よく友樹と一緒に和樹と遊んだりもする友達。
和樹はメールが来ていたのを確認すると、メールには茜も一緒に行くと書かれていた。
「どうしようどうしよう、リアラの存在がバレたら騒ぎになっちまう」
「友樹と茜とは?」
「ああ、友達だよ。俺と一緒でガールズブレイカーをやってる。あいつらもリアラを狙ってたんだ」
茜もガールズブレイカーをプレイしていて、リアラを狙っていた。何なら友樹と和樹よりもリアラを欲しがっていた。茜は可愛いものに目がなく、ガールズブレイカーでも、特に可愛いキャラだけで編成したりしている。
「なるほど、それは挨拶しなければなりませんね」
「何言ってんだ! 多分リアラと会ったらあいつ可愛いもの好きだから何するかわからんぞ」
「それは……困りますね。和樹様にならどこを触られても構いませんが」
「えっ?マジで? ……って違う! マジでどうする? 早くなんとかしないと友樹たちが」
慌てているとインターホンが鳴った。不安に思いつつ、ゆっくりと玄関の扉の覗き窓を見ると、案の定友樹と茜の姿がそこにあった。
「やっべ、もうどうしようもないよ」
「覚悟を決めましょう」
「いや、待て」
リアラは焦る様子もなしに玄関の扉を開けた。急に扉が開き、目の前にいるのがリアラだと分かった二人は、驚きのあまり声が出ていなかった。
しばらく沈黙が続き、二人が絞り出した声は、
「「……誰?」」
「お初にお目にかかります、リアラと申します。和樹様のお友達ですね、どうぞこちらへ」
「……もうどうにでもなれ」
取り敢えず説明する為に、二人には部屋に入ってもらった。
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